文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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 世界的に景気底打ちかと思わせる指標が多少見られるようになったが、現時点でそう判断するのはまだ早過ぎると先に当「診断録」(4月12日号)で報告した。その際、世界景気、とくに日本の景気の今後を占う上では、アメリカ(とくにその金融問題)と中国の今後の動向が重要だと指摘した。
 本日はこのうち、アメリカの最近の動き、とくに金融危機の処理の行方について、その注目点を報告したい。

 アメリカの景気動向とくに金融危機の行方を見る上で目下もっとも注目される点は、財務省によって現在行われている19主要銀行に対する「ストレス・テスト」(資産の健全性審査)の行方である。
 すなわち、このテストの結果、これらの銀行のバランス・シートは4ランクに分類され、
その結果により(そのランクによって)、不良債権の売却、不足資本の補填、経営陣の交代、経営陣の報酬の制限、場合によっては他銀行との合併などの措置が政府により命じられる。
 このストレス・テストの行方に関して、いま銀行側と政府の間、および銀行と市場(とくに株式市場)の間で、水面下のきびしい対決あるいは駆け引きが行われているという。
 
 この点でまず承知しておくべきことは、銀行側は政府から受けた資金援助の、あるいはこれから受ける必要に迫られた場合の追加援助の代償として、政府から上記のような規制を受けることを極度に嫌っている、ということである。
 そのような規制を避けるためには、銀行側(これは中小を含むすべての銀行に当てはまることだが)としては、すでに政府から借りた資金を早期に返済する必要がある。そのためには、それができるように銀行側の業績を回復させる必要があるが、同時に、返済の際の条件を緩和してもらう必要がある。
 
 というのは、私にはなかなか理解しにくいことであったが、銀行がそうした政府資金を返済する際には、既定の金利のほかに、借り入れる際に同意した「プレミアム」を上乗せして支払うことが条件になっているからだ(NYタイムズ、4月11日)。政府側としては、不良資産の除去を実行する前に政府に資金を返済することは銀行にとって無理な返済のはずで、あとにもっと大きな問題を残す恐れがある、と見ているためのようである。
 銀行側は、これは不当に高い金利を課すものであり、政府資金の早期返済を妨げるものだ、と反発して政府にその緩和を要求して交渉している。

 他方で、市場はストレス・テストの行方と結論、それによって左右される個々の銀行の‘運命’を固唾を飲んで見守っており、逆に銀行側は市場から不利な推測を受けないように懸命の努力をしつつあるようだ。
 市場としては、ストレス・テストが終る前にでも、銀行の健全度(あるいは不良の度合い)をかぎつけ、不良銀行の株を売り払いたいということである。もしそうした事態が起きれば、当該銀行は株価の激落で致命傷を受けることになりかねない。
 
 以上のようなつばぜり合いの中で、4月14日にゴールドマン・サックスが50億ドルの新株発行に成功し、同社の収益と他の民間資金を併せて、政府から受けた100億ドルの資金を返済するとの意向を表明した。この行動は、「同社が市場の信頼獲得のために、ストレス・テストを悠々とパスするだろうというメッセージを事前に市場へ送ったもの」と見られている(NYタイムズ、4月15日)。
 そして、ゴールドマンのこの行動は、他の金融機関に対し、「同様な措置をとるか、さもなければ市場から自行に対するより悪い判定を受けるか、というプレッシャー」をかけることになった。同時に、ゴールドマンの行動は、政府に対し資金返済の条件をあらためて明確にするように迫ることになった(同上)。
 
 事実、いくつかの銀行は、「その四半期業績が好転したとの予想を早めに発表して、投資家がストレス・テストの結果を心配しないようにとのシグナルを市場に送った」。「シティ・グループとバンク・オブ・アメリカは数週間前に当該四半期の業績が好転したと発表し、先週にはウエルズ・ファーゴが、業績好転で当四半期には30億ドルの利益が見込まれると発表した」(シティの決算をめぐる当時の動きについては3月11日付当「診断録」をも参照)。
 このウエスト・ファーゴのような行動は、財務省当局に、「すでに業績良好と宣言した銀行にネガティブな評価を下すことを困難にする」との恐れを抱かせている(同上)。

 そして4月17日、シティ・グループは2009年第1四半期の業績が黒字になったとの決算を発表した。ヨーロッパの各株式市場では、このニュースを好感し、併せてGE(ゼネラル・エレクトリック)の同四半期決算が市場の予想よりよかったとの理由で、金融株主導で株価は上昇した。
 次いで開かれたNY市場でも、以上の材料に加え、ミシガン大学調査の米消費者信頼度指数(4月)が08年9月以来では最も高かったとの報を受けて、株価は上昇した。日本の新聞でも「NY株3日間8000ドル台 経済指標や企業決算好感」との大見出しの記事が出た(日経、18日夕刊)。
 
 ところが、そのシティの同日の株価が8%も下落したのである。これは、「市場がシティが用いた収益好転の会計処理に懐疑的であり、また消費者金融と証券化業務でまだ大きな損失を出すのではないかとの疑問を抱いている」からだ(NYタイムズ、18日)。
 なお、前記の日経紙も別の面で、「売られたシティ株」(ウォール街ラウンドアップ)との記事を載せ、シティの決算と業績見通しの問題点を報じている。

 以上、要するに、不良資産の処理を中心とするアメリカの金融機関の建て直し計画は
いま重要な局面にさしかかっており、まだその最終決着がついていない、ということである。実際、ストレス・テストの結果で、あるいはその最終結果に至る過程で、いくつかの金融機関の破綻が表面化する可能性がある。
 また、金融機関以外でも、GMやクライスラーの再建問題が未決着であり、この2社が法的な破産処理に追い込まれる可能性がむしろ増大している。

 このように見てくると、アメリカの景気の底入れはまだであるし、3月9日を一応の底とする(シティのCEOによる同社第1四半期好決算の予想がきっかけ)最近までのNY株式の反騰も、多分に希望的観測で底上げされたものではないか、との疑問も湧いてくる。   (この項、終り)


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