文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

エコノミストの時評

[ リスト ]

 6月25〜26日にカナダのムスコカ(Muskoka 、オンタリオ州)でG8(Group of 8、先進8ヵ国)の首脳会議(Summit Meeting)が、続けて26〜27日に同じくカナダのトロントでG20(Group of 20、主要20ヵ国)(注)の首脳会議が開かれる。
 この二つの首脳会議では、財政赤字の削減に政策の重点を移したEU(欧州連合)諸国(とくにドイツ)と、なお景気刺激策の継続を求める米国との主張が対立すると予想され、2009年4月のロンドン・サミット以来景気刺激策の実施で足並みを揃えてきたG8及びG20は大きな転機を迎えることになりそうである。
 
 (注)あらためてG20の構成国・地域を以下に記しておく。
(北米)米国、カナダ(中南米)メキシコ、アルゼンチン、ブラジル(欧州)英国、ドイツ、フランス、イタリー、EU、ロシア(アフリカ)南アフリカ(中近東)トルコ、サウジアラビア(アジア)インド、中国、韓国、日本、インドネシア(大洋州)オーストラリア。 
 なお、G8の構成国と地域は上記のうち、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリー、ロシア、日本 の8ヵ国とEU  。G7はG8からロシアを除いた諸国。
 
 EU諸国は、ギリシャ危機が表面化して以後、当のギリシャはいうまでもなく、スペイン、ポルトガルなどいわゆるソブリン危機(国家債務の支払危機)を警戒されている南欧諸国が相次いで財政赤字削減策の実行に追い込まれたが、最近では財政赤字(その対DDP比率)が欧州で最も小さいドイツ(09年が3.1%)も戦後最大といわれるほどの規模の赤字削減策を決定、フランスもこれに続くなど、ほぼ一斉にいわゆる出口戦略(景気刺激のためにとった財政支出拡大策などの終結と巻き戻し)をとり始めた。
 こうした動きに対して、景気回復が始まっているにもかかわらず、なお高い失業率(2010年5月は9.7%)に悩む米国のオバマ大統領は、トロントでのG20・サミットを前に、これに参加する各国首脳に対して6月18日に書簡を送り、「トロントでのわれわれの優先課題は(景気の)回復を確かなものにし、強めることに置くべきだ」と書き、具体的には国際収支の黒字国に内需の振興策の実施(とくに暗にドイツや中国に対して。中国については人民元の為替弾力化を通じての)を求めた(NY Times 電子版、6月18日)。
 
 ドイツ政府の財政赤字削減策は6月7日にメルケル首相から発表されたもので、2014年までに約800億ユーロ(約8兆7000億円相当)の財政赤字を削減し、赤字の対GDP比率をドイツの修正憲法で定めた0.35%(2016年以降)に近づけようとするもの。
 この赤字削減策は、連邦軍の職業軍人を現在の19万人から4万人削減する、公務員のクリスマスボーナスを2011年には凍結する、45万人の一般公務員定員を1万人削減するなど、主として支出のカットでまかなおうとする点に特徴がある (Financial Times 電子版、6月6日)。
 また、実施のタイミングとしては、輸出依存のドイツ経済が世界市場の回復から好影響を受けている時期に、また他の諸国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル)のように支払危機によって強制されるのではなく、先手を打つかたちで早期に踏み切った(ツァイト、Zeit電子版、6月18日)。
 
