文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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最大?実は緊縮予算

 2010年度予算の政府案が12月25日の閣議で決まった。歳出総額92兆2992億円、国債発行額44兆3030億円のこの予算につき、26日の主要各新聞は歳出総額については「過去最大」(朝日、毎日)、「最大」(日経、読売)と強調し、国債発行額についても「国債最悪44兆円」(読売)、「国債…税収を超す」(朝日)、「国債…歳入の半分」(日経)、「借金頼みの公約実現」と驚き、嘆いて見せた。
 だが、こうした10年度予算の特徴付けは根本的に間違っている。

 私がしばしば当「診断録」(10月23日号、同27日号など)で取り上げたように、10年度予算の規模や国債発行額は、麻生前内閣が編成し、成立した2009年度当初予算と第1次補正予算の合計額と比較すべきものである(この補正予算は早くも09年度初めの4月27日に国会へ提出されている)。09年度予算とはまさにこの合計額をさすのだ。
 念のために付け加えるが、ある財政年度の予算とはあくまで当該年度全体についてたてられるべきもので、はじめから補正予算を予定すべきものではない。鳩山内閣の10年度予算も、当然、補正予算を想定したものではないはずだ。
 なお、09年度予算は、後に鳩山内閣の手になる09年度第2次補正予算によって若干変更されているが、その点については後で補足する。
 
 その09年度予算の歳出総額は、当初予算で88兆5480億円、第1次補正予算で13兆9256億円、合計102兆4736億円であった。また国債発行額は、当初予算で33兆2940億円、第1次補正で10兆8190億円、合計44兆1130億円であった。 この計数は財務省ホームページに現在も掲載されている通りのものであるが、念のためこの補正予算を国会に上程した時(4月27日)の与謝野財務大臣の財政演説を引いておく。すなわち彼は次のように述べている。「これらの結果、平成21年度一般会計補正後予算の総額は…102兆4736億円となります」。また「平成21年度の公債発行額は44兆1130億円となり、公債依存度は43.0%となります」と(財務省ホームページ)。
 麻生内閣によるこの09年度予算と比較すると、鳩山内閣の10年度予算は、歳出で10兆1744億円減(マイナス9.9%)の緊縮予算になっている。また、国債発行額は1900億円、0.4%の増加に過ぎない。つまり、ほぼ同額なのだ。
 
 ところが、マスコミの評価は始めに見たとおりである。推察するに、各新聞記者はおそらく財務省のレクチャー通りに無批判に書いており、結果的に財務省の予算抑制方針のお先棒を担ぐかたちになっている。
 なお、日経は「麻生予算」と「鳩山予算」を歳出・歳入両面で図(棒グラフ)により比較しており、たしかに麻生予算については1次補正分をも図示しているが、この部分だけは点線で当初予算に上乗せるかたちにし、予算総額の比較の対象からは外している。つまり、麻生補正予算を無視してはいないが、歳出・歳入とも結果として意識的に麻生当初予算と鳩山予算を比較するかたちにしている。また歳入の比較の図では、1次補正における国債の追加発行額を明示せず、国債発行額は麻生予算では33.3兆円、鳩山予算では44.3兆円と受け取れるような図になっている。これなどは意識的に鳩山財政を膨張的で過度に国債依存的な財政と印象づけようとしていると言える。
 だが実際には、繰り返しになるが、鳩山財政は自民党、財務省やマスコミの大合唱に押されて、事実上で不況後にとるべき「出口での財政」を過早にとりつつあるのだ。

 ところで、鳩山内閣が先に決定した09年度第2次補正予算はどういうものか。この補正については、「明日の安心と成長のための緊急経済対策費」と銘打った7兆2013億円の支出が喧伝されている。
 しかし、この補正予算による歳出増加額は、この「緊急経済対策費」に「その他の経費」2274億円を加えたものから、「既定経費の減額」7兆3441億円(09年度第1次補正予算の執行停止額2兆6969億円、地方交付税交付金の減2兆9515億円を含む)を引いた残りの846億円だけである(財務省ホームページ)。  
 
