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このところ景気底打ち論が盛んで、とくに政府・日銀がその音頭をとっている感さえある。現実にそうしたことが景気指標で確認されるのであれば結構なことであるが、どうも指標の部分的なプラス面を強調しながら、マイナス面には目をつぶる傾向が見られる。
その代表的な例が5月25日に発表された政府の「月例経済報告」だ。この報告は景気の現状について、「厳しい状況にあるものの、このところ悪化のテンポが緩やかになっている」として、その基調判断を06年2月以来3年3ヶ月ぶりに上方修正した(26日付、新聞各紙)。
この「悪化のテンポが緩やかになっている」というのは曖昧な表現で、文字通りに読めば「テンポは緩やかになっている」が「悪化」している、ということになるはずだが、与謝野馨財務・金融・経済財政相は「最悪の時期は脱したとの認識を示した」(日経、26日)。
新聞各紙はこのコメントに誘導されて、この月例報告についての記事の「見出し」として、「輸出・生産、回復の気配」(朝日、26日)、「景気、三つの薄明かり」、袖見出しとして「生産・輸出や公共投資」(日経、同) を掲げており、明らかに回復が始まったかのような印象を読む者に与えるものになっている。
景気の基調判断を「上方修正」したのが06年2月(今次の景気後退に入る前)以来というのだから、いまや景気が下降から反転回復へ向かい始めたと受けとっても仕方がないといえるだろう。
以上の「上方修正」の重要な根拠とされているのが、3月に「生産」すなわち 「鉱工業生産指数」が半年ぶりに対前月比でプラスになった、ということである。
ところが、「月例経済報告」と同じく25日に発表された3月の「全産業活動指数」(季節調整済み)は対前月比で2.4%のマイナスだった(経済産業省、ホームページ)。このマイナスは08年10月以来6ヶ月連続である。鉱工業生産(+0.1%)はこの「全産業」の1部をなすものであり、その全産業に占めるウエイト(比重)は20.2%にとどまる。
ちなみに、各産業活動の全産業活動(100%)に占める比重は、農林水産業(1.6%)、建設業(7.0%)、鉱工業(20.2%)、第3次産業(60.4%)、公務等(10.8%)である。
要するに、政府「月例経済報告」では鉱工業生産で生産活動を代表させ、それが1部をなすところの「全産業活動指数」の動向を無視したのである。これは、今日の日本経済の最大の産業部門が第3次産業であることを無視したとらえ方である。
同じ過ちを日銀もしている。日銀がやはり25日に公表した5月の「金融経済月報」は、「輸出や生産は下げ止まりつつある」として、景気の現状判断を「上方修正」している(日経、26日)。
さらに奇怪なことは、この全産業活動指数の発表(25日8時50分、経済産業省)を、主要新聞(私が見たのは日経、朝日、読売だが)は25日の夕刊にも26日朝刊にも掲載していなかった、という事実である。
あるいは、マスコミも暗黙裡に政府に同調して、意識的に楽観論を盛り上げようとしているのかも知れない。
景気についてのネガティブ情報を無視する傾向はアメリカでも似たりよったりである。26日のNY株式ダウ平均は196.17ポイント、2.37%上昇したが、これはコンファランス・ボードが26日に発表した5月の消費者信頼感指数(inndex of consumer confidence)が予想以上に上昇し、過去8ヶ月での最高となったことがサプライズだったためである。
その反面、スタンダード&プーア発表の3月の「ケース・シラー住宅価格指数」が 前年同月比で18.7%下がったことは無視された、あるいは考慮されなかった。この下げ幅は1月の−19%、2月の−18%に続くものであり、「抵当流れが増加し、それが住宅価格を押し下げている」(NYタイムズ、27日、電子版)。
しかし、消費者信頼感指数の改善といっても、それは「具体的データ」のことではなく「感覚(センチメント)」 に関するものである。だが、「人は信頼感を“支出”(spend)できるものではない」(NYタイムズ、同)。
株式市場が楽観論を歓迎することは理解できるが、われわれはプラス、マイナス両方の情報をキッチリと評価していきたい。 (この項、終り)
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私は80歳過ぎ。オキナにふさわしくかなり早起きですが、富塚さんの「診断録」を朝の楽しみにしています。
新着があると、二通プリントします。一通は、そのまま保管。もう一通は、本文だけを切り取って、約2割がた拡大プリントします。視力が弱いので、本当はもっと拡大したいのですが、プリンターのせいか、文字がぼやけて、かえって読みづらくなります。天眼鏡を使っています。
手間には違いありませんが、「診断録」の魅力ははるかに超えます。新聞で、どうもおかしいな、と思っていた場合など、「診断録」でなるほどと、合点するときがちょいちょいあります。
オキナの早起きも、「診断録」でたのしみが加わりました。感謝します。 5月29日
2009/5/29(金) 午後 3:08 [ 名島 ]