 米国からすると、ドイツのような財政のいわば優等生が早々に出口戦略を開始するのは、新興国主導で回復する世界経済に“ただ乗り”しよとするものにほかならない。
 だが当のドイツは、最近もフランスの財務相に、「ドイツは輸出優先の経済を内需重視に切り替えるべきだ」と批判された際、「そういう批判は、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ・サッカーリーグの強豪チーム)に下手なサッカーをしろと要求するようなものだ」と一蹴したような“確信犯”だ。既定の赤字削減計画を変えることなどは考えられない(国内からの反応に対しては別として)。 
 ところで、こんどのムスコカ・G8サミットの議長国で、トロント・G20サミットの共同議長国(韓国と)となるカナダのハーパー(Harper)首相は、やはり参加国首脳に書簡を送り、「われわれの第一の目的は経済成長と雇用の創出を促進することにあるべきだ」と述べるとともに、「先進諸国はそれぞれの景気刺激計画が終り次第、財政状態を正常化することに政策の焦点を当てる、との明確なメッセージを発すべきだ」 と付け加えた。
 具体的には同首相は、G20各国は2013年までに財政赤字を半減させ、2016年までに政府債務の対GDP比率を減少過程に入らせることで合意するよう要請した(FT紙電子版、6月19日)。
 ちなみに、カナダ自身(今年度の財政赤字の対GDP比率は3%強でドイツ並み)は現在の2年計画の刺激政策を、その終了予定の2011年3月より先へは延長しないと約束しており、2015年までに財政赤字を解消することを目標としている(FT紙、同上)。
 
 以上から総合的に判断すると、カナダ・サミットのハーバー議長のメッセージの意味は、各国の景気刺激策は2010年(あるいは同財政年度)で終結させ(逆に、その間は続けてよい)、11年からは出口戦略を開始すべきだ、ということのようである。おそらく、実際のサミットでの合意点も、このハーバー・メッセージにそったもの、あるいはそのモディフィケーションに落ち着くのではないだろうか。  
 だが、ドイツなどの出口戦略は、ギリシャ、スペインなどすでにソブリン危機に直面しているユーロ圏諸国と同様に、10年中から開始されるのである。つまり多数のユーロ圏諸国およびユーロ未採用のEU加盟国(英国やハンガリーなど)は、ユーロ危機にせき立てられるかたちで、昨年あたりの予想より早期に、また世界景気の回復段階から見ても早期に、景気抑制的な政策を導入しつつあるわけだ。
 
 欧州諸国のこうした早期の出口戦略への移行とその影響による景気抑制作用は、アジア諸国を主力とする新興国(中国、インド、ブラジルなど)及び新工業国(韓国など)の現在の景気上昇力の強さ、日本、米国という世界経済ビッグ2の景気回復軌道への定着傾向を考慮すると、当面、世界景気を挫折させる公算は小さいと思う。
 しかしながら、より長期的な観点から見ると、欧州諸国を先頭に先進国(もちろん日本を含む)が景気対策の結果としての財政悪化の限界(国ごとにその程度の判断はまちまちだが)に直面し、今後そうした状態を続けられなくなったことの意味は重大である。その意味するところは、端的に言えば、世界経済が次の景気後退に入ったとき(10年代には遅かれ早かれあると考えるべきだ)には、各国は従来型の(ケインズ的な)有効需要政策(財政赤字をもってする)をとることが困難になるだろう、ということだ。
 
 先の話になるが、そうした場合にどうするか、あるいはどうなるか。世界はなお新興国などの成長力に期待するか(できるか)、停滞におちいるか、まったく新しい技術革新の時代を迎えるか、政策革新を模索するか、であろう。 
 ここで参考までに、政策革新についての私の持論を付け加えておくと、本稿では詳論の余裕はないが、これまでも随時述べてきたように(例えば当「診断録」2009年3月5日号)、①実質的には国家紙幣である中央銀行券(日本では日銀券)を、②これまでのように中央銀行を通ずる金融の手段(マネー過剰と過剰投機の原因ともなる)としてではなく、③政府支出として(つまり政府による需要の創造のかたちで)直接に民間に供給するように、④通貨供給方式を革新すべきだ、という点にある。
 
 それはとにかく、当面の問題に戻ると、オバマ米大統領によるブレーキにもかかわらず、先進諸国が急速に出口戦略へ向って傾斜しつつあることは確かである。        (この項 終り)

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事