文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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日銀がOKした国債増発

 日本銀行は3月18日の金融政策決定会合で、長期国債の買い取り額を月額4000億円増やして1兆8000億円へ、年間では21兆6000億円とすることを決めた。これは昨年12月に月額2000億円増やしたことに続く措置である。
 白川方明日銀総裁は、今回の国債買い取りの増額は「今後の国債増発への対応といったことを念頭に置いて実施するものではありません」(日銀ホームページ)と語っているが、実際には政府に対して「国債増発OK」の明確なメッセージを発したものであると私は受け取った。

 そもそも日銀による長期国債(期限10年)の買い取りとはどういうことか。それは政府が発行し民間(市中という。日本では主に金融機関。個人も含む)で消化した(買い取った)長期国債を、こんどは日銀が市場を通じて民間から買い上げることである。
 そのことは〇埣羔睛撒ヾ悗砲箸辰討蝋餾弔箸いΔたちの保有資産が日銀への預金の増加というかたちへ変ることであり、それだけ一般企業への貸出可能資金が増えることになる。また日銀が債券市場で強力な買い手(国債の)として登場するために、長期国債の相場が上る。一般に債券の相場が上るということは、債券の利子は普通は固定であるから、その利回りが低下することを意味する。そして長期国債の利回りは長期資金の利子率の基準になっているので、長期国債利回りの低下は長期資金利子率全体の低下をうながす。
 要するに、こうして資金量、利子率の両面から金融を緩和する役割を果たすわけだ。

 しかし、以上は物ごとの半面に過ぎない。日本の財政法では国債は民間で消化するのが原則で、日銀がそれを引き受ける(買い取る)ことは一般的には禁止されている(当「診断録」2月14日号、22日号、3月2日号を参照)。ところが、政府が国債発行→民間で消化→日銀が民間から買い取り、という過程を経ると、結果としては、その国債は日銀が直接に買い取ったことと変りがないことになる。つまり、それは財政法の規定をくぐり抜ける裏技にほかならない。
 ただし、市中消化の場合には、それを買い取った民間人(金融機関等の企業と個人)の手に利子が入るほか、日銀による買い取り価格が民間人による当初の買い取り相場を上回った場合には、そこにいわゆるキャピタル・ゲインが発生する。つまり、民間(国債購入者)に利益が行くのだ。

 ところで、国債を直接あるいは間接に日銀が買い取った場合には、利子は日銀に入る。だが、その結果として日銀に発生した利息収入は、他の利益とともに、国庫に納付することになっているから、実質的には政府は利子負担を負わないですむことになる。
 白川日銀総裁もその著書『現代の金融政策』(日本経済新聞社。総裁就任直前の2008年3月刊行)で、バーナンキ(現米FRB議長)の主張を引きながら、次のように述べている。「政府が国債を発行して財政支出を拡大する一方、中央銀行が金融市場から国債を買い入れた場合には、政府は金利の支払い負担なしに財政支出を拡大できる」と。

 これは、要するに、間接的経路を使っての、無利子国債の日銀引受けである。今回その日銀引受け額を、月間4000億円増額して、年間21兆6000億円としたのである。
 たまたま3月11日には、自民党の「政府紙幣・無利子国債(相続税減免措置付き)発行を検討する議員連盟」の菅義偉衆議院議員らが麻生首相に対し、利子が付かない代わりに相続税がかからない「無利子非課税国債」の発行などを柱とする緊急提言を提出したのに対し、首相は「検討する考えを示した」と伝えられていた(読売、3月11日夕刊)。
 18日に日銀が決定した長期国債買い取り増額の方針は、意図的かどうかは別として、こうした自民党内の要求にぴったりと合っている。

