文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

エコノミストの時評

[ リスト ]

瀬戸際の鳩山政権

 与謝野新党ならぬ平沼新党として新党「たちあがれ日本」が10日に発足した。しかし、その実態は口先でいう「打倒民主党」とは程遠く、同党の結党を伝えた新聞の見出しにも、「若手敬遠 新党の先行き不安視」、「参加者『無謀 分かっている』」(以上、読売11日)、「自民は共倒れ懸念」、「民主余裕」(以上、東京、同)と見透かされる有様だ。 
 しかし、その民主党中心の鳩山政権には危機の色が濃い。その中心問題は、いうまでもなく、普天間基地移転問題だ。鳩山首相はかねてからこの問題の5月末までの決着を公言してきたが、その期限まで1月半となった現在、問題解決は絶望に近い状態となったからだ。すでに民主党の渡部恒三元衆院副議長は、4月7日に日本外国特派員協会でおこなった講演で、「鳩山君が普天間問題で解決が出来なければ、その責任は(鳩山)政権の交代ということになる」(日経、8日)との見通しを示した。
 問題は、普天間問題の期限内解決が実際に不可能となった場合に、果たして鳩山首相が責任をとるか(辞任するか)どうか、にかかってきた。 
 
 政府が普天間基地移設先として現在実現を目指して交渉(地元及び米国と)を進めているのは鹿児島県の徳之島である。この案については、4月2日の関係閣僚会議で、鳩山首相がヘリコプター部隊の大半を徳之島へ移すよう調整を指示した(朝日、6日)ことで最終的に明確になった。
 しかし鳩山首相は、実際にはすでに昨年(09年)の11月と12月及び今年1月のすくなくとも3回にわたり、同首相に近い牧野聖修衆院議員(民主)を徳之島に派遣し、同島の徳之島、天城、伊仙の3町長に面会して、同島に3000メートル級の滑走路を作りたいとの希望を伝え、それを受け入れる場合の島側の「条件を出してくれ」と申し入れている(毎日、4月11日)。
 
 この牧野議員の動きは、実は今年1月には地元に知られることになった(鹿児島県第2区選出・自民党徳田毅衆院議員のブログ、1月27日)。すなわち、徳田議員は昨年の11月頃からの牧野議員の徳之島訪問については情報としては聞いていたが、「非公式ということもあり…静観」 してきた。しかし、1月27日朝の会見で、鳩山総理が徳之島が普天間基地移転の候補地として上がっているのではと質問されたのに対し、あらゆる可能性を否定しないと発言したことから、伝えられていた情報が確認されたとして、「政府にも正式な説明を求めたい」 と書いている(同)。
 このような情報を受け、地元では1月に普天間基地の徳之島への移設に「反対する住民団体が結成」され、反対運動が広がった(西日本、3月22日)。
 
 3月には産経新聞が次のように報道した。「鳩山首相は『腹案』として平野博文官房長官に徳之島を本格的に検討するよう指示。須川清司内閣官房専門調査員に現地を視察させたほか、…2月下旬には…徳之島に基地を設けた場合に自衛隊と米軍の共同使用が可能かどうかを検討するよう防衛省に求めた」(産経、3月16日)。 
 地元では、3月28日に行われた徳之島町の町議選(定数16)で、20人の候補者のうち、「移設に賛成を主張していた新人の男性2人はいずれも落選した」(西日本、3月30日)。
 また、同じ28日には徳之島3町と奄美群島の住民約4200人が天城町総合運動公園に集まり、「基地には断固反対すると気勢を上げた」(asahi.com 、3月28日)。
 
 以上のように、鳩山首相は早くから普天間基地移設の候補地として徳之島を考え(いわゆる腹案?)、使者を同島に送って非公式に交渉してきたのであるが、地元の反対が強く、交渉は暗礁に乗り上げた感があった。
 それにもかかわらず、政府はなおも4月9日、普天間飛行場の移設先について、「徳之島を軸に本格的交渉に入る方針を固め」 、「岡田外相も9日夕、ルース駐日米大使と会談した。政府方針を説明したと見られる」(毎日、10日)。政府としては、普天間の移設先を日米共同で具体的に検討する場である実務者協議の早期開催を求めていた。
 ところがルース大使は岡田外相に対し、「日本側が説明した案について①米軍の運用面で現実的でない②受け入れ先の地元合意がない③移設実現の期限が不明―などと指摘し、協議再開は時期尚早だ、との考えを伝えた」(読売、11日)。
 
