文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

エコノミストの時評

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 このところ当「診断録」のテーマとしては政治ものが続くので、次は経済問題を、と考えているのだが、否応なしに次々に政治に結びつく問題がニュースとして飛び込んでくるのが今日の現実で、そのため今回も政治関連のテーマを取り上げざるを得なかった。
 例えば、東京株式市場の株価(日経平均)の推移を見ると、輸出主導による日本経済の回復傾向を反映して、昨年(09年)8月末の総選挙以後では11月27日の9081.52円を底として大筋では上昇傾向をたどり、10年3月30日には約1年半ぶりに11000円台に乗せた(11097.14円)。しかし、それ以後4月14日までの半月間は、8進4退(上昇8日、下落4日)と上昇の日が多かったのに、14日の株価は11204.90円にとどまっている(1%高)。要するに、一層上へ行く株価の力が不足しているのだ(すくなくとも14日までの推移では)。 
  この点について株式トレーダーは、「鳩山内閣の支持率が低下していることも、海外投資家の手を引かせている」と見ている。すなわち、「鳩山内閣が5月に退陣となれば……(その時には政治情勢もはっきりして株の買い場が来るだろうから−引用者の注)海外勢は現時点で無理に動かなくてもいいと考えているようだ」と(ロイター電子版、14日)。
 
 鳩山内閣の危機は普天間問題についての迷走(当「診断録」前号−4月11日号ー参照)に集中的に表れているが、最近では閣僚の勝手放題の発言や意思決定が相次ぎ、まるで内閣はバラバラな状態だ。
 直近では、14日の東京新聞には1面トップで「消費増税論 公然と」、「主要2閣僚 安定財源求め」との大見出しで、菅直人副総理兼財務相(12日、外国特派員協会での講演)と仙石由人国家戦略相(13日、記者会見)が相次いで消費税増税の必要を唱えたことを報じた。
 しかし、周知のように、鳩山首相は「自らが政権を担当している間は」消費税の引き上げをしない旨繰り返し発言している。菅、仙石両大臣の発言はそうした首相の方針を無視するものだが、角度を変えて見てみると、両大臣の発言は鳩山氏の政権は間もなく終ると見てのことか?
 
 さかのぼって4月9日には、前原誠司国土交通相が高速道路の新しい料金制度を発表した(各紙、9日夕刊など)。一定距離を走るとそれ以上は料金が上がらない上限料金制を導入する一方、現行の休日料金上限1000円などの割引を原則廃止するというものだ。そして、この割引廃止で浮く財源の一部を高速道路整備に流用するという。 
 この方針は、民主党がマニフェストに掲げた「高速料金無料制」に反するだけではなく、無料制への種々の批判・疑問に答えるかたちで、2010年度に導入したばかりの「社会実験」としての一部高速道無料化という方針さえ、はや変えるわけだ。しかも、こうした方針が内閣で検討された形跡もない。
 さらに、3月24日には亀井静香郵政改革相と原口一博総務相が突如、ゆうちょ銀行への預け入れ限度額を2000万円へ引き上げる方針を発表し、これに対し仙石戦略相などから「閣内で議論もしていない」との異論が出た。これについて亀井氏は「事前に鳩山首相や関係閣僚の了解を取った」と主張し、結局鳩山首相の裁断で亀井氏らの方針を内閣として承認したが、実際にはこの方針(預け入れ限度額の引き上げ)につき「亀井氏は国民新党の議員にも、発表前日の23日まで内容を説明しなかった。総務相の担当職員も、発表されて初めて内容を知ったという」(読売、4月14日)。
 
 以上のような経過を見ると、鳩山内閣では、閣僚が首相と違った異見を唱えるだけではなく、所管の施策について担当大臣が独断で決定し、内閣に押しつけることさえ行われているわけである。
 他方、民主党や国民新党は、政策を審議する政党としての機能を失っている。上記で取り上げた政策、方針は、いずれもマニフェスト、公約を変更するものであり、したがって決定前に民意を聞く必要がある。そのためにいちいち選挙をやるわけにはいかないが、それに代るのが民意を反映すべき党の国会議員の意見である。しかし、民主党では党の政策調査会が廃止されたままで、その復活を求める議員の要求に小沢幹事長は応じていない。
 ところが、高速料金の割引廃止により浮いた資金を高速道整備の財源に充てるという措置は、「割引より整備を望む地方の声に配慮した民主党の要望によるもの」(読売、9日夕刊)と伝えられる。つまり民主党は、民意というより、実質、関係業界などの要望を政府に媒介する役割になってしまっているようなのだ。
 
