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先週来の円高狂想曲に対し、政府・日銀が為替介入などの無意味・無駄な方策に走らず、問題の根本にある日本のデフレーションへの対策に真正面から取り組み始めたようなのは、その内容はひとまずおいて、結構なことだと思う。株式市場、為替市場も11月30日、12月1日には落ち着きを取り戻したようである。
この対策などへのコメントは後日に譲ることとし、今回は最近にわかにジャーナリズムを賑わせている、鳩山由起夫首相退陣の説を取り上げ、紹介し、コメントしておきたい。
私が見た限りで鳩山進退説を取り上げていたのは以下の週刊誌・月刊誌(とそれぞれの記事の見出し)である。
▽「週刊文春」(12月3日号)…「囁かれる来春の『首相辞任』 菅氏が見すえる『ポスト鳩山』」
▽「週刊現代」(12月12日号)…「小沢一郎 鳩山を切る」
▽「サンデー毎日」(12月13日号)…(小沢周辺から漏れてきた 鳩山首相年明け辞任表明)
▽ 「選択」(12月号)…鳩山政権『崩壊』の序曲始まる
以上のいずれも、鳩山首相が自身の不明朗な献金問題で行き詰まること、普天間問題で迷走しているように、政策面でこれといえるようなリーダーシップを発揮していないことを共通してあげ、その早期の退陣を予想している。そして、今のところ鳩山内閣は、予算の仕分けを公開で行い、予算の無駄を積極的に切ろうとしていることが国民の共感を得てまずまずの内閣支持率を保っているが、このままでは支持率がだんだんと下がることは必至だ、と見ている。
このうち「週刊現代」と「サンデー毎日」は、11月24日夜に京セラの稲盛和夫名誉会長(小沢一郎民主党幹事長と親交があるといわれる)の呼びかけで、銀座「吉兆」で、鳩山、小沢、菅直人副総理、岡田克也外相、前原誠司国土交通相、輿石東参院議員会長らの会談が行われたことを伝えている。そして、「週刊現代」はこの席上での鳩山・小沢両氏のやりとりが気まずいものであったこと及びその他から、「小沢氏はいよいよ鳩山政権を見限りはじめた」と書いている。また「サンデー毎日」は、この会合の直後から、しかも小沢氏の周辺から、「間もなく鳩山首相が辞任する」という情報が流れ、永田町を駆け巡ったという。
私はまず、鳩山首相が自身への献金問題で大変な苦境に立ち、進退の危機に直面していることはその通りだと思う。そもそも、一国の政治の責任者たる者が、いつも政治家個人としての自らのモラルを問われ、その対応に汲々としているようでは、その大きな責任は果たせるものではない。首相ともなれば、日夜、国の実情と国政のあり方を専心考えているのが当然である。おそらく鳩山首相自身、内心ではその点での自らの矛盾を痛感してきているはずだ。
これと類似したことを、私は小沢民主党党首(当時)が自身の政治資金問題で苦境に追い込まれた時に以下のように書いた(当「診断録」3月9日号)。「本来は、政権奪取に向けて最後の攻勢をかけるべき時に、自分自身の潔白を説明するためにマスコミと世論に追い回されているわけで、すでに党首としての役割を果たせないようになっている。というより、むしろマイナスの効果を招いている」。
結局、小沢党首は辞任せざるを得なかった。いまの鳩山首相もこの時の小沢党首とまったく同じ立場だ。
鳩山首相に政治的リーダーシップが不足していることも、上記のジャーナリズムが指摘するとおりだ。
鳩山氏には、官僚依存からの脱却、アジア重視の外交姿勢や温室効果ガス25%削減案提案のように、政治家個人としての独自の判断、発想があることは事実である。しかし、民主主義政治の下で最高指導者に最も必要なことは、あらゆる問題について、とくにいろいろ周辺の意見が割れた時に、最終的には自らの判断を持ち、それによって部下や周辺を説得することである。鳩山首相に欠けているのは、そうした説得の努力と責任の自覚、説得に乗り出す上で自ら持つべき最終判断と確信である。
普天間基地問題はその好例だ。これが難問であることは否定できない。外相や防衛相が迷走するのもそのせいだろう。そうであれば、首相自身が熟慮して最終判断を持ち、それで閣僚も沖縄県民も連立している他党も、そして米国を説得しなければならない。ところが、鳩山首相は、外相、防衛相らと駐日米国大使らとの協議の結果待ちで、その上で自ら結論を出すのだという。これでは総理の存在意義がない。
今のままなら、たしかに鳩山内閣、そして民主党への国民の支持は低下せざるを得ないだろう。それではまずいと私は思う。現政権は、たしかにまだ拙い所があるが、これまでの自民党政権とは違い、官僚の天下りの廃止、予算の無駄の摘出、国民生活への配慮など、日本の政治では初めての改革といえるような政治を始めた。これをただ潰すだけでは、折角芽が出た改革は消えてしまいかねない。
とくに、野に下った自民党が、まともな反対党になるための政策的反省と努力をほとんどしていないからなおさらである。自民党がいまやっていることは、極論すれば、鳩山献金問題を追及することと、鳩山政権の下では日米関係が悪化すると恐れることぐらいではないか。これでは、政権交代をしてもわが国の事態はまったく好転しないだろう。
そう考えると、私は鳩山首相は早めに、そしてよい時期を見計らって自主的に(言われるような小沢幹事長の影響力によってではなく)辞任し、民主党は新しい党首・首相を選んで出直し、後顧の憂いを絶って、連立与党とともに改革と日本経済の再生に全力を傾注すべきだと思う。 (この項 終り)
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今日の診断録は、職場においても、管理職としてのリーダーシップにも共通するものを感じながら読ませていただきました。
2009/12/2(水) 午後 6:45 [ ねずみ ]