文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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ドル安は米国の政策

 ニューヨーク為替市場で11月25日(現地時間)にドルが主要通貨に対して下落する中、ドル/円(1ドルあたりの円)が87円台に下落したのを受けて、26日の東京市場ではドルは86円台にまで下落、14年ぶりのドル安・円高となった。 このドル安は、直接には、24日に公表された11月初め(3,4日)の米連邦準備制度(Fed、米国の中央銀行)の公開市場委員会(金利政策決定の委員会)の議事録により、連邦準備が「長期にわたって金利を例外的に低い水準に維持する」ことを決定するとともに、「これまでのドルの下落は秩序だったものである(the fall in the dollar had been orderly)」と述べていたことが明らかになったからである(NYタイムス電子版、11月26日)。 
 つまり25日からのドル安は、米国中央銀行が今後も長期にわたって超低金利政策をとること、またドル安を放置することが明確になったためである。

 ドル/円の相場(東京市場の終値)の推移を振り返ると、最近のドルの高値は10月26日の92.17円で、その後同30日に90円台、11月6日に89円台、同20日に88円台に下落(円でいえば上昇)した。つまり、10月の最終週から最近のドル安が始まっているわけである。
 こうした流れを定着させたのが、11月6,7日にセント・アンドリュース(英)で開催されたG20(主要先進国と新興諸国の20カ国・地域)の財務相・中央銀行総裁会議会議である。そのコミュニケでG20は、「世界経済を再建し金融システムを健全化するために、われわれは回復が確実になるまでサポートを続けることを合意した」と述べるとともに、進行しているドル相場の下落に関して、その下支えには言及しなかったことが注目された(NYタイムス及びフィナンシャル・タイムス電子版、11月10日)(当「診断録」11月11日号参照)。
 この報を受けて、G20直後の11月9日にはNY株式のダウ平均は203.52ポイント(2.03%)の急上昇をし、商品市場では金相場や石油相場が上昇した。
 このことについて上記の「診断録」は次のように書いた。「アメリカの低金利永続の下でドル相場が下落する見通しになると、ドルで保有している資産(預金や債券)を手放して金などの実物資産や株式を購入する動きが刺激される」、また「ドル安が進むとすると、それはアメリカの輸出を促進する効果を持つので、さては米政府の輸出促進策のひとつはこれだったのか、との疑念が私には起きた」と。

 今回(11月24日)公表された Fed の公開市場委員会の議事録により、私の疑念は裏付けられたと感じたし、11月上旬のG20で米国はドル安放置につき参加各国の同意(あるいは暗黙の了解)を取り付けたことが明らかになったと思う。 なお、このG20にわが国の財務省からは藤井財務相が欠席し、野田副大臣が出席している(白川日銀総裁は出席)。わが国の財政・金融当局は、このG20での為替相場了解(暗黙の?)の「蚊帳の外」にいたのではないか。
 かねてドルの安定を強く求めていた中国がこのG20了解に異を唱えなかったのも奇妙だが、その間の事情は後で述べる。
 なお、わが国には、ドル安になっても米国内で輸出増でその恩恵を受けるのは工業だけで、その工業の米国経済におけるウエイトは大きくないから、ドル安は米国にはそれほどのメリットがないのではないか、との意見がある。しかし、ドル安は、米国の輸入を抑制する効果もあるので、その米国にとっての意味は小さくない。 

 米国の低金利継続とドル安推進(すくなくともドル安放置)を効果あるものにする上で不可欠なのが、大黒字国である中国の人民元の対ドル相場の上昇である。ところが、中国政府は人民元の為替相場をドルに事実上ほぼペッグ(釘付け)している。したがって、こうした中国の為替政策を変更させ、人民元の対ドル相場を切り上げるか、元相場の弾力化を実行させる必要がある。
 このため、最近米国そしてIMF(国際通貨基金)は中国に対する人民元切り上げの要求を強めている。例えばオバマ大統領は11月14日からの訪中の際に事実上人民元の切り上げを求めた(当「診断録」11月19日号参照)。またストロスカーンIMF専務理事は11月16日に北京で、人民元の上昇は「中国の国内消費を拡大させ、世界的不均衡の是正を促進するために実行する必要のある改革の一部」との考えを示した(ロイター電子版、11月16日)。
 
 中国は、このような元切り上げ要求に抵抗している。胡錦濤主席はオバマ大統領の要請に応じなかったし、また、中国訪問中のオバマ大統領が上海から北京入りする11月15日に、中国銀行業監督管理委員会の劉明康委員長は北京で開催された金融フォーラムで講演し、「米国連邦準備の超低金利継続方針とドル安が新たなシステミックリスクとして浮上している」と批判した(ロイター電子版、11月16日)。
 すなわち劉委員長は、米国の超低金利とドル安は「すでに大規模なドル・キャリー取引(注)につながっており、世界的な資産価格に大きな影響を及ぼし」、「株式市場と不動産市場の投機的投資を誘発しており、世界的な回復、とくに新興国市場の回復に克服し難い新たなリスクをもたらす」と強調した(同上)。
 
(注)ドルキャリー取引とは、米国で安い金利でドルを借り入れ、その資金を株式、商品、不動産市場(世界各国の)で投資すること。かつて2001年以降に日本銀行が超低金利と量的緩和の政策をとった際には、円キャリー取引が極めて活発に行われ、世界的な不動産バブルなどに小さくはない役割を演じた。

 米国は、景気後退は大きく緩和して来ているが、なお失業率が上昇しており、また民間の消費、住宅投資、企業設備投資が依然として回復しない状態である。他方、政策的には財政面から追加的な景気回復策をとりにくいし(財政赤字が非常に大きくなっている)、金融の面でも低金利の継続以外に打つ手はない状況である。しかも、オバマ大統領への支持率は49%にまで低下している(ギャラップ社の世論調査、11月20日の発表)。
 そういうところから、当面は連邦準備がことさらに低金利継続を強調し、ドル安を促進するぐらいしか「手」がないのかも知れない。
 
 1929年の大恐慌に続く大不況期には、1931年9月の英ポンドの金本位制からの離脱とポンド相場下落が不況脱出策の一つとなった(日本がすぐに追随)。それがやがて各国の通貨切り下げ競争に発展した。
 今はそのような危険はないと思われるし、むしろ、先のG20で見られたように、多くの国は不況からの脱出を目指して苦闘する大国・米国の動きをある程度は黙認するように思われる。そして、ドル安の効果を発揮させるためにも、中国の人民元切り上げへ向けての国際的圧力が強まるように思われる。
 米国も人民元問題については、オバマ大統領のアジア訪問を契機にアプローチを変え、これまでの米中2国間の交渉から「G20やIMFを通じた多国間の監視を通じて改善を促す」方向になってきたという(MSN産経ニュース、ワシントン発11月20日)。
 中国としても、このような国際的な流れを前にしては、元の切り上げを拒否し続けることが困難になってきているのではないか。
 
 以上のような状況では、日本がドル安阻止(円高阻止)に動くのも困難だろう。むしろ、日本は一層努力して内需を振興し、円高の国内要因であるデフレの克服に全力を挙げるべきである(その点で鳩山内閣の政策は大いに不安を抱かせるが)。          (この項 終り)
 

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1国が長期に渡って大黒字となっていることは、反対に長期に渡り赤字の国があるということですから、中国もいつかは元の切り上げを行うことになると思います。
元の切り上げにより、人民元の購買力を高める等のメリットもあると思います。
今日の診断録を読んで、為替相場は国と国との利害がぶつかり合う場、との印象を強く持ちました。

2009/11/27(金) 午後 8:14 [ ねずみ ]


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