 こうして、内閣としてまとまって上げた成果は政府予算(09年度補正と10年度)の成立ぐらいで、それ以外は首相にリーダーシップが欠けていて内閣はバラバラであり、他方で最大与党は政府に強い発言権・影響力を持っているといっても、まともに政策の審議は行わず、業界利益などの選別・代弁の機関になってしまった感がある。
 こうした状況では、世論調査で内閣支持率、民主党支持率がどんどん落ちていくのも当然だ。最近時点での調査である4月のNHKの世論調査(4月12日放送)によると、鳩山内閣の支持率は32%(3月調査より6ポイント減)、民主党の支持率は22.2%(3月調査より3.6ポイント減)だった。自民党の支持率も1ポイント下がって16.1%だが、民主、自民両党の差は相当に縮まっている。しかし、「支持政党なし」の44.4%(2.7ポイント増)に比べると、2大政党はもはや民意を失っていると見てよい。
 昨年8月30日の総選挙では民主党は衆議院議員480の定数のうち308議席を獲得するという歴史的勝利を収めていただけに、以来この約7ヵ月の間における同党の凋落ぶり(目下は世論調査上だけではあるが)は、おそらく史上空前ではないだろうか。 
 
 このような状況のままで今夏(7月の予定)の参院選挙を迎えることになれば、民主党の大敗は避けられないと思われる。そうなると、新首相・新民主党総裁 を選び、やはり民主党中心で(衆議院での民主党過半数には変りがないので)新しい連立内閣を組織することになるのが常道だが 、選挙敗北の責任論をめぐって民主党が混乱に陥る可能性もある。
 民主党が参院選での大敗とそれに伴って起り得る党内混乱を避ける唯一の方策は、5月末で普天間問題に決着をつけられなかった時点で鳩山内閣が責任をとって退陣し、リーダーシップがある新首相と新内閣を選ぶとともに、民主党の首脳部人事も一新することだ。実際、政治資金に関して不透明・不明朗さを印象づけた鳩山・小沢体制の下では、それだけで選挙では民主党は決定的に不利になるだろう。
 もし、鳩山首相が普天間問題の引責で退陣しなかった場合には、むしろ各党が現在のままの態勢で参院選に臨む可能性は小さくなると思える。この場合には、さらなる新党の結成や政界の再編成が起きそうである。 
 
 そのような場合のキイ・ポイントは 、支持政党なしに転じた最大多数派の有権者層をどの党がどのようにつかむか、ということだ。この現在の無党派層は、昨年の総選挙で民主党を支持した層と大きく重なると推定される。ということは、この無党派層は、民主党の「コンクリートから人へ」、「子育て支援」、「より対等な日米関係」、「アジア重視」といった基本路線を大筋で支持した層だと考えられる。
 そう見ると、これらの層が今のままの自民党や、「たちあがれ日本」のような古色蒼然とした新党の支持に回ることはあり得ないだろう。「みんなの党」が伸びることはあり得るが、その政策と人材にはいまひとつ迫力がない。また、社民党、共産党、公明党が従来のそれぞれの党の枠を破って大きく伸びる可能性も考えにくい。
 したがって、鳩山首相続投の場合に起き得る有力なケースは、①自民党の完全な脱皮と面目一新、②自民党内のニュー・リーダーが多数の自民党員を伴って、自民党を出て作る新党、③上記の②の場合に、新党と、それに連動して民主党が分裂して反小沢派などが作るもう一つの新党との合同による新党などであろう。
 
 この③の場合には、衆参両院で新しい多数派が形成されて政治が安定する可能性があるが、そうでない場合には、衆参両院の「ねじれ」が起き、政治は安定性を欠くことになる可能性が大きいように思われる。
 結論として、先行きの混乱を避け、速やかに政治の安定を回復する方策として私が望ましいと考えるのは、やはり5月末の状況を見て鳩山首相が退陣し、新首相・新民主党党首の下で小沢一郎氏も幹事長を降りて、民主党中心の内閣がすっかり出直す道である。現在の多数派の民意も、そこにあると思う。それが実現しない場合には、次善の道は上記の③ではないだろうか。  (この項 終り)

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組織のトップにリーダーシップがないとどうなるか、鳩山首相はそのことを国民に教えてくれたように思います。小沢幹事長は、参議院でも単独過半数確保に執念を持っているので、首相が退陣しても小沢氏は、その結果が分かるまでは幹事長は降りないように思います。

2010/4/16(金) 午前 6:49 [ ねずみ ]


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