文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

エコノミストの時評

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 9月14日の民主党代表選挙において、党代表として再選を目指す菅直人首相と、党代表として復活して菅首相を退任させようとする小沢一郎前幹事長・元代表が候補者として激突することはほぼ確実となった。その結果は、菅・小沢のどちらがこの選挙に勝っても、その新代表の下で民主党がまとまって再出発することは極めて困難だろうと予想される。マスコミにも、「現実には党分裂もあり得る展開になりつつある」(産経、22日)との見方が出てきた。
 そのような場合に起きる可能性が大きいのは、①菅首相が再選されても小沢派が民主党を集団離党して、残る民主党の菅首相派が衆院の議席でも多数派でなくなる、②小沢氏が代表に当選しても、国会での首班指名選挙では民主党議員の投票が小沢候補へのものと菅候補へのものとに分裂する、という事態だ。
 そうなると、政局はまさに大動乱で、いよいよ新首班・新連立政権を作るための激しい政界再編成劇が演じられることになるだろう。 
 
 民主党代表選が菅対小沢の一騎打ちのかたちとなることは、菅首相がはやばやと再選への意思を明らかにしたのに対し、小沢氏が同氏を支持するグループとともに、去る19日に開かれた鳩山由起夫前首相のグループが主催する研修会に出席し、暗黙裡に代表選への出馬の意思を表明したことによって明白となった。 
  それまでは、小沢氏が自ら代表選に出るのか、あるいは氏の意思を体した別の議員が出馬するのかがはっきりしなかった。というのは、小沢氏の政治資金規正法違反問題に関し、検察審査会が同氏についての不起訴処分(すでに検察庁が決定した)が妥当かどうかを審議中であり、結論として起訴を決議する可能性が残っているからである。すなわち小沢派内にも、もし小沢氏が民主党代表に選出され首相に就任しても、そのあとで検察審査会が起訴を決議することになれば、首相を続けることが困難になるのでは、との危惧があった。
 
 しかし、①実際には小沢氏に代わる力を持った議員が見当たらないこと、②民主党と与党が参院で過半数を割って国会が「ねじれ状態」となった現在、そうした難局を適切に切り抜けるには、指導者としての小沢氏の存在が不可欠だとの判断が小沢派内で強まったこと、③小沢氏自身は、検察庁が同氏を不起訴とした既成事実から、今後の展開においても有罪になる可能性はゼロと見極めて自ら立候補する意思を固めたと推察されることなど、以上により小沢派を中心に民主党内に小沢擁立への動きが強まった。
 
 では、なぜ菅対小沢の一騎打ちが民主党分裂の危機をはらむのか。小沢氏としては、自ら鳩山氏とともに身を引いて菅政権への道を切り開いたのに、菅首相は①小沢氏及び親小沢の議員を政府・党の要職から疎外し、「脱小沢」さらには「反小沢」色を鮮明にしたこと、②鳩山政権での公約を無視して消費税引き上げを7月の参院選挙で打ち出して民主党を大敗させたことがその政治的な理由であるが、その心の底にはもっと深い怨念があるようである。
 それは、小沢氏にとっての菅直人とは織田信長にとっての明智光秀と同じような存在となったという怒り、つまり信じていた副将格の部下に裏切られた(寝首を掻かれた)という思いであろう。菅氏は09年9月の鳩山由起夫内閣の組閣で副首相兼国家戦略相の要職を得たし(もちろん小沢幹事長の了承の下で)、10年元日の小沢邸での新年会(議員166人が参加)には、5人の閣僚の一人として参加して小沢氏に忠誠を表していたほどなのだ。ちなみに他の閣僚4人は、平野官房長官、原口総務相、中井国家公安委員長、川端文科相で(読売、1月3日)、いずれも鳩山派あるいは小沢派で、すくなくとも反小沢派は一人もいない。
 
 もともと小沢一郎という人には、自らを批判する人を許さないという性格があるのは周知の事実だが、自らが裏切られたと思った場合には、その怒り、憎しみは尋常のものではなくなると推察される。
 伝えられるところによると、小沢氏は鳩山氏退陣の後釜には自ら菅氏を推すつもりであったのに、菅氏がさっさと独断で鳩山後継として手を上げ、しかも民主党代表に選ばれると直ちに反小沢の筆頭格の仙石由人氏を組閣参謀とする“裏切り”を敢えてしたことから、決定的に反菅となった。そうした立場と態度は、参院選で民主党大敗のあとで、菅首相が小沢氏に面会を求めてもまったく聞き入れなかったことに端的に示されている。
 そして、菅氏を党代表から降ろす機会となり得る代表選挙が行われる今、“明智”を討つべき“羽柴秀吉”が見当たらず、当の“信長”が生きているとなれば、小沢=信長が菅=明智を自ら討とうとするのは当然だと思われる。ただ、この戦いは選挙であるので、軽々に(すなわち勝算が立たないのに)出馬するわけにいかないので、これまで立候補の「環境が整う」(党内に小沢立候補への支持が広まる)のを待っていたと見られる。 
 
