文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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 3月13、14日にロンドン郊外で開かれた世界20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(4月2日に開かれるG20サミットの準備会議)は、世界的な経済危機の克服に向け、財政出動を含むあらゆる政策手段を実施する重要性で一致した。
 しかし、ガイトナー米財務長官が各国に対して要請した「GDPの2%以上の追加的財政出動」に対しては、ドイツなどの欧州勢が財政悪化への不安から、追加景気対策に数値目標を盛り込むことに反対、会議終了に際しての共同声明には数値目標は盛り込まれないことになった(共同通信、日本時間14日夜)。

 EU(ヨーロッパ連合)とくにユ−ロ圏の諸国が、アメリカが要求する追加的財政支出についての数値目標に反対であることは会議前から明らかであった。すなわち、3月10日に開かれたユーロ圏財政相会議が、「既定の景気刺激策を拡大するつもりはまだない」との意思統一をしていたからだ(フランクフルター・アルゲマイネ、3月10日)。
 すなわち、景気情勢の今年中の好転は望めないが、「EU諸国はすでにGDPの3.3%の支出で景気下支えを行っているし、財政赤字をさらに増やすことを望まない」ので、財政支出の追加についてのアメリカの要求には応じられない、ということであった(同上)。

 EU諸国が安易に財政支出の追加に応じない理由としては、もっぱら財政赤字の一層の増大を避けるためと伝えられ、一般にもそのように理解されているが、それだけではない。より根本的な理由がある。
 それは、ヨーロッパは一般に福祉国家であるので、リセッションが起きた場合には、政府は自動的に福祉支出を増加させるから、見かけよりはずっと多くの財政支出を行っているということである。つまり、福祉支出の自動的増加という内容で、いわゆるビルト・イン・スタビライザー(自動安定装置、当「診断録」2月12日号参照)が直ちによく作動するのである(ウォールストリート・ジャーナル、3月12日)。

 今回の不況の場合、ドイツでは自動安定装置の作動でGDPの1.7%、それ以外の景気対策すなわち有効需要政策の発動で1.5%を支出、トータルではすでに3.2%の財政支出を行っている。これはアメリカの3.5%をわずかに下回るだけである。
 しかも、2010年にはドイツの景気刺激措置のGDPに対する比率ははアメリカのそれを上回ることになるだろうとIMFは予想しているという(同上)。
 
 アメリカの政府も主流派経済学者も、欧米のそういう制度的な違いを理解できないようだ。だから、自分たちのやり方を各国が追随するのは当然だと考えがちである。
 オバマ政権もそういう独善的考え方から脱却できていないようだ。同じようなことは、これまでにもしばしば起った。

 たとえば、1977年に就任したカーター米大統領の新政権は、米・独・日の3国が世界経済を引っ張る機関車の役割を果たすべきだと主張(機関車論)、モンデール副大統領、クーパー国務次官、バーグステン財務次官補らを同盟諸国に派遣し、経済刺激策の実施を迫った。
 この時、ボンでの会談のあと、アメリカ代表たちはドイツのシュミット首相から、「この米国の助言は青二才の学者から浅薄な経済学の講義を聴かされたみたいだと一笑に付された」のだった(ロバート・D・パットナム、ニコラス・ベイン『サミット』、山田進一訳、TBSブリタニカ)。

 要するに、国際協調も大事だが、不況対策は(どの政策でもそうだが)各国がそれぞれの考えと実情に応じて実施すればよいのである。わが麻生首相あたりは、そうした青二才の勧告をありがたがって聞く恐れがあるので、こうしたヨーロッパ諸国の考えもよく参考にしてもらいたい。 (この項、終り)
 

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今朝の朝刊で(G20)財務相・中央銀行総裁会議の記事を読み、EU諸国が財政支出の追加に応じなのは、「財政赤字の一層の増大が、結局不況対策の自由を失わせる」と判断しているのだと思っていました。
「福祉国家では、福祉予算の自動増加」という機能が働いており、この分も考慮して判断すべき」という先生の指摘は私には思いつかなかったことで、大変勉強になりました。

2009/3/15(日) 午前 10:27 [ ねずみ ]


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