文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

世界大不況

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景気好転・株価下落

 1月29日発表の2009年12月の完全失業率は5.1%で同11月の5.2%より1%ポイント低下、依然として高水準ながら、同7月のピーク(5.7%)に逆戻りする恐れはほぼなくなった。また09年12月の有効求人倍率(求人数÷求職者数)は0.46で、同年7月及び8月の0.42以後、4ヶ月連続で0.1%ポイントずつ改善した(相対的な求人増)。
 また、09年12月の輸出額(財務省貿易統計、1月27日発表)は対前年同月比12.1%増加で、08年9月以来15ヶ月ぶりの前年比プラスとなった。ちなみに輸出の前年比は09年2月にはマイナス49.4%にまで落ち込んでいた。こうした輸出の回復(中国への輸出増が中心)に主導されて、鉱工業生産指数は09年3月から12月まで10ヶ月連続で上昇した。
 
 このような景気指標の好転に対し、株価(東京市場、日経平均終値)は2010年1月15日に09年初来の高値10982.10 を記録した後、下げ基調となり、同29日の10198.04まで7.14%下落した。
 東京市場に強い影響力を持つNY株価・ダウ平均(終値)も、10年1月19日に10725.43の高値(リーマン・ショック直後の08年10月1日の10831.07以来)を付けた後、同29日の10067.33まで6.14%下落した。
 景気回復が好調な中国においても、株価(上海総合指数)は10年1月には月間で8.8%下落し、同29日は2989.292と09年10月以来の3000割れで終った。

 まず最近の景気指標は、07年10月以来の日本の景気下降が09年下半期中に底に達したことを示していると判断する。
 顧みると、鉱工業生産指数が上述のように09年3月から回復し始めたことをもって、早くも当時の与謝野財務・金融・経済財政相は、景気は「最悪の時期は脱したとの認識を示し」(日経、09年5月26日)、以後政府(麻生内閣)ははやばやと景気底入れ論を打ち出した。さらに、09年4〜6月期の実質GDPが5四半期ぶりに実質で0.9%(年率換算で3.7%)増加(対前期)したことが、そうした底打ち論に拍車をかけた(当「診断録」09年8月18日号参照)
 
 それに対し私は、失業率が上昇を続ける限り(実績は7月まで上昇)、また現在のようなデフレ期においては名目GNP(時価による計数)がマイナスを続けている限りは(実績は、判明している7〜9月期までマイナス)、景気底打ちは確認できないとの見方をとってきた。
 しかし、本稿はじめに見たように、09年8月以降は失業率の上昇が見られないこと、今回の景気下降で下げの主導的役割を演じた輸出が09年12月に前年比でプラスに転じたこと、また10〜12月期の名目GDP(内閣府統計は10年2月中旬に発表予定)が民間エコノミスト予測の平均ではプラスに転ずる公算が大きいこと(日経、1月30日)などから、私は今回の景気後退は09年下半期(早めに見れば7〜9月期)に底に達したと判断したい。ただし、デフレーションはまだ終らない。

 わが国の景気に大きな影響をもつ米国経済(最近では中国など新興国の影響の方がより大きくなりつつあるが)についてみても、その実質GDP(米国では物価が上昇しているので名目額より実質換算値を重視する)は09年4〜6月期に2.2%(年率換算)、7〜9月期に5.7%(年率、速報値、10年1月29日発表)と2四半期続けて増加した。ただし、7〜9月期については、在庫投資増加の影響が大きく、それを除く最終需要の増加率は年率2.2%(年率換算しなければ0.5%強)にとどまる(4〜6月期も最終需要増加率は年率1.5%、年率換算前では0.4%弱)。したがって、2期続けての実質GDPのプラスといっても、その実勢は極めて微弱である。
 また、米国の完全失業率は、09年10月に10.1%に達したが、その後は11月、12月とも10.0%で推移しており、今後多少の上昇はあり得るが、頭打ちの傾向が見られる。
 この主要2指標から見ると、米国の景気も、本格的な回復とはいかないが、少なくとも底に達したと判断できる。

