文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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デフレ対策の決め手

 日銀が12月18日に開いた政策委員会・金融政策決定会合で、日銀としては物価について「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」(決定会合の発表全文、日経、18日夕刊)との態度を表明したことを契機に、あらためてデフレーションをめぐる論議が活発化している。
 なぜこの時期に、遅れ馳せに日銀が「デフレ容認せず」の態度を表明したのか。白川方明総裁はこの点に付き記者会見で、物価に付き「時として、日銀がマイナスの領域を容認しているとか、デフレを容認しているとの声が一部にあったことは事実」なので、「そうした誤解があるのであれば、解いた方がいいということである」と説明している(日経、19日)。だが、日銀がデフレを軽視していたことは否定できない。それが、政府が11月20日に発表した11月の月例経済報告で、景気は「ゆるやかなデフレ状況にある」と認定し(当「診断録」11月22日号参照)、それを契機に世間でデフレ脅威論が高まり、政府からは亀井金融相などによる日銀批判が唱えられるようになったので、弁明の必要を感じたのであろう。 

 しかし、この政策決定会合の発表文を読むと、日銀がなぜデフレ容認せずと言明したのかは論理的には説明され得ない。なぜなら、日銀は相変わらず景気と物価についての楽観論を展開しているからだ。
 すなわち、この発表文(上記、日経)は、「わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している」とし、その民間需要についても、「設備投資は下げ止まりつつある。…個人消費は、…各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している」と述べている。
 そして将来については、「2010年度半ばごろまでは、…持ち直しのペースはゆるやかなものにとどまる可能性が高い」が、「その後は輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる」と見通している。
 そして物価については、「石油製品の価格(下落―引用者加筆)などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる」という。

 このような現状認識と将来展望では、「日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している」と述べても、とってつけたようにしか聞こえない。しかし、とにかく、そうした課題にこたえるにために、日銀は「金融政策運営に当たっては、極めて緩和的な金融環境を維持していく考えである」との決意表明をしている。
 だが、実際には、デフレ対策として日銀は意味あることをほとんどなし得ないだろう。なぜなら、もし金融緩和が過ぎると、過去にしばしば経験したように、マネーと投機の過剰を招くだけで、実体経済にはプラスをもたらさないからだ。ただし、日銀が中小企業金融に役立つ前例がないような特別な手段を提供するなら別だが、大銀行・大企業中心の現在の日銀金融にはそれは望むべくもないだろう。 

 では、デフレを克服するためには何が必要かつ有効か。そのためには、まず、現在のゆるやかなデフレーションの原因を理解しなければならない。
 その原因としては、「09年7〜9月期に約35兆円の需要不足」 があり、その「国内総生産(GDP)に対する比率は7%で、米欧の3〜4%を上回る」うえ、「少子高齢化といった固有の問題」(日経、12月17日)もあることについては、いまではほとんど誰も異論はないだろう。問題は、そうした需要不足そのものの原因は何か、だ。
 その点では、家計にとっては近来にない生活の(とくに老後を含む先行きについての)不安 、家計・企業の双方にとっては日本経済の見通しがたてられないことが一番の問題であろう。そうであるから、消費も投資もなかなか積極化しないのである。そうした、不安、見通し難を解消(すくなくとの緩和)するためには何が必要か。
 
 家計の不安を除くためには、年金、子育て、医療、雇用などについての社会的保障を確立すること(すくなくともその方向を政治的に明確にすること)が不可欠であり、日本経済の見通しをたてられるようにするためには、総需要の不足を補うことが必要だ。このいずれも、財政の出動なしには達成できない。
 ところが、周知のように、過去の財政赤字の累積で公債残高(国と地方を合わせた)は2009年度末(09年度第1次補正予算までの計数)には804兆円、そのGDPに対する比率は157.5%(第2次補正予算でさらに増大)となる見込みで、これは先進国中の最高(最悪)の比率である(わが国では貯蓄率も高いが)。
 このため、いまや需要補給、社会保障拡充などのために財政の出動が要請される度に、財政赤字増大と国債発行の増加を理由とする、政府支出増大への警戒論が強まるのが常態になっている。
 現に、子育て手当の支給を中心とする鳩山内閣の成長促進策に対しても、自民党、財界、マスコミは執拗にそのための財源不足を唱えて牽制してきた(一方で成長政策を要求しながら)。また、政府はそうした批判にたじろいで、不況対策、成長促進策については及び腰だ。

