文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

エコノミストの時評

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 小沢一郎民主党前幹事長・元代表が9月14日の民主党代表選挙に立候補する意向を8月26日に明示した。その結果、この代表選は、すでに立候補の意思を表明している菅直人首相と小沢氏の一騎打ちとなる見通しとなった。
  小沢氏が最終的に出馬の意思を固めるに当たっては、挙党態勢の構築を目指して鳩山由起夫前首相が菅・小沢両氏の協力を模索し、菅首相に対して代表選後に小沢氏を党の要職で処遇するよう求めたのに対し、同首相が25日の鳩山氏との会談でこれを拒否したため、鳩山氏が菅支持を撤回して小沢支持に回ったことが決定打となった。
 それまでは、鳩山氏が挙党態勢の構築を条件として菅支持の意向を表明していたことが大いに影響して、小沢氏の立候補は困難化したとの観測もあった(例えば朝日、26日の記事:「焦る小沢系」)。もし、菅首相が鳩山氏の要請を受け入れていれば、小沢氏も立候補を断念して、同首相の無競争再選があり得たのに、「脱小沢」にこだわってそのチャンスを捨て、自らを窮地に追い込んでしまった。 
 
 ただしそのことは、必ずしも代表選で小沢氏が勝つことを意味するのではない。菅氏にももちろん勝つ可能性はある。だが、仮に菅氏が再選され、首相として続投することになった場合でも、菅内閣は明春頃までには退陣か、衆議院の解散へ追い込まれる公算が大きい。
 その理由は、一つには、仮にこの代表選後に民主党が分裂(後述)しないとしても、菅首相は「ねじれ国会」を乗り切る有効な方策を見出せないまま、野党の攻勢に会って立ち往生する公算が大きいことにある。具体的には、菅内閣は衆議院での与党過半数をたのんで2011年度予算案を成立させることはできる(予算は衆議院の議決があれば参議院で否決されても成立する)が、予算関連法案(例えば子ども手当を実施するための法律案)は衆院と併せて参議院の議決がなければ成立せず、したがって執行できないから、野党(すくなくともその一部)の協力がなければ事実上は執行可能な予算を決定できないのである。
 そのような場合には、内閣は立ち往生状態となり、総辞職か衆議院の解散を選択せざるを得なくなる。 
 
 実際、自民党の執行部はそういうかたちで政府を攻め立て、菅内閣を総辞職か、衆議院解散の決定へ(できるだけ後者へ)追い込む戦略を考え、その旨公言している。総選挙の場合には、自民党は先日の参院選の余勢を駆って、衆院で第1党の地位を回復しようと狙っているわけだ。そして、事実、その総選挙を経て民主党が再び野党に転落する(つまり菅内閣が退陣する)可能性は小さくない。
 菅内閣はそのような「ねじれ国会」に対しては、政策ごとに特定野党の協力を得る「部分連合」で対処できるという考えであるが、それが実行可能であるとの見通しはまだ立っていない。実際、鳩山前首相もいうように、「この法案はこの政党、この法案は別の政党という(部分連合の)話でうまくいくのか。将来的に連立の体制を作ることが必要」(読売、26日)であろう。 なお、付言すると、鳩山氏が菅首相に対して、菅再選後における小沢氏の起用を強く求めた理由の一つも、その点で「小沢氏は『一日の長』というか、様々な政党と組んだ経験上、以心伝心の(通じる)方々もいる」(読売、同上)との判断にあった。
 
 民主党の代表選で菅首相が再選されたとしても菅内閣が危機に陥るもうひとつの可能性は、敗北した小沢派が民主党を集団離党する(つまり党を割る)場合である。
 小沢氏と同派の人々とすれば、もし代表選挙に負けた場合に民主党にとどまったとしても、菅内閣の前途が上述のように危ういのであれば、党にとどまる意味はまったくなく、むしろ政界再編成を通して新しい連立政権を形成し、そこで与党になる可能性を探る方がはるかに良策ということになる。そして、小沢氏ならそれは実現可能だと氏自身も小沢派の人々も考えている。
 また、野党の中にも、小沢敗北の場合に起きる政界再編成を恐れ、あるいは期待する流れがある。例えば、自民党内には「小沢氏が敗れれば民主党を割って自民党の一部に秋波を送るかも知れない」と警戒する声が出ているし、たちあがれ日本の園田博之幹事長は都内の講演で「政界再編の一つのきっかけになるかも知れない」と期待を示した(日経、26日夕刊)。
 
