全体表示

[ リスト ]

ブッダの瞑想行法、そのメソッドの焦点となるのは、“五官・六官の防護”である。それがこれまでの論述から導き出された結論でした。

そしてブッダの瞑想法と呼ばれる『止観』のうちの“止(サマタ)瞑想の具体的なメソッドの焦点になるのが、「顔の周りに思念を留める」という事であり、それは牛・馬・象など動物の調御において急所となる、首から上の身体部位と重なり合うものであった。

この六官の防護と「顔の周りに思念を留める」事は有機的に密接な連関を持っている。

以上がとても大雑把ではありますが、これまでの粗筋です。

この、「顔の周りに思念を留める」という気づきの行法。大念処経などにも書いてある通り、これはアナパナ・サティのおいて、呼吸に気づくポイントが「顔の周り」である、という事をも意味します。

「托鉢僧たちよ、ここで、托鉢僧が荒野に至るか、あるいは樹の根元に至るか、あるいは空き家に至るかして、左右の足を左右の太ももの上に置いて坐り(結跏趺坐)、身体をまっすぐに保ち、思念(サティ)を顔の周りに留めてから坐る。
その者はまさに思念して息を吸い、まさに思念して息を吐く。」
 
春秋社刊 原始仏典Ⅱ 第6巻 相応部経典 第5集 大いなる集 第10扁 呼吸についての集成 P315より


つまり、五官六官の防護の最初の導入部とは、“顔の周りに思念を留めて、そこ(顔の周り)において、呼吸に気づき続ける” 事だと言っていいでしょう。

五官六官を防護するという時、その防護すべき五官六官、すなわち眼耳鼻舌身意という感覚器官は、全て、“首から上の頭部顔面に集中している”のですから、当然のことながらこの六官を防護するためには六官が所在する場所において、気づいて防護しなければならないのです。

例えば古代インドによく見られるような城塞都市において、6人の門衛が6つあるそれぞれの門を防護していたとします。

6人の門衛が、それぞれ担当すべき警護すべき門を遠く離れて、その門を防護する事が出来るでしょうか。それはもちろんNOです。

その門を警護する為には、その門に臨場・常駐して、その門の周囲に眼を光らせてそこにおいて生起する様々な現象や変化に気づき続けなければ、その門を警護し防護する事は出来ないでしょう。

五官・六官の防護をする場合も同じ事です。五官六官の防護を可能ならしめる為には、何よりもその五官六官の門に臨場・常駐して、そこにおいて生起する様々な現象や変化に気づき続けなければ、それを防護することなど不可能なのです。

故に、“五官六官の防護”と“顔の周りに思念を留める”ということは、完全にイコールで結ばれているのだと、私たちはまず、理解しなければなりません。

そして、
思念(サティ)を顔の周りに留めてから坐る。その者はまさに思念して息を吸い、まさに思念して息を吐く。”
と言う以上、その気づき(サティ)とは、まず第一には「呼吸に対する気づき」である、と想定するのが自然なことなのです。

つまり、呼吸に対する気づきを顔の周りにおいて継続し、維持する事こそが、「五官六官を防護する」事の具体的なメソッドそのもの、だと考えられるのです。

整理すれば、五官六官の防護=顔の周りに思念を留める事=その顔の周りにおいて呼吸に気づくこと、と言う三段階の等式です。

私がこれまで経験してきたテーラワーダの瞑想行は、ゴエンカジー系とマハシ・サヤドウ系のヴィパッサナですが、前者ではアナパナの呼吸に気付いているのは鼻腔のヘリ周辺であり、後者では下腹部の膨らみ縮みでした。

この呼吸に気づく「タッチング・ポイント」の差異というものは、ある意味思っていた以上に重要な事だったのですが、これまでの文脈に従えば、ゴエンカジー系の鼻腔周辺とマハシ系の腹部の起伏では、呼吸に気づくそのポイントとしてどちらがよりブッダ自身の瞑想法の原像に近いか、と言えば、それは間違いなくゴエンカジーのシステムである、と言うのが本ブログの論理的な帰結になります。

鼻腔周辺と腹部では、どちらが“顔の周り”であるか、小学生でもわかる事でしょう。

もちろん私は、だからと言ってマハシ式のメソッドが“間違っている”とか“効果がない”とか言っている訳ではないのです。

あくまでもパーリ経典から復元しうる限りのブッダの瞑想法の原像においては、と言う但し書きの中で、腹部ではなく顔の周りこそが、まずは第一に気づきの現場・ポイントの最重要候補であり、ゴエンカジーのメソッドはそれに該当する、と言う事です。