 要するに、小沢氏にとっては菅氏はもはや“不倶戴天の敵”であるから、もし自ら首相になれば菅・仙石ブロックの人を徹底的に干すだろうし、逆に代表選に敗れれば別の手段で菅首相の続投を阻止しようとするだろう。その手段とは、民主党を割って自ら政党再編成の口火を切り、新たな多数派を形成して菅内閣を退陣に追い込むことではないか。
 その場合、小沢氏の政治資金問題が未解決のままでは、他の会派の議員が小沢氏主導の再編成と新連立政権樹立に参加することを躊躇する可能性があるが、小沢氏の手法からすると、さしあたりは他党(現民主党以外の党)の有力者を首班に推すぐらいのことは敢えて行いそうである。
 逆に菅首相続投を支持するグループとすれば、どんなことがあっても代表選で小沢氏に勝たせるわけにはいかないし、もし小沢氏が勝った場合には、民主党は政治資金問題に厳しい世論の批判をあらためて受けて一層の苦境に立つと考えるだろうから、首班選挙で小沢氏に投票することを拒否する可能性がある。
 
 その場合には、小沢氏は衆議院の首班指名選挙でも過半数の支持を得られない可能性、すなわち首班に選ばれない可能性がある。そうなれば、やはり当選可能な首班を選び出すための混迷政局が始まらざるを得ない。
 類似のことが31年前にあった。すなわち1979年の自民党のいわゆる四十日抗争である。この年、大平正芳内閣の下で行われた総選挙(10月7日)で自民党が敗北した結果、反主流の福田・中曽根・三木・の各派と中川グループが大平首相の退陣を求めたが、大平首相と主流派(大平派と田中角栄派)がこれを拒否したため、両派の間で抗争が起き、野党を巻き込んだ合従連衡の試みが行われた上、最後は首班選挙で自民党から大平氏と福田赳夫前首相の二人が候補になるという前代未聞の事態が起きた。
 投票の結果は大平、福田両氏とも(1位、2位となったが)過半数を得られず、次いで行われた両氏の決選投票で大平氏が辛うじて福田氏を抑えるという結果となった(11月6日)。しかし、第2次大平内閣の組閣は反主流派の抵抗で難航し、11月9日の新内閣発足後も文相ポストが埋まらず、同20日になってやっと谷垣専一氏(谷垣禎一現自民党総裁の父)の文相への起用で党内抗争は一応終結したのだった。  
 
 来る9月の民主党代表選挙の結果、この自民党四十日抗争と似た事態が民主党を主舞台に起きる可能性がある。要するに、この選挙で小沢氏が勝ったときに、首班選挙で反小沢派が小沢首班を拒否する場合と、菅首相が再選されて、小沢派が民主党を割る場合である。この後者の場合には、遅かれ早かれ、菅首相は退陣に追い込まれるだろう。
 以上のいずれの場合でも、現民主党を中心とする政権は終わりを告げざるを得ないだろう。
 民主党がこうした分裂の危機を回避するための唯一の道は、今となっては、鳩山前首相あたりの仲介で、菅首相が反小沢、脱小沢路線を修正し、小沢氏自身を含む反菅派の人たちをも政府と党の要職に起用する約束をすることだろう。現に鳩山氏は「挙党態勢で一致団結できること」(鳩山グループ研修会・懇親会での挨拶)を求め、その実現を条件に菅首相の続投を支持している。
 だが、その菅首相は「政調を復活させて、全員が参加する政権運営、党運営が実現しつつある」(毎日、21日)と強弁して、事実上で鳩山提案を拒否している。
 
 私自身の考えは、当「診断録」8月8日号で述べたが、「菅対小沢の対決を軸とする民主党の党内闘争は、民主党にとっても、さらに日本の政治にとっても不毛」で、「この不毛の対決を避ける唯一の方法、それは菅首相も小沢氏も今回の代表選への不出馬を宣言すること」である。「そうすれば、いま菅首相の続投支持を表明している反小沢派の人々も、反菅派の人々も、すべて自由に(誰に遠慮することなしに)代表選に立候補することが可能になる。そのことは、民主党としての参院選敗北の総括になるし、広く民主党の人材を発掘する絶好の機会となり、民主党の活性化の可能性を開く」というものだ。
 世間には、そして民主党内にも、「首相をそうコロコロ変えてはいけない」という意見があるが、菅首相は自ら信任を賭けた参院選で敗北したのだから、その責任をとって辞任するのは当然なのだ。そして、そうした政府交替は、議院内閣制(議会が首班を選ぶ)と政党政治制をとっている限り避け難いことで、現に1950年代のフランスもそうであった。もし、そうしたことが不都合だと考えるのなら、制度を変えることが必要で、例えば先のフランスではド・ゴール首相が登場(この登場の仕方はクーデター的だったが)して大統領制を導入したものだ。
 
 そうした論議を抜きに、首相が簡単に替わるのはよくないというのは、現在の議院内閣制を否定し、実際には菅首相の責任を免除しようとする議論である。 
 しかしとにかく今は、鳩山調停の見通しも立たず、菅対小沢の対決はほぼ不可避となったように思われる。私たちとしては、それが不都合であっても、これから先の混迷政局の展開をただ覚悟・傍観するしかないようだ。    (この項 終り)

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小沢氏を追い出すのには民主党を分裂すれば良いそして解散して国民に真を問えばよい事、

2010/8/23(月) 午前 9:00 [ ナベさん ]


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