 つまり、第2次補正によっても、09年度予算の合計歳出額はほとんど変わらないのである。たしかに、第2次補正では、公共事業費などの減額とは対照的に、雇用、環境などへの支出の増加が図られており、その点で不況対策の中身は民生重点に変わったと言える。しかしそれは、景気に対する追加策と言っても、おそらく景気に対してはほぼ中立的(刺激的でもデフレ的でもない)ではないかと思われる。
 ただ、鳩山内閣成立直後には、09年度第1次補正予算の(部分的な)執行停止の方針だけが伝えられたため、むしろその当面のデフレ的作用が危惧されたが、そのおそれはなくなったと言えるだろう。

 それでは、10年度予算の経済効果をどう見るか。この点については、今回は総論的に述べるにとどめるが、私は上述した通り歳出総額としては景気に抑制的と見る。一時亀井金融相が10年度予算は最低でも歳出95兆円が必要と主張していたが、それにも及ばなかった。したがって、10年度のわが国の景気の進行は、子ども手当の支給や、いわゆるエコ減税の継続と追加(エコ住宅の減税)などによる消費刺激は期待されるが、基本的にはやはり輸出増加の効果頼りにならざるを得ないと思われる。
 この点につき、26日のマスコミは、「財源の壁 公約縮む」(朝日)、「公約に財源の壁」(毎日)、「マニフェスト失速」(読売) と緊縮予算(実はマスコミ自らもそれを主張してきたのだが)の制約を指摘していたのに対し、日経は「ばらまきで安心得られず」(実哲也経済金融部長署名)と子ども手当など自体を批判していた。

 しかし、景気に対する効果は未知数で、おそらく限定的だろうが、継続的な子ども手当などは「ばらまき」(麻生内閣による1回限りの定額給付金のような)とはいえず、「子供は社会全体が育てる」という理念の下で、長期的に人口減に対する抑止効果をも期待できるものである。
 それに、一般民衆が国の予算により直接にまとまった恩恵を受けるのは今回が初めてではないかと思う。これまでは、国の予算による景気刺激、成長促進、所得増加の策といっても、それは基本的には企業の成長を通してであり、民衆はそれを「2階からの目薬」としか感じなかったのではないか。その意味では、やはり画期的な国政の転換であろう。
 だが、経済成長に対する家計、企業の不安感を根本的に解消するためには、国債累積の重圧を突破する以外に策はない。そのためには、これも私が繰り返し主張するように、一時的に思い切った赤字財政(国債の日銀引受けをも含む)を組んでも、後の成長による税収の増加で問題を漸次解決するという方策(結論だけをとれば、かつて自民党内の「上げ潮派」が主張していたような方向)をとるべきである。
     (この項 終り)
  

閉じる コメント(3)

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緊縮予算案となったことから、年度途中に景気が失速し、補正予算を組まざる得なくなり、結果的に国債の発行額がより多くなることになると思います。
新聞社には、経済の専門家も多いと思いますが、本質を分かっていても記事にできない雰囲気があるのでしょうか。それとも財務省から記者クラブに流された情報をそのまま記事にすることしかできない、なさけない記者が多いのでしょうか。

2009/12/27(日) 午後 5:51 [ ねずみ ]

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腐った鉢にいくら水をばら撒いても腐るだけです。無競争、平等一律の格差をなくすことだけを目的とする社会にばら撒いてもざるに水を流すようなものです。

2009/12/27(日) 午後 6:09 [ 悲歌慷慨 ]

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27日に書いたコメントは少し記者に失礼な気がしますので、補足させていただきます。
政府予算案が膨らんだという主張の裏には、これだけの国債を発行するが、返済はどうするのか。という主張もあるのだと思います。
個人が住宅ローンを借りる時には、金融機関に聞かれなくても、今後の収入と支出を考え返済計画を立ててから借り入れます。国の予算でも基本は同じ(日銀に貨幣を増刷させることはできる点は異なるが)筈ですが,国債の返済計画が議論されることは余りありません。恐らく増税の議論なしには返済計画が立てられず、政権政党は選挙に負けることを恐れるからだと思います。
いつもこの議論が先送りになり、膨大な国債残高になった訳ですが、景気が回復した時点で財政の今後について国民全体が考えなければならない状況になっていると思います。

2009/12/30(水) 午後 4:43 [ ねずみ ]


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