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ユーロ圏の各国に厳格な財政規律を強制するEU条約の改正案は12月9日、EU首脳会議で合意に達した。しかし、英国はこれを拒否した(各紙、12月10日)。
この協定改正と、それに関連したユーロ圏信用危機対策の強化策についての詳論は次の機会に回すとして、今回は、さしあたり、こうした財政規律の強化とその加盟国への強制を英国が拒否した意味についてコメントしておく。
この英国の拒否について、これを「EU深刻な亀裂」(讀賣、10日3面トップ)と深刻がるマスコミもあったが、私にとっては、次の二つの意味において、何も驚きではない。
第一、英国がヨーロッパ大陸諸国による統合の動きに対して圏外に立とうとすることは、なにも今回に始まったことではない。そもそも仏独伊とベネルックス3国の計6ヵ国が1957年にヨーロッパ共同市場を設立する欧州共同体(EEC)条約(ローマ条約)に調印し、1959年に共同市場を実質的にスタートさせた時、英国はこれへの参加を拒否して、1960年にはEECに対抗してスエーデンなど6ヵ国とともにヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)を結成し、まさにヨーロッパの分裂を強く印象づけたものである。しかし、結果的にはEFTA諸国はその後相次いでこれを脱退、やがて英国を含めてヨーロッパ連合(EU)に参加することになったのだ。
さらに、英国がヨーロッパと一線を画す動きは、それこそ19世紀以来のものと言えるほどで、その点から、ヨーロッパ大陸諸国は英国をむしろ非ヨーロッパの国と見なす傾向が強いぐらいだ。そして、英国は伝統的に(米国の英国からの独立以後のことだが)、ヨーロッパ大陸諸国よりも米国と共に歩むことが常だったのである。その点、日本がアジアの国なのに、これまでは多分に非アジア的であったこと(明治期の有名な「脱亜入欧」論以来)と似ている面がある。
それに、英国は歴史的には国際通貨のいわば王者であったポンドの国であり、その点からも、そもそもポンドを捨ててユーロを採用するとは考えにくかった(現にEUへは参加してもユーロは採用していない)。
しかし、第二に、英国が今回のユーロ圏財政新協定への参加を拒否したことには、当然、あるいは合理的と言える面がある。なぜなら、新財政協定は、一律の財政規律をユーロ圏内各国に強制しながら、これを守れそうにない国、あるいは守る意思がなくなった国がユーロ圏から脱退する権利を認めていないことだ。これは、いかなる団体のルールにおいても不可欠の条項であり、それを欠いた点に現在のEU条約の欠点の一つがあった。今回の条約改正案は、その点を是正するいい機会であったが、ユーロ圏各国、とくに条約改正を推進した独仏両国にその意思がなかった。
これでは、ユーロ圏に参加すると、未来永劫にそこから抜けられない(EUを脱退することは可能だが、それはヨーロッパからの孤立になりかねない)ことになる。それは、参加国のトータルな政策決定の自由、とくに旧自国通貨への復帰と独自の財政金融政策採用の自由を奪い、結果としてユーロ圏自体の柔軟性を失わせることになる。
独仏両国は、その点で柔軟性を欠いており、そのことがユーロ圏の危機を不要に深めているのである。 (この項 終り)
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