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不況対策を適切に立案・実施する上で、現在のような不安定な政治状況を克服する必要があることについては、以前にこの「診断録」でも触れた。また診断録にコメントをくださった人も類似の意見を開陳していた。
そこで今日は、たまには診断録も経済問題を離れるのもいいと考え、ちょうど問題になっている小沢民主党代表の進退問題を中心に、政局の動向を話題にしてみたい。
まず、小沢代表の公設第一秘書の逮捕が「国策捜査」を意味するかどうかという点。国策捜査という表現は、検察当局が持っている相対的な(あくまで相対的な)自立性を無視する表現なので適当ではないが、この逮捕が法務大臣と首相の了解の下で行われたことは疑う余地がない。
三権分立というけれども、検察庁は法務省の管轄下にある(当然、昇進・異動の検察人事も)。したがって、重要な決定と行動が法務大臣への事前報告なしに行われることはあり得ない。ということは、それらは首相へも事前に報告されるということだ。とくに、野党第一党の党首に関わる、しかも政治的に微妙な時期における司法権の発動が、首相の了解なしに行われることなどはあり得ないと思う。
かつて昭和29年(1954年)吉田茂内閣の時代に、検察が時の自由党幹事長佐藤栄作(後の首相、ノーベル平和賞受賞者)について、造船疑獄に関連して逮捕許諾を求めた際、犬養法相が指揮権を発動してこの逮捕を阻止したことはあまりにも有名だ(近頃は忘れられがちだが)。これなどは、きわめて露骨な、国策捜査ならぬ「国策的捜査阻止」だった。
また、昭和51年(1976年)、三木武夫内閣の下でロッキード事件が表面化、やがて田中角栄前首相が逮捕されるに至るわけだが、この逮捕も三木首相の了解の下で行われたことは疑いない。だからこそ、田中逮捕接近の気配を前に、椎名悦三郎自民党副総裁、福田赳夫副首相(後の首相)、大平正芳蔵相(同じく)らによる公然たる「三木降ろし」(三木首相退陣を求める運動)が展開されたのである。
今回の西松建設への捜査が進展する中で、小沢民主党代表周辺に捜査が伸びていることは、麻生首相は当然知っていたはずだ。今回の小沢秘書逮捕があったことで、麻生首相が世論調査での支持率が最低状況の中でも強気でいた理由がよくわかった次第だ。
私は8日朝のテレビで、細田自民党幹事長が4日に行った講演のVTRを見たが、そこで与党幹事長は「今まで政府与党は攻められ続けだったが、今日からは反転攻勢に出られる」という趣旨のことを得意満面で語っていた。まことにあけすけな告白ではないか。
明らかに、小沢代表はこの重要な問題に関して、してやられたのだと思う。小沢代表自身、西松問題の捜査が身辺に伸びていることを知っていたようだ。たしかに、野党第一党の党首、しかも次期首相がほぼ確実という人物にそういう情報が入るのもごく当たり前のことだろう。まして小沢代表は海千山千の政治家だ。権力側がなにを狙っているかは当然わかっていたと思う。政治とは、いや権力闘争とはそういうものであろう。
このギリギリの権力闘争で、現に権力を握っている側が断然有利であったことは事実だ。しかしとにかく、結果として小沢代表と民主党は大きな打撃を受けた。すくなくとも、細田幹事長がいったように、小沢代表と民主党は攻める側から守勢一方の立場に追い込まれた。この冷厳な事実を小沢代表はもっときびしく直視すべきだろう(奇しくも小沢は田中角栄の愛弟子だった)。
これは、今や政権を目の前にした野党の党首としてはきわめて深刻に受け止めるべき事態である。本来は、政権奪取に向けて最後の攻勢をかけるべき時に、自分自身の潔白を説明するためにマスコミと世論に追い回されているわけで、すでに党首としての役割を果たせないようになっている。というより、むしろマイナスの効果を招いている。現に、早くも毎日新聞の世論調査(8日の紙面)では、民主党はこの事件で支持率を7ポイント落としている。
したがって、身が潔白だから党代表の地位を退かないというのではなく、防戦一方に追い込まれている自らが今代表の地位にいることが党にとって大きなマイナスになっている、という理由だけで代表辞任に値すると思う。そのような理由を明示してすっぱりと辞任すれば、党にとってのマイナスをかなりの程度に打ち消すことができるのではないか。
おそらく麻生首相は、定額給付金の支給が始まり、次年度予算が議会を通り、その上民主党が追い込まれ、あたふたしてるまさに今、解散に打って出るチャンスをつかんだのではないか。ここで民主党が早急に態勢を建てなおさなければ、次の総選挙の結果、民主党中心の安定内閣が形成されることは困難となるであろう。
そうなると、相変わらず政治の不安定状況が続くか、いよいよ政界の大再編成が起きるように思える。 (この項、終り)
追記 この「診断録」にいただいたコメントにいちいちお答えすることはできないことをご了解願いたい。ただ、いくつかのコメント、たとえば Swimmingさんによるその都度の診断録の要約は他の読者にも役に立つ、といった意見を私は個人的に聞いていることをお伝えしておく。
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小沢辞任に反対。世論調査は、検察・政府・与党のリークを流し続けるマスコミの下で、影響は少なく国民の良識が反映している。日本が今直面する危機は、明治維新や昭和恐慌・敗戦を超える歴史的なものだ。オバマのアメリカに対し、日本のチェンジには、小沢の政治指導力しか期待できない。安政の大獄は、幕府の自壊を促進し、日本は幕藩体制の地方自治を捨て、中央集権の明治政府に屈折した。この中央集権は、3割自治の戦後に継承されている。小沢のいう地方主権は、道州制の「地方分権」と異なり、日本の民主主義に道を開くことを期待したい。
日本の未来を選択するのは、定額給付金を評価しない、賢明な国民一人一人である。寄り合い所帯で頼りない民主党も、この問題を乗り越える中で成長して欲しい。、
2009/3/9(月) 午前 8:46 [ kirino3330 ]
初めて書き込みます。勉強になります。しかしかりに麻生総理が検察の行動を知っていたとしても、単にその独立性を尊重しただけだとしたら、何の問題もないように思います。いやむしろほっておくべき。 森永卓郎氏が発言したような、「麻生総理なら止められたはずだ」ということこそ、指揮権発動のように感じるのですが。
小沢代表の身辺にはたまたま不吉な偶然が続いており、運気的に日本の明日を任せるのには不安なところがあります。
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2009/3/10(火) 午前 11:43 [ iru**nnsuk ]