文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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見通し上の09年と10年

  今回は、IMFが7月8日に発表した改訂版「世界経済見通し」を中心に、最近の内外経済情勢についてコメントしておきたい。
 しかしその前に、7月8〜10日にラクイラ(イタリア)で開催されたG8サミット(主要8カ国首脳会議 )の「世界経済」に関する共同宣言には失望した、というより失笑したことをお伝えしておきたい。その現状認識は、サミットの約4週間前、6月中旬に開かれたG8財務相会議(ラクイラ・サミットの準備会議)の宣言とほとんど同じだったからだ。

 「世界経済には、株式市場の回復、金利スプレッド(金利差)の縮小、企業及び消費者の信頼の回復など安定化の兆しは見られるが、状勢はまだ不確実であり、経済と金融に関する重要なリスクが存続している」(G8 official websight)という文言まで、G8財務相会議の宣言と同じである。これを伝えた日本の新聞の見出しも「世界経済 安定化の兆し」(各紙)というもので、約4週間前と同じである(当「診断録」6月18日号参照)。
 これこそ、一種のデジャ・ヴュー(deja vu 既視感つまり‘前にどこかで見た感じ’)である。とくに、財務相会議の直後、6月15日から米欧日の株式市場で株価がそれまでとは一変して下落基調に転じていたのだから、「株式市場の回復…」というくだりにはあきれた。ラクイラに集まったのは首脳というけれども、世界経済判断に関しては、要するに1ヶ月近く前に下僚が作った下書きを読み上げただけなのだ。もっとも、各国政府として今のところ打つ手はない、という状況なので仕方がないのだろうが。

 さて、6月15日から始まった主要国での株価下落の傾向は先週末まで続いていたが、それは基本的には株式・商品市場及びいくつかの政府(とくに日本)の先走った景気底打ち論が崩れたということであり、景気情勢そのものにとくに大きな変化があったわけではない。要するに、景気後退は依然として進行中、ということに尽きる。この1ヶ月に起きた新しい動向を上げるとすれば、それは原油相場の下落であろうが、これも基本的には景気についての過度の楽観論が是正されたことの結果である(当「診断録」7月8日号参照)。
 いまの景気の段階は、気象にたとえれば(あくまでたとえに過ぎないが)、集中豪雨は去ったが、依然として雨が降り続いており、河川の増水や決壊、土砂崩れなどの危険がまだある、という状態であろう。

 最近では、アメリカの主要小売り業者の6月の売上高が前年同月比で5.1%減少(前年同月比の減少は11ヶ月連続)したこと、ミシガン大学・ロイター調査による7月の消費者景気感調査が3月以降での最低だったことなどが報じられた。
 アメリカの5月の貿易収支赤字が前月に比べて9.8%減少したのは一面では朗報ではあるが、輸出の対前月比1.65%増加はいいとして、輸入が0.6%減だったことはアメリカ経済不振の反映であるし、国別輸入で見て、対中国が前年同月比で18.1%減、対日本が同じく63.3%減だったことは、日中両国にとって小さくないマイナス材料である(日経、7月11日)。
 なお、原油価格の下落は、アメリカ自身が大産油国である(同時に大石油輸入国でもあるが)ために、アメリカの株価と企業業績にも大きな影響を持つことを見逃してはならないだろう。

 わが国の最近の景気指標では、6月の企業物価指数が前月比で6.6%下落し、1960年の統計開始以来最大の下落率となって、デフレーション懸念を強めたこと(各紙10日夕刊及び11日朝刊)、日経新聞社調査によるこの夏の平均ボーナス支給額が前年比16.6%の減少で、下げ幅はこの調査開始以来の最大だったこと(日経、12日)など、依然として景気下降の進行を裏付けるものが続いている。

 さて、以上のような6月中旬以降(G8財務相会合以降)における株価・原油価格などの下落を受けて、今後の世界経済の動向をどのように予測するか。ここでは、7月8日に発表されたIMF(国際通貨基金)による改訂世界経済見通し(あまり一般には注目されなかったが)を取り上げたい。
 この見通しを報じた日経紙(9日)の見出しは、「日本、来年1.7%成長―IMF予測4月から上方修正」というものであり、そのため、最近の株価・原油の動向や景気指標の推移から受けるものとは異なる印象を受けた人も多かったのではないかと思う。
 だが、これもまた「嘘つきが使う統計」の好例である(当「診断録」7月5日号参照)。もっとも、日経紙の場合、これは意図的なウソではなくて、理解不足による統計の誤読だと思われるが。

 このIMF予測の日本に関する部分は、2010年の成長率を前回予測(今年4月)の1.2%から1.7%に引き上げた、というものである。だが、この予測は、同時に、09年の成長率予測を、前回の0.2%からマイナス6.0%へ大幅下方修正しているのである。
 この予測の意味を簡単な計算で調べてみよう。ここで、2008年の日本のGDPを指数表現で100.0と置いてみる。
 そうすると、4月予測では09年のGDPは+1.2%だから101.2となり、10年は09年の+1.2%だから102.4となる。
 これに対し今回7月予測では、09年のGDPは−6.0%だから94.0となり、10年はその+1.7%だから95.6となる。このように、改訂見通しの方が10年の日本のGDPは前回見通しよりずっと小さくなるのだ。つまり、日経紙の報道とは逆に、改訂見通しは10年の日本経済については下方修正なのである。
 なお、日本についてのIMFのこの09年の成長率予測は、OECDが6月24日に発表した同様の予測−6.8%に近い(当「診断録」7月1日号参照)。

 IMFのこの改訂見通しによる、世界と、日本以外の主要国・地域の成長率予測は次の通り(%、カッコ内は4月予測)。

     世界        米国       ユーロ圏
 09年 −1.4(−0.1) −2.6(0.2)   −4.8(−0.6)
 10年  2.5 (0.6)    0.8(0.8)     −0.3(0.1)


      中国     ロシア
 09年  7.5(1.0)  −6.5(−0.5)
 10年  8.5(1.0)   1.5(1.0)
 

 要するにこれは、世界経済も主要国経済(中国など若干の新興国は除き)も、2009年は景気下降の年だが、10年にはおおむねわずかながら回復に向う(早ければ09年後半に底入れ)、というものである。これは、方向としては、現在における世界的な標準的予測(つまり過度に楽観あるいは悲観ではない)だといってよく、私もその点では大きな異論はない。 (この項、終り)


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