 このディレンマをどう解決するか。経済界やマスコミは結局は旧態依然たる公共事業拡大と増税組み合わせという考えのようだ。 
 日経は、例によって「政治色の濃いデフレ宣言」とデフレに八つ当たりした上で、「民主党は自民党を支持してきた大企業への支援を事実上封印している。それが足かせとなり、有効なデフレ対策を打てないようだ」(12月19日、企画連載記事「デフレと闘う」の下)と大企業支援論と暗黙裡の公共事業拡大論を主張している。だが、この記事は、「空疎な言葉はもう要らない」(同)と言いながら、自らは財源論を示さない。
 それに対して、日経のコラムに登場した「デフレの処方箋」という外部筆者による小論(誠児、12月19日)は、「規制改革に加えて、即効性の高い公共事業の拡大が望まれる。…長期金利は低位安定している。現時点で国債増発を恐れる必要はないはずだ」と端的に主張した上で、財政再建については「デフレ脱却後速やかに消費税を段階的に引き上げる考えをコミットする」と具体的対応を提言している。
 だが、デフレ脱却後という条件付きであっても、国民は財政支出の拡大と増税のセットでは、自らの負担増への警戒に加えて、増税による景気再悪化への恐れで、家計と企業は容易には支出を拡大しないだろう。 

 結局、需要追加のための財政支出増加(ただし旧来型ではない、民生中心の)と国債発行増大のディレンマを解決するためには、私がしばしば主張しているように、国債(無利子・無期限)の日銀引受けが最善である。私のこの主張は、日銀券(実は国家紙幣)の発行方式の根本改革の主張を基礎にしたものだが(当「診断録」3月4日号、同3月23日号その他を参照)、上記の主張は現政府に今そうした根本改革を要求するものではない。国債の日銀引受けという結論部分だけを実行するよう期待するものである。
 それも実行困難というのなら、次善の策は上記の「誠児」氏が唱える、従来方式による国債増発(ただし増税約束のない)である。たしかに、国民の高い貯蓄率があるので、金利の大きな上昇なしにそれは実行可能であり、「大部分のアナリストは、日本は市場条件の差し迫った危機には直面していないし、借入れの余地(政府による−引用者加筆)があると言っている」(フィナンシャルタイムス電子版、12月8日)。
 不況を克服し成長を軌道に乗せれば、国民所得は増加して税収は増加するので、財政も好転するはずだ。また、民主党政権(連立でも)は約4年間は続くはずだから、経済回復後に「出口戦略」を実行すればよい。

 したがって、政府は事業仕分けのような財政支出の厳格な査定と併せて、民主党のマニフェストに沿った政策的支出を、編成中の2010年度予算に思い切って組み込むべきだ。それが唯一有効なデフレ対策である。私はその点では亀井静香金融相の積極論に賛成だ。      (この項 終り)

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日本の経済学は、幼稚園です。

2009/12/20(日) 午後 6:44 [ 悲歌慷慨 ]

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今日の診断録を読んで、経済の専門家が揃っている日銀が何故景気と物価について楽観的なのか、理解できないでいます。金融緩和の効果を過大視しているのか、それとも悲観的なことを言った時に更に消費者心理がマイナスに働くと考えているのでしょうか。
日銀の方から、「国債を引き受ける方法もあるが」と内々打診することはできないものでしょうか。(財政法の精神からやりにくいとは思いますが。)

2009/12/22(火) 午前 6:47 [ ねずみ ]

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初めて拝見させていただきました。
積極財政方針、賛成です。
日銀の量的緩和の効果がない点もおっしゃるとおり。2000年前後にクルーグマン氏(後のノーベル賞学者)が日銀批判していたものを、誤りを認めているようです。
しかし、民主党のマニュフェストに景気を立て直すような策はありますか?30日の成長戦略も実行するには中身がなく、菅・藤井のマクロ経済無知(無視?)を考えると前途多難ではないでしょうか?

2010/1/2(土) 午後 1:29 [ 戌渡 ]


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