 さらに興味深いのは、この決定のあとの記者会見で、白川総裁がこうした長期国債買い取りの限界について言及したことである。すなわち、「今回増額したペース…で長期国債の買い入れを毎年行っていくと、長期国債の保有残高は数年間のうちに銀行券発行高という上限に近接していく可能性が高い…さすがにここまで増額させると追加的買い入れ余地は自ずとかなり限定されるとみられます」と(日銀、同上)。
 ちなみに、今年2月末の日銀の長期国債保有残高は43兆6000億円、日銀券発行残高は76兆9000億円だったから、その差額は33兆3000億円である。だから、年21兆6000億円の割で日銀が長期国債を買い取っていくと、約1年半でその限界に届くことになる(もちろん日銀券も増えていくが)。

 白川日銀総裁のこの発言は、日銀による国債買い取りの限界を述べたかたちになっているが、日銀総裁がそうした限界論を述べること自体が異例で、私はそこに別の意味を感じ取る。
 そもそも、なぜ日銀によるそのような国債買い取りについて限界を考える必要があるかというと、そうした買い取りが日銀券という紙幣の無制限な増発をもたらし得るからである(日銀券が国家紙幣であることについては当「診断録」3月4日号を参照)。
 だから、日銀券という紙幣の増発にはしっかりした管理ルールが必要であるが、そうかといって、白川総裁が言うような金額までは安全であるともいえないのである。

 むしろ興味深いのは、なぜこの時期にあえて白川総裁が国債買い取り額の余地が33兆円ぐらいだと思わせるような発言をしたのか、ということである。その点は、最近麻生首相をはじめ政府・自民党から追加景気対策として20兆円〜30兆円の規模の財政支出が必要だとの声が盛んに上っていることを考えると腑に落ちる。
 つまり、日銀は、それぐらいの国債増発ならば市中消化が容易となるような対応を日銀はする用意がある、とのメッセージを政府に送ったのだと私は理解した。
 国債買い取り増額についての18日の白川総裁の説明ははなはだ要領を得ないもので、その点、マスコミの多くが今回の措置を財政出動への日銀としての青信号と受け取ったのは正解であろう。

 なお、私は別の根拠から、現行制度下では国債は日銀引受けで発行する方が望ましいと考えているが(「診断録」3月4日号、5日号参照)、いま政府が検討しているような、不十分な根拠で追加財政支出の規模を考えるばらまき型の景気対策には賛成できない。

 付言すると、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会、すなわち中央銀行理事会)も3月18日の公開市場委員会で、今後6ヶ月間に長期国債を最大3000億ドル(1ドル=95円なら28兆5000億円)買い入れることを決定したし、イングランド銀行も5日に同様の決定をしている。これらも国債増発をにらんだ措置であることはいうまでもない。   (この項、終り)

 











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閉じる コメント(3)

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これって、最終的には、お金を作り過ぎちゃう、と言うことなんでしょう、かね(汗。

2009/3/20(金) 午後 7:22 after stroll 返信する

世界的な貨幣価値切り下げになりそうですね。インフレです。
供給した資金が将来有望な産業に投資されれば良いのですが・・・。また、資源・食料バブルになりそうです。

2009/3/20(金) 午後 8:54 [ K9 ] 返信する

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こんにちは。たままた辿り着きました。
最後の<メッセージを政府に送ったのだと私は理解した。>ここの部分ですが
私なんかは単純に、日銀はこれ以上の支出拡大には反対なのか・・・と受け止めておりましたので、その部分が特に新鮮で楽しめました。
所で30兆の景気対策ですが、んーーーBEIを見ましても目玉が飛び出るような状況ですし、額は足りないんじゃないですかね。
米国でも17日にクルーグマンが額が足りないと言ってましたから、米国以上の危機にある日本は足りないと感じられます。
その場合、もはや政府紙幣しか選択肢がないのではないでしょうか。

それにしましても、日本のデフレは長いですね。
もう15年にもなりますか?ひたすら所得が減る一方・・・。
何だかんだで韓国も所得が随分と増えてますし、80年代・90年代との、日韓の所得比較とか面白いかもしれません。
日本のデフレは19世紀の欧州をも超えて、人類史上最長になるかもしれませんね。

2009/3/21(土) 午後 4:05 [ 太郎 ] 返信する

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