文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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 政府(内閣府)が20日に発表した2009年1〜3月期 (第1四半期) の実質国内総生産(GDP)の、前期(08年10〜12月期、08年第4四半期)のGDPに対する増加率(経済成長率)はー4.0%(すなわち4%の減少)で、その年率換算はー15.2% だった(注)。 このマイナスの成長率の値は、第1次石油危機の際の1974年1〜3月期 の−13.1%(年率)を上回る戦後最大のマイナスである。
 また、四半期ごとの前期に対する成長率(年率)は、08年1〜3月期からの各四半期の順に、3.4%、ー3.5%、−2.5%、−14.4%、−15.2% と、最近の4つの四半期が続けてマイナスとなったが、4つの四半期連続のマイナス成長は戦後初めてのことである。

(注)前の四半期(3ヶ月)に対する成長率が−4.0%なら、その年率換算(それと同じマイナスの成長率が四つの四半期続いたと仮定した場合の1年間の減少率。秒速、時速という考え方を用いて表現すると、いわば年速)の値は(−4.0 ×4=−16.0 )ではないか、という趣旨の質問を私は受けた。
 しかし正しくはつぎのように計算する。09年第1四半期 (09年Q1と略記)のGDPは、その前の四半期すなわち08年Q4のGDPをAと表すと、A×0.96である(4%の減少だから1−0.04=0.96倍)。次に、計算上の09年Q2は(A×0.96)×0.96だからA×(0.96の2乗)となる。同様にして、計算上の09年Q4はA×(0.96の4乗)となる。その計算結果は、A×0.849である。
 これはAが0.151だけ(1−0.849=0.151)小さくなったということ、すなわち15.1%の減少(−15.1%)にほかならない。これが年率換算の仕方で、金利計算の例に当てはめると複利での計算の仕方と同じである。ただし、09年Q1のー15.1%は政府発表の年率ー15.2%とわずかに食い違うが、これは年率換算前の4.0%が小数第2位以下を四捨五入している影響と考えられる。
  同様に、四半期につき+3%の成長ならば、その年率換算値は(1+0.03=1.03)の4乗で1.1255、すなわち+12.6%となる。

 このように、09年第1四半期のGDPの前期に対する成長率のマイナスの大きさが戦後最大だったことや、この期に至る四つの四半期の成長率が戦後はじめて連続してマイナスとなったことは、今回の景気下降が戦後最大であることを裏付けるものである。では、現在、すなわち09年第2四半期(4〜6月期)の実質成長率はどのようになるであろうか?さらに第3四半期以後は?
 経済の落ち込みが大きく、かつかなり急激だったということは、一面では、その終息が容易ではないと感じさせるとともに、他面ではそれだけ経済の自律調整が進んだことを示唆しているともいえる。では、マスコミが報ずる(下記)ように、調整が進んだために、もし09年Q2の対前期比の成長率がマイナスにならなければ、すなわちQ2のGDPがQ1の横ばい(0%)か、さらに、わずかでも増加(+の%)すれば、今回の景気下降(不況)は09年Q1が底だったということになるのだろうか?

 マスコミは、09年Q2のGDOP速報を伝えつつ、併せて、「足元下げ止まりの兆し」(日経、20日夕刊、3段見出し)というふうに、不況はその最悪期を脱けはじめているのでは?といった観測をしきりに流している。ところがその最大の論拠にされているのは、5月19日発表の09年3月の鉱工業生産指数(季節変動調整済み)が半年ぶりに対前月比でプラスになったということぐらいである。  
 
 だが、月々の鉱工業生産指数の対前月比は、季節変動調整済みであってもかなりイレギュラーな変動を示すものである。たとえば、今回の景気下降が始まる直前期からの同指数の推移を見ても、07年10月の110.0(2005年=100)から、11月(108.4)、12月(109.1)と10月を下回ったあと、08年1月(109.6)、2月(110.1)と盛り返している。結果的には、 この08年2月が鉱工業生産指数のピークとなった。その後、3月からは一進一退をしつつ段々と低下が進み 、08年10月(100.3)以後は毎月連続して 同指数は低下してきた。
  ところが、鉱工業生産指数が08年2月に今次景気下降前のピークをつけたとはいっても、内閣府経済社会総合研究所発表の公式の「景気循環基準日付」(いろいろな景気指標をもとに、政府外の専門家も交えて総合的に判定される)では、下降前の景気の山(ピーク)は07年10月であった。つまり、鉱工業生産指数の推移だけから、しかもわずか1,2ヶ月の動きだけから景気の山や谷(底)を判断するわけにはいかない、ということである。  

 同じようなことは、四半期のGDPの前期に対する成長率(マイナスの場合も含め)の推移にも当てはまる。先に見たように、この値は08年第2四半期(4〜6月期)から連続してマイナスを記録している。すなわち、GDPは08年第1四半期にピークに達したのだが、それまではGDPは各四半期すべてにおいてプラスを続けていたわけでもなく、07年第2四半期に1度マイナスを記録している。
 前回の景気上昇のピークは、上述の通り07年10月、四半期でいえば07年第4四半期(10〜12月期)だったから、GDPの推移だけから、景気の山(上方での景気転換点)を07年第1四半期や、08年第1四半期として捉えることはできなかったわけである。
 同じように、仮に09年第2四半期(4〜6月期)にGDPが前期比で横ばいないしプラスになっても、それだけでは景気が底を打ったとは速断できない、ということになる。

 結局、たとえ重要な景気指標であっても、1四半期あるいは1ヶ月の動きから景気の転換点(下方での転換点が底)を結論するのは無理だ、ということである。しかし、マイナスの指標が多い中でプラスのものが出てくれば、それが転換点の接近を意味する場合があるから、それなりに留意・検討する必要があることは言うまでもないが。
 一般に、景気の底入れの確認を人びとが急ぐのは、株式市場がその代表例であるように、株式、商品などの「相場」が景気実態に先駆けて動く傾向を持っているからにほかならない。そして、市場の利害関係者には、おおむね相場の転換をもって景気の転換と考える傾向がある。
 
 だが、たとえば企業に雇用されている勤労者がまとまって解雇されるような状況が続いている間は、景気は底を打った、すなわち「景気の悪化は止まった」とは判断しにくいことも事実である。したがって、景気の底打ち、一般に景気の転換点は、やはり総合的に判断するほかない、ということになる。               (この項、終り)


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