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参院選の結果についての最近の世論調査結果によると、民主党が政府与党(民主党プラス国民新党)で参院過半数を制するのに必要な改選議席数56を獲得することが難しくなっているようだ。実際の結果は予断を許さないが、もしこれらの予測通りに与党が参議院で過半数割れになった場合には、政局はどのように展開するのだろうか。
与党過半数割れとなれば、参院選ではあるが(総選挙ではなく)菅直人内閣は国民の信任を受けられなかったことになり、菅首相の責任論が出るだろう。しかし、自民党の獲得議席数が民主党のそれを上回らない限り、おそらく菅首相は辞任など考えずに続投を図るだろう。そして、参院で新しい多数派を形成できるように連立の組み直しをし、9月の民主党大会での党代表選挙も乗りきると思われる。 問題は、その場合に、民主党と新しい連立を組む政党が出てくるかどうか、出てくるとするとそれは何党か、ということだ。 新聞・通信社が実施した最近の世論調査では、参院選挙での民主党の獲得議席は、51(産経、7月6日紙面)、50(東京、7日)、49(共同通信、但し信濃毎日紙7日および8日の紙面による)で、上記の56議席には程遠い。
対する自民党は47(産経)、49(東京)、46(共同)と民主党に迫っている。このほか、最近の「週刊朝日」が民主55,自民42という予測記事を掲載しいる(7月16日号)が、これは政治ジャーナリスト野上忠興氏の予想によるもので、この誌面で野上氏と対談している政治評論家森田実氏は民主49,自民49という予想をしている。 このように、新聞等の予想では民主党の獲得議席数と自民党のそれとは僅差であり、森田氏のように両者拮抗と見る予想も出ている。こういう状況は、菅内閣が発足した直後の高い内閣支持率(軒並み60%を超えるような)から見るとまさに激変である。 付言すると、最近の世論調査による菅内閣への支持率は、45%(読売、7月5日)、41%(NHK、5日)などである。 他方で、上記世論調査での政党支持率を見ると、読売では民主34%、自民18%、産経ではそれぞれ(以下同様)29.9%と19.6%、NHKでは29.6%と20.4%、共同では27.4%と21.2%となっており、民主、自民の間には支持率においてなおかなり大きな差がある。この点から見ると、世論調査に示された民意は、菅内閣への支持の気持ちは低下したが、なお民主党へは相対的に希望をつないでいる、というところか。 ちなみに、第3極として躍進を伝えられる「みんなの党」への支持率は、4%(読売)、10.4%(産経)、3.4%(NHK)、4.3%(共同)で、産経を除けば、喧伝されているほどは伸びていない。。 また、産経調査によると、参院選で「民主党など与党に勝たせたい」とする人の比率は50.8%で、「自民党など野党に」とする人の40.9%を大きく引き離している。
これらの点を考慮すると、最近の世論調査での各党獲得議席数予想は、主として菅首相の消費税問題についての発言をめぐって民主党へいま吹いている強い逆風に過度に影響されている可能性もある。 それに、世論調査による獲得議席予想は投票当日の出口調査ほどの信頼性がないから、本稿の始めに見た各種世論調査での獲得議席数予測は民主党の場合は下限と見た方がいいように思う。 だが、いずれにせよ、実際の投票結果においても、いまの政府与党が選挙後に参院で過半数を得る(繰り返せば、この場合に民主党に必要な獲得議席数は56)のはかなり困難と見るのが妥当だろう。
その場合の新しい連立政府組織の可能性だが、民主党と政策的に近いのは公明党(福祉重視)とみんなの党(行政改革重視)だろう。現に枝野民主党幹事長は先日「みんな」との連立の可能性を唱えて相手から猛反発を喰ったが、政府高官(こう言う場合は官房長官であることが普通)は6日夕に次のように語っている。みんなの党については「野党のままでは(同党が主張する)行政改革も実現できない。1年ぐらい放っておくしかない。バラバラになるだろう」と言い、公明党については「政策的には一致している。向こうから駆け込んでくることもあるかも知れない」と述べている(日経、7日)。 この政府高官発言に対しては、公明党の山口那津男代表は7日、「われわれから連携しようという考えはない」と強調、みんなの党の渡辺喜美代表は同日に「顔を洗って出直してこい」 と批判している(日経、8日)。 選挙戦の真っ最中に、政府与党側はとにかく、野党の側が選挙後の連立政権参加に「イエス」と言うわけがないから、山口、渡辺両代表の発言は当然の内容と言える。
みんなの党の行動様式については私はほとんど知らないが(おそらく新しい党だから定まっていないだろうが)、世論調査での最近の好調さに今はいささか舞い上がっている感じを受ける。 公明党は、もともと連立に参加して自らが主張する政策の実現を図るという考え方が強いだけに(だから自民党と長年連立した)、政権党である民主党と連立する可能性は大いにあると思われる。それに、これは好ましいことではないが、公明党のバックに控える創価学会が、公明党が与党でいることを一貫して強く望んでいる(創価学会が政治的に抑えられることを警戒して)ことも影響すると思われる。 では、来る9月の民主党大会における代表選挙で菅代表が敗退することがあるかと言えば、それはないだろうと私は予想する。この大会ではたしかに菅代表への対立候補が出るだろうし、小沢一郎前幹事長がその候補を支援する可能性がある。
しかし、小沢氏にはかつての程の力は無くなっているし、また検察審査会が7月中にも(遅くも8月には)小沢氏起訴の決定を下す可能性もある。その場合には小沢氏の立場はさらに弱くなるだろう。 それに、現職首相の党代表を党大会で不信任するのは極めて難しいし、その菅首相自身は政権維持意欲が極めて強いようだ。 とにかく、参院選の結果がどうであれ、民主党は現に衆院で過半数を占める政権党であり、この点は今後3年間続く(その間に衆院解散がない限り、また民主党が分裂しない限り)のであるから、こんどの選挙で政治の激変(昨年の総選挙の際のような)が起きることはないだろう。
したがって私としては、菅首相が就任後から参院選にいたる間の言動を反省し、以後はより思慮のある考え方と行動をして、「国民生活が第一」という民主党本来の政策を忠実かつ合理的に実行することを望みたい。 (この項 終り) |
エコノミストの時評
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