この“顔の周りに思念を留めて”というパーリ経典の随所に記された定型文の真意については、いわゆるパオ・メソッドとも絡めて、また機会を改めて詳述したいと思います。

今回はまずこの“顔の周り(鼻腔の周り)に思念を留めて呼吸に気づく”というゴエンカジーのメソッドが持つ、“実効力”の好例として、他でもないゴエンカジー自身の体験について考えていきます。

以下は彼のヴィパッサナ・センターがネット上に載せているゴエンカジーの略歴からの抜粋引用です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ゴエンカジ(と親しみを込めて知られています)は、1924年にミャンマーのマンダレーで生まれました。19世紀後半に祖父がインドから移住し定住した土地でした。高校卒業後の1940年に家業に就き、第二次世界大戦中はインドで過ごしましたが、終戦後はミャンマーに戻りました。戦後の数年間で先駆者的な実業家として大きく成長したゴエンカジは、いくつもの工場を造り、多くの人びとを従業員として雇いました。また、ミャンマー国内で大きな影響力をもつインド人コミュニティのリーダーとなり、ビル
マ・マールワーリー商工会議所やラングーン商工産業会議所といった組織を率いるようになりました。

しかし、社会的名声や物質的成功と引き換えに、ゴエンカジは
精神的緊張が原因の消耗性偏頭痛に悩まされるようになります。医師はモルヒネを処方して激烈な痛みを和らげようとしましたが、治癒することはできませんでした。数ヵ国に赴き、専門医に診てもらいましたが、苦しみから脱け出す希望を見つけられないまま、ミャンマーに帰国するしかありませんでした。

ある友人がゴエンカジにヴィパッサナー・コースに参加するようにアドバイスしたのは、そうしたときでした。最初は抵抗がありました。保守的なヒンドゥー教の家庭に生まれたゴエンカジは、異教に関わりたくありませんでした。決心を変えたのは、ヤンゴンの国際瞑想センターに住む指導者のサヤジ・ウ・バ・キンに出会ってからでした。上級公務員であり、瞑想の熟達者であるウ・バ・キンは、ゴエンカジの不安を和らげ、ヴィパッサナーが普通に生活する世界中の人びとに恩恵をもたらす、普遍的かつ実践的な瞑想法であることを確信させることに成功したのです。

1955年、ゴエンカジは、ウ・バ・キンの指導のもとで最初のヴィパッサナー・コースを受けました。
10日間コースによって偏頭痛は治りましたが、それは副次的な効果に過ぎませんでした。もっと重要なことは、ヴィパッサナーを通して、ずっと探し求めていた心の安らぎを見つけたことです。また、今まで自分が傾倒してきたインドの精神的伝統についての新しい洞察も得られました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜日本の敗戦、退却の後はミャンマーに戻りましたが、その頃にはゴエンカ師は20代の若者になっていました。彼はすぐに卓越したビジネスの力量を発揮し、インド人コミュニティのリーダーに成長します。しかし、ゴエンカ師自身がよく語られているように、そうした富や名誉が心の平和をもたらすことはありませんでした。逆に、精神的ストレスから激しい偏頭痛に悩まされ、唯一の治療法は、中毒性の強いモルヒネの処方のみでした。ゴエンカ師は、名医の診察を受けるために日本やヨーロッパ、アメリカへと訪ね渡りましたが、どの医者も助けることができませんでした。

ヴィパッサナーとの出会い

ちょうどその頃、ある友人から数年前にサヤジ・ウ・バ・キンが設立したという、ミャンマー北部の国際瞑想センターを訪ねるように勧められたのです。ウ・バ・キンは、貧しい出自ながら、ミャンマー政府の高官に出世し、その誠実さと優れた能力で有名でした。と同時に、古代から一連の仏教僧たちによってミャンマーに伝承されてきた、自己観察法・ヴィパッサナーの在家指導者でもありました。

ゴエンカ師は友人の勧めに従い、瞑想センターを訪ねて何が指導されているのか見てみることにしました。まだ若いゴエンカ師がやってくるのを目にしたウ・バ・キンは、彼がヴィパッサナー指導者の自分にとって、その使命を果たすために、非常に役に立つ人物であることが分かりました。
にもかかわらず、ウ・バ・キンは、ゴエンカ師の10日間コースへの参加の申し出を拒みました。ゴエンカ師が、偏頭痛を和らげるために参加したい、と率直に話したからでした。「体の病を治すために行うことは、この瞑想法の価値を貶める行為です」と、ウ・バ・キンは言いました。「緊張し、苦しんでいる心を解放するために参加しなさい。そうすれば、体も自然に恩恵を受けるでしょう

ゴエンカ師は同意しました。そして数ヵ月間迷った後、1955年、初めてのコースに参加しました。2日目には逃げ出したくもなりましたが、我慢強く残り、結果として、夢にも思わなかった恩恵を得たのです。そして、その後終生、ゴエンカ師は朝の詠唱においてウ・バ・キンへの限りない感謝の意を表し続けます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

