文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

[ リスト ]

 9月4日に発表されたアメリカの8月の失業率は9.7%で、7月の9.4%より0.3ポイント上昇した(失業率9.7%は1983年6月以降での最悪)。しかし、8月中の雇用者減少数(非農業部門)は21万6000人で、7月の減少数(27万6000人)より少なかった。
 この8月の雇用統計がどうなるかについては、8月末頃から世界の株式及び為替市場が注目(警戒)していたところである。ちなみに、株式市場での事前予想は、失業率は9.5%、雇用者減は23万人だった。つまり、失業率は市場予想を上回り、雇用者減少数はそれを下回ったわけだ。  
 では、市場はこの結果にどう反応したかというと、ヨーロッパ(ロンドン、フランクフルトなど)、アメリカ(ニューヨーク)とも雇用者数の減少が予想を下回ったことに着目して、株式相場は反騰した(日本などアジアの市場はこの雇用統計の発表前に4日の取引を終えている)。

 要するに、欧米の市場は「失業率の上昇にではなく、雇用者数減少の縮小に注目した」というわけだ(WSJ=ウォールストリート・ジャーナル電子版、及びロイター電子版、9月5日)。では、株式市場がそのプラス面だけを見ているとしても、実際には失業率の上昇は景気の先行きに関してのマイナス材料ではないのだろうか?明らかにマイナスである。。  
 たしかに、雇用者数の減少(失業者の増加)の縮小が続けば、やがてそれがゼロとなり、雇用面で見ても景気後退は底をついたことになろう。その意味では、雇用統計はアメリカの景気の底への接近を示していると言うことはできる。だがそれにはまだ時間がかかる。大多数のエコノミストの予想では、「失業率は数ヶ月内に10%を越え、2010年中は9%を下回らないだろう」(WSJ、5日)。
 とにかく現実の高失業率及びそのジリ高の傾向は、「たとえ製造業の生産や株価では回復が進んでいるにしても、消費者の所得と支出及びその景気先行きについての信頼感の根強い弱さを予示している」(同前)。

 加えて、アメリカでは金融市場で再び動揺が起きる不安もある。たとえば、「商業用不動産向け融資が金融システムの不安材料としてくすぶっている」(日経ネット、9月6日)。 すなわち、「金融機関が保有する商業用不動産への融資と、その関連の証券化商品の残高は約2兆ドルに達し、金融不安のきっかけとなったサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資=1兆ドル強)を上回る規模になっている」が、「不況の長期化を背景に、以上の融資の延滞率(返済が滞っている比率)は過去1年間に6倍に上昇」して、「なお不安定な米銀経営を圧迫する要因になりそうだ」という(同)。
 このように、金融不安から景気が一段と悪化するリスクも無しとしないのが実情だ。
 
 したがって、9月5日にロンドンで開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議がその共同声明で、「世界経済の改善を指摘しつつも、雇用不安など下振れ(景気のさらなる下降)懸念があるとの認識」を示し、「景気回復が確実になるまでは財政拡大や金融緩和を継続すべきだ」(日経、6日)と表明したのも当然である。
 G20での共同声明以外の発言を見ても、たとえばドイツのシュタインブリュック財務相は、同国のGDPが4〜6月期にプラスを記録したにもかかわらず、「われわれすべては、あらゆる手段を使って金融市場を支えていかなければならないし、必要な景気刺激策を実行しなければならないと確信している」と語ったし、他の国のトップ金融当局者もこの見解に同調し、「成長の兆しに浮かれるのはまだ早過ぎる」と述べた(NYタイムス電子版、6日)。

 わが国の今後について言えば、さしあたり、来る9月16日にスタートする鳩山内閣のマニフェスト実行への取り組み、とくに今年度補正予算の組み替えと来年度予算編成のあり方を注視したい。      (この項 終り) 

(補論) 当「診断録」前号(9月2日号)へのコメントとして、私がロイターの記事を引き合いに出して、「経済の現状に対して資産価格の上昇が先行しているとの懸念」があると指摘したのに対して、「ロイター記者はなぜ株価と書かずに資産価格という広い概念を使ったのか」との疑問(Swimming氏)があった。
 ご指摘のように、「所得(収入)」に対する「資産」とは、金融資産(預金、債券、株式など)から書画・骨董や不動産(土地・家屋など)まで範囲が広いが、最近の中国では株式とともに不動産の価格(相場)の上昇が著しい(日本やアメリカでは見られないが)ので、ロイターの記事ではそれを念頭に「資産価格」と一括したわけです。
 なお、中国では、一般国民には株式よりも不動産(とくに家屋)の方が関わりが広い(株所有者より家屋所有者の方がずっと多い)ので、もし不動産価格のバブルが進行し、やがてそれが破裂する(その結果として自分の不動産の評価額が暴落する)ようなことになると、それが政治不安に直結する恐れが大きい、と私は聞いている。だから、当局は株式バブルとともに、いなそれ以上に不動産バブルの発生と発展を警戒するのだと思われる。   (以上)

閉じる コメント(1)

顔アイコン

補論で疑問に回答いただきありがとうございます。「中国では経済の実態に比べて、不動産の価格の上昇が著しいため、これを懸念して株価が大幅安となり、商品価格も下落している。」と読み直します。
なお、前回「ロイターの記者」とかきましたが、ロイターは通信社で、各メディアはこれを使って配信しており、ロイター自身が取材をしている訳ではないことに気づきました。先生のようにロイターの記事と書くのが正しいと思います。

2009/9/7(月) 午前 7:54 [ ねずみ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事