文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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 標題の意味は、景気はもう底を打ったか、ということをめぐっていろいろな見解が公表されている(当「診断録」を含め) が、いったい、どうして人によりそんなに意見が違うのか、ここであらためて、その根拠を吟味してみようということである。

 景気の変動は、天候の変動と比較され得る。それは、単純化すれば、景気は 上昇(好況)、下降(後退、景気悪化)、不況(不景気)、回復(景気立直り)という4局面の変化、天候は 晴れ(好天)、雨あるいは雪(悪天候)、曇りの3局面(もちろん晴れと雨の間に曇りが来ることもしばしばあるが)の変化というように、いずれも必ず変化し、かつ、それらの局面が循環するという共通点がある。 
 また、悪天候に嵐(台風など)や竜巻などがあるように、好況にはブーム、景気後退には危機(古い表現では恐慌)、不況には大不況(デプレッション)といった、とくに強度・異常な現象が時に出現する。

 だが、天候の場合には、晴天が雨あるいは曇りに変る、あるいは雨が上がる、といった天候の「転換点」は明瞭だし、人によって(同一地域にいれば)見方が異なることはない。それに対し、景気の場合には、いつ景気が上昇から下降に転じたのか、あるいは下降が止まったのかといった転換点が明瞭ではない(一目瞭然ではない)。そのために、人により転換点の認識が違ってくることになる。
 しかし、1929年世界恐慌に至るまでのいわば古典的な景気変動においては、景気後退に際しては、 物価の暴落や株価の暴落が起き、それが引き金(あるいは合図)となって生産が一斉に減少するとか、銀行が一斉に休業に追い込まれるとか、比較的 転換点がわかりやすかった。だから、たとえば29年恐慌は「29年10月におけるニューヨーク株式の大暴落を契機として始まった」というような、いわば「目に見えるような」とらえ方が可能であった。

 ところが、おおむね第二次大戦後の現代的な(管理通貨制度下の)景気変動においては、景気下降(後退)はしばしば多くの人がそれと気づかないうちに始まり(2007年末からの今回の下降もそうであった)、また下降がいつ終ったのかも確認しにくい。これは、結局、現代においては、景気の転換がいわば鋭角的でなくなった(モデレートになった)ためである。ただ、今次景気下降に際しては、(下降が始まって以後の)08年9月のリーマンブラザーズ社の破綻が、それ以後の景気下降激化の明瞭な転換点になった点で、古典的な変動の様相を呈したといえるが。  

 そこで、景気変動論の立場からは、鉱工業生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、稼働率指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額指数(小売業)、同(卸売業)、営業利益(全産業)、中小企業売上高、有効求人倍率(除く学卒)といった、景気変動に敏感な経済指標(景気指標)を取り上げ、その動向を総合的に評価して、事後的に(現実が進行した後で)判断を下すこととしている。

 具体的には、わが国の場合には内閣府経済社会総合研究所に設置された「景気動向指数研究会」(かたちは同研究所所長主催の懇談会。現在は7名の外部委員により構成)が、上述のような景気指標を検討して、景気の「山」(ピーク、天井)と「谷」(底、最低点)の時点 を「判定」している。そのようにして判定された山と谷が景気循環の「基準日付」とされる(形式的には上記研究所長が設定する)。
 アメリカの場合には、民間の有力研究機関であるNBER(National Bureau of Economic Reserch) に設置された「景気循環日付委員会」が景気転換点(山 peak と谷trough)を判定している。
 なお、アメリカでは、一時、「GDPが2期連続してマイナスになったら景気後退」とする俗説が流行したが、それは間違いで、正式には上記の委員会が各種景気指標を総合的に評価して判定している。

 さて今日わが国では、今回の景気後退はこの3月(あるいは1〜3月期)に底に達した(底を打った)とする見方がかなり横行している。与謝野財務・金融・経済財政相がその代表格である。また、同様の見方は「エコノミストの間で強まっている」という(日経、6月12日)
 こうした見解が根拠にしているのは、鉱工業生産が3月から上昇に転じたこと、輸出に下げ止まりの兆候が見られること、株価が回復していること、金融市場に落ち着きが見られることなどであるが、いずれにせよ、それらは景気諸指標の一部である。
 では、なぜ部分的な指標を根拠に景気の転換点を判断し得るのだろうか?

 これに対し、失業者や、失業の可能性・脅威におののく人たちは、失業率が上昇し、雇用になんの改善も見られない時点をどうして景気の底と判断できるのか、という強い疑問を感ずるだろう。
 また、現在まだ業績の改善が見られない企業経営者も、4〜6月期の今でも景気の回復を実感できないだろう。

 現に、朝日新聞社が5月末〜6月中旬に主要企業100社に対して行った景気アンケートによると、景気が「足踏み状態にある」との回答が59社、「悪化」か「緩やかな下降」が40社、「ゆるやかに回復」が1社だった(朝日、21日)。 これは、前回のアンケート(08年11月)で「悪化」と「緩やかに下降」が98社だったことと比べると相当な改善である。しかし、99社が「悪化」あるいは「足踏み」と考えているような今回の状況は、とても「底打ち」とはいえないだろう。
 なお、このアンケートへの回答では、回復に向う時期については、「09年後半」が32社、「10年前半」が35社「10年後半」が23社、「11年以降」が6社だった。

 このように見ると、景気の底をいつと見るかについては、人により、どれだけの景気指標から判断しているかという点のほか、どのような立場(経済的立場上・利害上)からの判断かにより、大きく違ってくることが理解できるであろう。
 この意味では、与謝野大臣などの立場は、多分に株式投資家的あるいは証券会社的な視点での判断であるように思える。そして、株式投資家はいっときでも早く景気の底(そして天井)を確かめたいものである。
 たしかに、世界的にも3月頃に底を打って回復に転じている株式相場は、一時的に下げることはあっても、今後3月の底(1番底)よりもさらに下がる(底が割れる)可能性はすくないと思う。その意味で、すくなくとも株価は底を打ったといえるだろう。
 しかし、私が繰り返し述べているように、株価は景気に先行する指標であっても、期待・予測の集約的表現であり、現実の景気実態ではない。

 私はあくまで、以上に述べたような意味での総合的な判断によって景気の底(谷)を考えたい。その際、現在の日本経済がなお輸出依存型であることを考慮すると、世界景気の動向をとくに重視したい。
 その観点から、今回の最後に、世界銀行が6月21日にまとめたとされる世界経済の見通しに注目しておきたい(日経、22日夕刊)。  
 それによると、世界経済の実質成長率は09年は−2.9%、10年は2.0%、11年は3.2%との予想である。以上の地域的な内訳は、09年は日本(−6.8%)、アメリカ(−3.0%)、ヨーロッパ(−4.5%)、中国(6.5%)、発展途上国全体(中国などの新興国を含む。1.2%)であり、10年は日本(1.0%)、アメリカ(1.8%)、ヨーロッパ(0.5%)、
中国(7.5%)という予想である。     (この項、終り)


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