文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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長期停滞論

 11月6,7日にセント・アンドリュース(英)で開催されたG20(主要先進国と新興諸国の20カ国・地域)の財務相・中央銀行総裁会議は、そのコミュニケで次のように述べた。「経済と金融の条件は、危機に対するわれわれの協調した対処策により改善された。しかし、回復は一様でないし、また政策のサポートに依存しており、高い失業(率)が大きな懸念である。世界経済を再建し金融システムを健全化するために、われわれは回復が確実になるまでサポートを続けることを合意した」(G20:Information Centre)。
 実際にも、アメリカではオバマ大統領が6日に製造業の輸出促進策や法人税減税などを柱とする追加景気対策の検討に着手したと声明し、日本では鳩山内閣が3兆円規模の2009年度第2次補正予算を編成する方針を明らかにした(日経、11月10日夕刊)。ドイツでも2010年に240億ユーロの減税などを実施する予定である(NYタイムス電子版、11月11日)。

 このようにG20が景気刺激策の継続について合意したことを好感して、週明け11月9日のNY市場ではダウ平均株価が203.52ポイント(2.03%)高と大幅に上昇し、1年1ヶ月ぶりの高値(10226.94)をつけた。ヨーロッパ市場では、ほぼ同様の理由で、FT100(ロンドン)は92.46ポイント(1.8%)、DAX(フランクフルト)は131.47ポイント(2.4%)上昇した。
 NY株価の上昇を受けて10日の東京では日経平均も上昇したが、その幅は61.74ポイント(0.063%)と小さかった。これは、NY株価の上昇と同時に起きたドル相場の下落(円高)の影響が懸念されたためである。
 
 ここで付言しておくが、NYタイムス(電子版10日)やフィナンシャル・タイムス(同)によると、NY株価がG20の合意を受けて上昇したのは、G20がドル相場の下支えについてなにも言及しなかったこと、そしてその直後に為替市場でドル相場が各国通貨に対して下落したことが大きく影響したためという。
 すなわち、アメリカの低金利継続の下でドル相場が下落する見通しになると、ドルで保有している資産(預金や債券)を手放して金などの実物資産や株式などを購入する動きが刺激される、というわけである。実際、金価格は10日に1オンス1105.20ドルの史上最高値をつけた。
 ドル安が進むとすると、それはアメリカの輸出を促進する効果を持つので、さては米政府の輸出促進策(上述)の一つはこれだったのか、との疑念が私には起きた。

 さて、本題へ戻って、ここで今回のG20合意がもつ意味について考えてみたい。その点で最も重要だと思われるのは、今回の景気後退が始まって(後退の始点はほぼ2007年末)2年近く、また金融危機で後退が深刻化してから1年が経ち、この間に積極的な景気対策が各国で取られたにもかかわらず、依然として景気が「政策のサポートに依存して」いる(G20のコミュニケ)という事実と、対策の継続が確認されたことである。
 つまり、手厚い景気対策にもかかわらず、民間消費や企業設備投資などの自力(民間)回復力がまだ現れて来ていない、という事実が確認されたわけである。
本来、景気対策とは「呼び水」政策(pump-priming-policy)であると考えられてきた。つまり水が出てこなくなった井戸に水を注入してポンプを動かすと再び水が出だすように、景気対策という呼び水を注入して民間の需要を「呼び出す」ことがねらいであった。だが、今回は呼び水の効果がなかなか出てこないのだ。

 その原因について、私はこれまで、それは今回の景気後退が与えた大きな打撃により、消費者も企業も経済とその先行きについての信頼を失ったからではないか、という趣旨のことを述べてきた。そのこと自体は妥当だと思っている。
 だが、そうしたことのさらに根底に、今日の先進資本主義国の経済が長期停滞の時期に入っているという事実があるのではないか、との仮説を検討する必要を感じている。日本経済は一足早くすでにそのことを経験しているといえる。