 他方で、いわゆるBRICsなどの新興諸国(当「診断録」09年12月31日号参照)では、今次の景気下降の下でも総じてGDPはマイナスに転じずにその成長率がスローダウンしただけであり、またすでに速やかな景気回復、成長率上昇の過程を歩んでいる。  
 米国、日本、欧州などの先進諸国では、景気下降を食い止めるためにとった不況対策がある程度の効果を上げたことに加え、新興諸国の景気回復による輸入増でこれら諸国への輸出が増加したことが景気の大きな支えとなったことはいまや周知のことである。
 こうして、現時点では、先進諸国で設備投資や住宅建設それに家計消費などの民間需要が増加に転ずるかどうかが景気動向のカギを握る状況にある。

 ところが、新興諸国、先進国の両者でとられた景気刺激策、その中でも金融の非常な緩和策がマネー過剰を生み出し、それらがかならずしも産業分野での投資に向かわず、株式、商品などの相場取引市場(中国では、加えるに不動産市場)に流入して、それらの相場が景気実態に先行して投機的に顕著に上昇することとなった。 
 そうした状況に対し、中国では2010年1月18日に人民銀行(中央銀行)が市中銀行の預金準備率を引き上げて、銀行融資の増加ペースを抑える姿勢を打ち出し(NIKKEI NET、1月21日)、また同26日には中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の劉明康主席が、不動産向け融資業務の監督と窓口指導を強化すると表明(同、28日)するなど、投機抑制、バブル防止を狙いとする金融引き締めに乗り出した。
 その影響で、1月20日の中国株式は上海総合指数が2.93%急反落し、それはただちに同日のNY市場のダウ下落をもたらした。

 それに結果として追い打ちをかけるようなかたちで、同21日にオバマ米大統領が商業銀行に投資銀行業務(証券取引や証券引き受け業務など)を禁ずる新しい金融規制案を発表(当「診断録」1月25日号参照)したことが、世界の株式及び商品(金、石油を含む)の市場にさらに打撃を加えた。 
 このオバマ提案は、政治的には、「失業率が10%台に上昇する一方で、大手金融機関の多くが息を吹き返し、巨額のボーナスを支給していることに有権者が憤慨」している状況に対処しようとしたものとされる(ロイター電子版、1月21日)。つまり、そこには、金融危機の再発を防ぐための措置という基本的な狙いがあることは事実だが、株式・商品市場の投機的な先走りとそれによる過大な利得を抑えようとする意図も込められていると思われる。
 こうして、ヘッジファンドなどの投資資金の活動にブレーキがかかった結果、10年1月の終り2週間に世界の株式・商品市場が大きな下げに見舞われたわけである。

 以上のように、最近の株価等の下落は、08年末以来の世界的な景気刺激策とくに超金融緩和策の影響の(マイナス面の)後始末を付けようとするものであり、広い意味で「出口戦略」への着手と言えるであろうが、先進国、新興国ともに依然として景気振興の基本姿勢を変えてはいない。
 だが、そうした早期の出口戦略への着手が、新興国の成長や先進国の景気回復に対してブレーキとしての効果を持たないとも言えない。
 世界的に見ると、各所に依然として危機再燃へのいわば火種が残っている。いま欧州の諸国を緊張させているギリシャの財政・金融危機はその重要な例である(このことも最近の株安の一因だった)。

 さて日本の景気だが、1月29日の衆院での施政方針演説で、鳩山首相は景気の二番底の回避、デフレの克服に努力することを約束した。しかし、何回もいうようだが、2010年度予算案の規模は09年度予算(補正予算を含む)より約10兆円少ない。これは、その内容はとにかく、規模としては緊縮財政であり、出口戦略への着手である。
 そのため、日本の景気回復は、09年度第2次補正予算に盛り込まれた景気刺激策(エコ消費への補助など)の継続や、10年度予算における子ども手当など家計援助の消費促進効果は見込めるにしても、大きくは中国をはじめとする新興諸国への輸出や、米国など他の先進国の景気回復に依存することになるであろう。 そのような期待が外れて、10年度にまたもや補正予算を組む必要に迫られなければ幸いである。      (この項 終り)

(追記)本号が当「診断録」の第1年目の最終号となる見込みです。第2年からは、「診断録」のタイトルはそのままですが、統一テーマをこれまでの「世界大不況」から「エコノミストの時評」に変更する予定です。  


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