 では、小沢氏が代表選で勝った場合はどうか。その場合には、菅内閣は当然総辞職するが、当「診断録」前号(8月22日号)で書いたように、その後の国会での首班指名選挙で、反小沢派の人々が首班候補としての小沢氏に投票しない可能性があるし、その結果として反小沢の人たちが民主党を離党する(その数は小沢派離党の場合ほど多くはないだろうが、やはり民主党の分裂である)可能性もある。
 いずれにせよ、首班選挙で民主党内から反乱者が出た場合には、かつての自民党の四十日抗争(上記「診断録」参照)の時のように、首班選挙は仕切り直しとなり、次の首班指名に向けて新しい多数派工作(民主党小沢派が中心となっての)が展開されるだろうし、そうした多数派工作が政界再編成を伴う公算も大きい。
 そして、小沢氏は恐らく新しい連立政権を作って自ら首班となるか、場合によっては他の党の誰かを首班に推すことも考えられる。後者の場合でも、小沢氏はそのような連立政権で実権を握ることであろう。
 もし、反小沢派も「小沢首班」に同調する場合には、一応すんなりと小沢首班が誕生することになるが、その場合でも、小沢首班はねじれ国会を乗り切り、政権を安定させるために、連立の組み替えを行わざるを得ないだろう。
 
 とにかく、小沢内閣(おそらく新しい連立による)が誕生したと仮定すると、その場合の最大の問題はやはり小沢氏の政治資金の不透明性の問題だろう。検察審査会の審査の結果として、小沢氏が強制起訴される可能性があるほか、国会で野党から「真相解明」を求めて攻め立てられるだろう。前者の場合には、小沢総理としては憲法の規定を盾に訴追を免れることが可能だが、やはり国会での追及を避けることはできない。
 小沢氏がそうした追求にどう対応するか、あるいは対応できるかは未知数で、それが小沢政権が誕生した場合のアキレス腱となる可能性が大きい。
 また政策面では、小沢氏および小沢派は「マニフェスト(09年総選挙における民主党の)への回帰」を標榜しているが、財政面での制約が厳しい中で、そのことをどのように具体化するか、またできるかは未知数である。普天間問題にどう対処するのかも不明である。
 その意味で、「小沢代表」への期待は、すくなくとも現時点では、もっぱら小沢氏の「剛腕」への期待という抽象的なものにとどまっている。
 
 さて残る問題、そして当面の最大の問題は、では代表選の結果をどう読むか、である。
 菅首相には現職首相としての強み(今は首相交代という大きな変化は避けたいという民主党内の気分の存在)があるが、鳩山前首相の支持を失うという失敗を犯したし、そのことはまた、挙党態勢の確立という「錦の御旗」を小沢氏側にとられることを意味する。それに、菅首相にはなによりも参院選で民主党を大敗させたという失点が極めて大きい。また、総理の現職にあるだけに、目下の円高に対して無策であるとか、ねじれ国会の苦境打開の手を打てていないといった欠点が目立つ。
 対して小沢氏の場合は、参院選に際して菅首相の言動に警鐘を鳴らしたという実績があるのはいうまでもないが、小沢氏なら新しい連立内閣を作って政権を安定させられるという期待や、抽象的だが氏の「剛腕」への期待がある。だが他方で、その政治資金問題に関して、たいへんな弱みと、そのことに対する世論の逆風がある。
 
 それでも、以上を総合すると私には小沢氏が有利のように思える。菅首相にとっては、なんといっても参院選敗北の責任が大きいし、また挙党体制確立への意欲の弱さを見せたことが大きな弱点となると思う。対して小沢氏は、政治資金問題という大きな負い目を負っているが、これまでの捜査では検察が2度にわたって不起訴としたし、とにかく今の現実においては刑事被告人ではないという弁明が可能である。
 もちろん、代表選は9月1日告示、14日投票(国会議員の場合)で、これからの選挙戦を両候補がどのように戦うかで行方が左右される余地が大きいが、過去の実績などを材料に、現時点での予想をすれば上述のようになる。
 最後に、過去の「診断録」の繰り返しになるが、本当は菅首相が参院選敗北の責任をとって代表選に出馬せず、他方で小沢氏は政治資金問題を理由に代表と幹事長を辞任した過去に鑑みて出馬を断念し、代表選は新しい人たちによって争われることが望ましかった。     (この項 終り)

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