 その点を示すために、最近の日本のGDP の大きさを取り上げてみよう。2008年のGDPは、名目では(すなわち市場価格そのままで集計した金額では)507兆5693億円、実質(名目金額から価格変動の影響を統計的に調整した数値)では556兆5835億円だった。いま、この名目GDPとほぼ同額のGDPが生産された過去の時期は何時だったかを見ると、1996年(504兆2620億円)である。
 最近の実質GDPは、日本の物価が下落傾向にあったために、計算上は名目額よりは大きく表現される。しかし、税金、したがってまた政府の税収などは、すべて名目の(すなわち生の)収入を元にしている。その意味で名目値は、とくに現在のようなデフレの時期には、経済の生の(なまの)姿を示すといえる(インフレの時期には逆に実質値でないと経済の実相はつかめない)。 

 以上に見られるように、日本のGDP(名目額)は、途中で変動しているが、この10年以上にわたり横ばいなのである。さらに、日本のGDPは景気後退の下、四半期ごとに分けてみると、08年4〜6月期から減少してきた(実質値は09年4〜6月期に若干のプラス)。
 そこで09年4〜6月期のGDP(名目)を見ると、年率換算で478兆8322億円だった。これと同額あるいはそれ以下のGDPが生産された過去の時期を調べると、内閣府ホームページの統計でさかのぼれる範囲では、年間数値では1994年以降には無く(すべて478兆円よりは大きい)、四半期数値では1997年1〜3月期 以降には無い(同)。
 このことは、今回の景気後退によるGDPの落ち込みがいかに大きかったかを示すとともに、日本経済が長期的に見るとまさに停滞下にあることを実感させる。

 いまは日本だけではなく、先進主要国はおしなべてこうした長期停滞期に入っているのではないか、というのが検討すべき仮説である。
 では、資本主義経済はなぜ長期停滞に入るのか。代表的な見解を一つ紹介しておく。アメリカのアルビン・H・ハンセン(1887〜1975。「財政政策と景気循環」、都留重人訳、日本評論社、1950)は、資本主義発展の原動力は新投資にあるとし、それを呼び起すものは、人口の増加、新領土や新資源の発見、技術革新であると見た。ところが、それらは20世紀に入ると枯渇してきた。他方で、経済が高度に発展すると国民の所得も高くなり、貯蓄も多くなる。その結果、投資不足(あるいは貯蓄過剰)が起きやすく、経済は停滞する、というわけである。
 こうした理論は、1930年代の長期停滞(大不況)の経験を理論化しようとしたものである。

 実際にはその後の資本主義経済は、30年代以降の波状的なな技術革新のほか、第2次大戦、その戦後復興、アメリカによるマーシャル援助、朝鮮戦争、ベトナム戦争などの予想外の外部的刺激を受けたこともあり、多くの国では20世紀のうちはそうした長期停滞を経験せずにすんだのであろう(もっと詳しく検討の必要があるが)。ただし、日本は1990年代の中頃から、人口減(まず少子化)の影響を受け始めたと私は見ている。
 もし、この仮説通りに、先進主要国が長期停滞期に入っているのであれば、当然に景気回復は遅く、回復しても回復力は弱いものとなろう。 (この項 終り)

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今日の診断録を読んで先生が9月23日の診断録で、「私は民間需要沈滞の原因について、これまで金融危機の影響のほかに、第3次石油危機の後遺症、さらに日本の場合には人口減のデフレ効果などを指摘してきた。だが、今後の展開いかんによっては、主要国に共通の、もっと長期的な問題の存在を指摘する必要が出てくるかも知れない。」と主張されている中身が、「先進資本主義国の経済が長期停滞の時期に入っているのではないか」と考えられていることが分かりました。
そうだとすると景気回復はかなり悲観的になりますし、「呼び水」政策の筈の景気対策の長期化と財政の一層の悪化が容易に想像できます。

2009/11/12(木) 午後 6:39 [ ねずみ ]


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