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現在日本の不況緩和に、対アジア、とくに対中国輸出の増加が寄与していることは今さらいうまでもない。ところで、それをさらに一歩進めて、対アジア投資を軸にしたアジアとの経済・技術協力が、長期的に見て、このところ活力を失った感がある日本経済復活の方向であるとし、そうした方向が来るべき政権交代によって促進されるだろうとの観測記事がNYタイムズ(電子版、8月18日)に出ていた。
筆者はロイターのコラムニストであるアラン・ウイートレイ(Alan Wheatley)氏で、この記事が北京発という点も興味を引く。その概要は次の通りである。
日本についての懐疑論者は、日本の活力の看板は、貧弱な政策形成、及び時代の変化と厳しい人口動向への適応力の欠如によって、大分前に下ろされてしまったと指摘し、大企業が持つ創造性にもかかわらず、日本は相対的な低落の道にはまり込んでしまったと見ている。
IMFの評価によると、日本経済が1995年の水準に戻るのに2014年までかかるのに対し、中国はその間に11倍に成長し、2010年の始めには世界第2の経済大国になるであろう。アジアの経済的な「発電機」としての日本の役割は中国に取って代わられた。
しかし、日本の長年の停滞の理由のいくつかは、こんご日本が再びアジアでその存在感を高めるチャンスに転化し得るものであり、とくに自民党が次の選挙でその長期にわたる政権を失う場合にそうである。
国内市場の飽和と人口の高齢化に対し、日本の企業はますます海外への生産の移転−移転先での需要への対応と日本への再輸入のためのーによって対応しようとしているようだ。先進諸国の市場への輸出増大が困難になっている今日、日本の企業が成長しつつある発展途上国に注目するのは当然だし、また、これらの新興国の技術水準向上に日本は積極的に貢献し得るのである。
日本はすでにこの戦略を追求しつつある。2003年から2008年までに日本の対外直接投資は70%増えたのに対し、そのうちアジア向けは150%、とくにインド向けは526%、中国向けは220%も増加している。
在ロンドンのコンサルタント企業のアンドリュー・スミサー社のトップは、「日本の企業が人口の減少と国内市場の飽和に直面して、海外へ投資をシフトしていることは明瞭だし、その結果として、企業の国内への投資が減少し、それによって国内での消費と福祉を増やすことが可能になるだろう」と指摘している。
スミサー社その他はこうした傾向の先駆者として、ライバルであるキリン・ホールディングスとの合併を考えている日本の醸造会社サントリー・ホールディングスをあげる。両社はこれにより、国内での市場シェア−の拡大と海外での拡張が可能になるだろう。
トリプル・A・パートナーズのCEOポール・スミスは、「国内での生活水準を維持するためには、日本はもっとサービスに力点を置いた経済、すなわち海外からの所得にもっと依存する経済になる必要がある。日本はすでにそのことに十分に気づいている」と語っている。
逆にアジアは、日本からの資本移転により、ますます利益を得るだろうとスミス氏は指摘している。
アジアでのビジネスにいっそう力点を置こうとする企業の戦略と、鳩山由紀夫の民主党ー8月30日の選挙で自民党に勝ちそうなーの未成熟の対外経済政策はピッタリ合いそうである。
鳩山はすでに近隣諸国との関係の改善 、とくに中国及び韓国との関係改善と、日本を東アジア共同体に統合することに言及している。
自民党政権の下で日本は中国の台頭に警戒的だったし、日本の戦時中の中国占領という負の遺産が重しになって、両国の関係は協力とともに競争によって特徴付けられた。そして、そうしたことがアジアの経済統合を妨げてきた。
しかし鳩山は、靖国神社には参拝しないと言明して、日中両国間の緊張の一つの大きな原因を取り除いた。こんご民主党と中国との間にはよりオープンなコミュニケーションと、ずっと少ない論戦が行われることになりそうである。
NYタイムスの記事の概要は以上のようなものである。私は人口減に対しては独自の政策・戦略が必要であると考えるが、この記事が強調するような、日本とアジアの双方にとっての日本の対外投資の重要性について、(国内での投資の動向にもっぱら注意を払うのではなく)あらためて一層よく考慮してみたいと思う。 (この項 終り)
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