長々と引用してしまいました。個人的思い入れもありますが、私はこの二つのPDF文書を是非本ブログの読者の方にも通読して頂ければ、と思っています。

ゴエンカジーの生涯と言うものは、正に一幅の名画の様なドラマです。そして、その聖なる使命という物語が始まった、正にその契機となったものこそが、彼が死ぬほどの苦しみと表現した片(偏)頭痛でした。

有能なインド系ビジネスマンであるゴエンカ氏がブッダの瞑想法「ヴィパッサナ・メディテーション」の世界的な指導者として開眼する契機となったこの体験。それは大きく二つの段階に分けて考えられます。

第一段階
有能なビジネスマンとして最前線で辣腕を揮っていたゴエンカ氏が、しかしその世俗的な栄華と富によっては精神的な幸福を得る事が出来ず、逆に多大なる精神的ストレスによって「消耗性片頭痛」に侵され、その激烈な痛みに苦しめられるようになります。
その激痛は他のどのような治療法によっても改善の兆しすら見えず、唯一、中毒性の高いモルヒネの投与によってしか、その痛みを和らげる事が出来ず、その緩和も、一時的なものに過ぎなかった。
そしてその経済力にあかして世界中の名医を訪ねて治療法を探るも、治す事の出来る療法には巡り合えなかった。

第二段階
ビルマにおける高名なブッダの瞑想法の指導者サヤジ・ウ・バ・キン師を紹介されるも、最初は疑いを持っていたゴエンカ氏でしたが、ウ・バ・キン師の説明に心が開かれ、10日間のコースを体験し、ついに宿痾であった激烈な片頭痛から解放され、それと同時に、いやそれ以上の結果として、“ずっと探し求めていた心の安らぎを見つけた”。

これを単純化し整理すると、
第一段階:多大なる精神的ストレスによる「消耗性片(偏)頭痛」の発症
第二段階:瞑想実践の結果としての片頭痛の完治と心の安らぎの獲得
の二項目になります。

片頭痛の治癒については、公式文書の中ではさらっと流していますが、この二つのプロセスの中に、ブッダの瞑想法の“作用機序”と言うべきものが、典型的かつ象徴的に、まざまざと立ち現れていると私は判断しています。

その作用機序とは、ゴエンカ氏の心身総体としての身体(五蘊・生体システム)において激烈な片頭痛が発症した、その“病理の作用機序”であり、その病理が瞑想実践によって“対治”され、快癒し完治したその“薬理の作用機序”に他ありません。

そこにあるのは、徹頭徹尾『理(ことわり』であり、摂理でありすなわち“ダンマ”であったという事を、まずは理解する必要があります。

ニッポンの大乗仏教徒がその篤き信仰心からとかく考えがちな、観音妙智力とか、み仏の御加護とか、阿弥陀様の御慈悲とか、なんだかかんだかよく分からない、観念的かつ形而上学的かつ超常的な「みわざ」などでは全くない、純然たる理に適った“反応”もしくは“因果”として、その治療(対治)の作用機序は生起し発動した、という事です。

当然の事ながら、ゴエンカ氏の身の上に起こったこの現象(体験)は、明確に『科学(医学=脳神経生理学)』の対象になり得るものです。

そしてその『科学』において解明されるべきゴエンカ氏快癒の作用機序の中にこそ、ブッダの瞑想法の、そのニッバーナ(悟り)に至るプロセス的な作用機序の核心部分が、“包含(含意)”されている。

その様に私は、読み筋を立てています。

その作用機序を解明するためには、ゴエンカ氏において発症したと言われる、“激烈な痛苦を伴う片(偏)頭痛”の正体とは何であり、その発症のメカニズムとはどのようなものであったのか、と言う事を知る必要があります。

何故なら、基本的に病理・発症の作用機序を“打ち消す”方法論こそが、治療・快癒の作用機序に他ならないからです。

そこにおいてカギとなるのが、12対ある脳神経の一つであり、第V脳神経(CN V)とも呼ばれる“三叉神経”である。そのように私は見立てています。

その作用機序をプロセス的に“読み切る”事によって、私たちは何故ゴータマ・ブッダが“医王”と称賛されたのかというその真意を、そしてその称号が現代においても依然として色あせることなく通用するのだというその“科学的な事実”を、まざまざと戦慄的に“体解”することになるでしょう。

〜次回に続く。


本ブログの記事は、連載シリーズになっています。
単独の記事を読んだだけでは何一つ理解できないので、
シリーズの第一回から遡って読む事をお勧めします。

この記事は、ブロガー版脳と心とブッダの悟りと連動しています。 
また、チャクラの国のエクササイズにおける探求から接続しています。

このブログ内容は広く知られる価値がある、と思った方は、下記をクリックください


閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(0)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事