 こうして、普天間基地移設先についての鳩山首相の最終案とも思われる徳之島案が、地元からも米側からも反対された結果、「鳩山首相が公約する『5月末の決着』が…ほぼ絶望的」(読売、同上)と見られるに至った。  
 鳩山首相は12日(現地時間)からワシントンで開かれる「核安全サミット」に出席するために渡米し、その際にオバマ大統領に会って直接理解を求めたいとの意向だと伝えられたが、公表された大統領の2国間首脳会談の予定には鳩山首相との正式会談は含まれていない。
 したがって、鳩山首相に余程の妙案が用意されているのでなければ、5月中に鳩山首相の責任、その進退が問われるに至ることは避けられないと思われる。
 
 こうした折、大型連休中に米国を訪問する予定だった小沢民主党幹事長が、この訪問を参院選後に延期した(読売、8日)。 政府が普天間問題の5月末決着を目指して努力しているときに小沢氏が米側の要人と会えば、「二元外交との批判は避けられないと判断した」(同)と説明されているが、そうしたことは以前から分かっていたことであり、この時期における小沢氏の訪米延期の理由としては説得性がない。むしろ、この時期に訪米したことで、普天間問題の「責任を押しつけられたらたまったものではない」(周辺)との考えからだ(同)、という説明の方が説得性がある。
 ということは、小沢氏も鳩山首相が普天間問題で責任を問われることを予期して動いている、ということになりそうだ。つまり、いざの場合は鳩山首相を退陣させ、自らは無傷で残ろうという考えではないか。
 
 また、民主党の石井一選対委員長が9日に、「参院選の候補者擁立状況の説明という名目」で首相と平野官房長官を官邸に訪ねたが、「会談の中身は普天間問題一色だった」といわれる(東京、10日)。
 すなわち、「石井氏が今後予想される展開を三つに例示し、それぞれの政局への影響を分析すると、首相は険しい表情で聞き入った」。石井氏は会談後、5月末の決着期限について「政治的に今、最大の問題になっている」と述べ、危機感を隠さなかったそうだ(同上)。石井氏は小沢側近といわれているだけに、この官邸訪問は鳩山首相に覚悟を求めに来たのでは、とも思わせる。
 もし、5月末決着が出来なかった場合でも鳩山首相が居座れば、参院選挙で民主党が敗北することは避けられないだろうし、その場合には鳩山・小沢の共同責任が問われることは避け難い。小沢氏はそうした事態は避けたいだろう。
 
 しかし、首相の権限は大きく、自ら退陣を表明するか、国会で不信任を受けるのでなければ、誰もその進退を左右できない。いま国会で不信任案が可決される状況にはない(民主党内で反乱が起きれば別だが)から、自発的退陣に至らない場合に鳩山首相に責任をとってもらうには、民主党内からの圧力以外にはないだろう。
 私は普天間問題の5月末決着は今やほぼ不可能と見るし、その場合には鳩山首相に潔く責任をとって退陣してもらうこと、そして民主党と国会が後継の党総裁・新首相を早急に選出し、新総裁・新首相の下で内閣と民主党の有り様を一新することを望む。各種世論調査が示すように、国民の多数もその方向を望んでいると信ずる。
 とにかく、現在のような政治混迷は一刻も早く払拭すべきだ。 (この項 終り)

閉じる コメント(2)

顔アイコン

先生の主張が良く理解できました。なかなかの長文にもかかわらず、分かりやすい文章だと感じました。先生のおっしゃるとおりですネ。「しっかりしろ!鳩山政権」

2010/4/11(日) 午後 7:26 [ 曳馬野旅人 ]

顔アイコン

鳩山首相が責任を取って辞任し、代わりの者が首相になっても沖縄に基地が集中している問題は解決しません。国民の多くが納得できる解決案がないことが、より深刻な問題だと感じます。憲法との関係もあり、片務契約である日米安保の問題もありますが、これだけの経済大国になった日本が自分の国を自分で守れない仕組みが根本の問題のように感じています。

2010/4/12(月) 午後 9:33 [ ねずみ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事