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週明け20日(月)のNY株式ダウ平均は289.6ポイント、3.6%下落、去る3月9日以来の反騰相場での最大の下落を記録した。これはバンク・オブ・アメリカの四半期決算で不良債権が増大したことが明らかになるなど、金融危機の深刻さに市場があらためて目を覚まされたからであった。
私が前回の「診断録」(4月19日号)で、「最近のNY株式の反騰も、多分に希望的観測で底上げされたものではないか」と述べた疑問が裏付けされたかたちだ。
もっとも、21日のダウ平均は127.83ポイント、1.6%反騰し、前日の下落幅の半分近く(44%)を取り戻した。これは、ガイトナー財務長官がその議会への書類での証言で、「大部分の銀行は現在必要とされているもの以上の資本を持っている」と述べたことが市場に対して鎮静効果を持ったためである。
過度の楽観から過度の落胆へ、という市場の行動がすこし是正されたわけである。
しかし、世界的な金融危機は依然として深刻であることが、同じ21日に公表されたIMFの「世界金融安定性報告」であらためて明らかになった。
それによると、今回の金融危機で世界の銀行などの金融機関が被った損失は4.1兆ドルに達する。このうちアメリカの金融機関が2007年から2010年までに計上すべき損失は計2.7兆ドルで、これは昨年10月における推定損失1.4兆ドルや、今年1月における推定損失2.2兆ドルを大幅に上回るものである。
なお、ヨーロッパの金融機関が被った損失は1.12兆ドルだが、日本のそれは1490億ドルと比較的軽微だった(危機から比較的隔離されている)としている。
以上の損失に対し、銀行が危機以来充当した新規資本は9000億ドルで、これはクレジット関連の推定損失額2.8兆ドルを大幅に下回っている。この損失のうち、銀行がすでにバランス・シートに損失として計上したものは1兆ドル、約三分の一だとIMFは推定している。
地域別では、アメリカの銀行が2008年末までに計上した損失は5100億ドル、09年と10年に計上すべきものは5500億ドルである。同様な推定は、ユーロ地域ではそれぞれ1540億ドルと7500億ドル、イギリスは1100億ドルと2000億ドルで、ユーロ圏での対処のペースが遅いことが目につく(以上、IMF報告はNYタイムズ4月22日による。日本の22日付各紙でも報道されている)。
いずれにしても、IMFは「金融危機は深くそして長く続きそうだ」と述べ、最近の市場の楽観論に疑問を投げかけたかたちになっている。
こうした楽観論について、ある銀行(ソシエテ・ゼネラール、香港)のアナリストは、「世界的な経済収縮のペースがスローになったのを見て、収縮ということ自体が無視されたようだ」と語ったというが(NYタイムズ、22日)、最近の市場の反応はまさにそれに近いものであったというべきだろう。
金融危機と不況の今後について注目すべきは、当面とくにアメリカで現に政府により実施されている銀行に対する「ストレス・テスト」(資産健全性の検査)の結果(5月4日に結果が発表されると伝えられる)や第1四半期の企業業績、それに実体経済の動向を示す各種指標の世界的な動きであることはいうまでもない。 (この項、終り)
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「ストレス・テスト」(資産健全性の検査)の結果に注目したいと思います。検査する側に政策的判断がどの位まで許されるのかが知りたいところです。基準どおり判断し公表するのか、そのまま公表した場合経済に悪影響が出ると判断した場合には政策的判断が入る余地があるのかです。日本では後者になりそうな気がしますし、アメリカではもっと厳しいように思います。
話題は変わりますが、経済学者の大内力先生が逝去されたことと、その功績が新聞報道されていました。学生時代に著書を読んで感激し、いつか講義を聴きたいと思っていたところ、八王子の大学セミナーハウスのセミナーで一度だけ講演をお聴きすることができ、想像どおりの先生と思ったことを思い出します。ご冥福をお祈りします。
2009/4/23(木) 午前 6:53 [ ねずみ ]