文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

現代短評

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▼野田改造内閣
 野田佳彦首相は1月13日に内閣改造を行い、昨年参議院で問責決議を受けた2閣僚を含めて5人の閣僚を入れ替え、「社会保障・税の一体改革」案の実現に向けての布陣を強化した。この改造の眼目は、24日に召集される国会でのこの問題及び2012年度予算案など重要法案をめぐる与野党協議と国会審議を前進させ、かつ、その際の与党民主党内の結束を維持し続け得るような政府・与党の態勢を築けるかどうかにあった。
 その点で、マスコミや経済界から最も注目されたのが岡田克也前民主党幹事長の副総理兼一体改革担当相への起用である。この岡田起用は、政府与党の対野党協議を進める上での強力布陣となると評価されている半面で、同氏が幹事長時代に小沢一郎元党代表の処分を推進したとの理由で、党内小沢派(消費税引き上げへの反対派)による反発と党内対立を強めるのではないか、との見方がされている。もしこうした党内反対派の抵抗が強まり、ましてそうしたグループが離党するようなことになれば、野田内閣の「一体改革」推進の構想は足許から崩れることになるだろう。
 しかし私には、今回の内閣改造を通じて小沢派の反執行部の勢いが強まったとは見えない。むしろ同派は大きな後退を示したのではないかと思える。そのことを理解する上でのキー・マンは輿石東幹事長だ。

 輿石幹事長は小沢元代表の盟友であるとともに、参院民主党のドンである(いまも党参議院議員会長を兼ねる)。そして、今回の内閣改造に際して、参院出身の閣僚枠を実質的に1名増やすこと(注)に成功して、自らの参院における影響力を保持・強化した。そして、小沢派が嫌うとされる岡田前幹事長の副総理への就任を容認した。
こうした輿石幹事長の行動を見ていると、同氏にとって最も重要なことは、民主党が参院で第1党(過半数に達していなくても)の地位を維持し、そこでの同氏の影響力を発揮することにあるようである。その立場から見れば、民主党が分裂することには絶対に反対であろう。そして、そうした党分裂反対の心情は民主党の殆どすべての参院議員(田中直紀新防衛相などの親小沢派を含む)に共通しているのではないか。
 したがって、輿石氏は今や小沢派というよりは、小沢派と友好関係を保ってはいるが、独自力を強めた輿石派の領袖という立場だと見るべきだろう。

 (注)参院議員の閣僚数は改造前も後でも野田内閣では4人だが、改造前の蓮舫行政刷新相は「首相枠」(首相の直接の推薦にもとづく閣僚への任用)による登用であったので、実質的には参院枠は3人だった。それが輿石幹事長の影響力で改造後は4人となったので実質1人増だというわけである(讀賣、14日)。

 小沢元代表に対する処分(党員資格停止)に際しても、それを決定した2011年2月の党役員会と常任幹事会において輿石氏(当時も党参院議員会長)は処分の阻止には動いていない。「党組織の議論と手続きを経たものであるから」というのがその理由であった。
 他方で、この処分をすすめた岡田幹事長(当時)は、小沢処分を求める野党やマスコミの強い圧力の下で、かなり長い時間をかけて、処分では最も軽い「党活動停止」で党内意見を集約した(松木謙公農林水産政務官は抗議して離党したが)のであり、党幹事長として最小限の職責を果たしたものという印象が強い。その意味では、小沢氏自身の反岡田感情はそれほど強くないのではないか。したがって、私には岡田起用を目玉とする今回の内閣改造が、民主党の党内対立をあらためて強めたとは思えない。
 現に小沢グループの幹部はこんごの対応について、「消費税率引き上げ関連法案の提出や国会審議を巡る攻防が最大の焦点だ」(読売、同上)と述べており、問題を先送りした感がある。

 おそらく野田首相は党内反対派による強い抵抗で阻止されることなく、こんごの努力を議員定数の削減や公務員給与の引き下げなど歳出削減策の具体化と、社会保障制度改善の細目を詰めることに注ぎつつ、野党との協議入りと、協議を通しての改革の実現に全力を注ぐことができるだろう。
  今回の内閣改造については、とくにその中では岡田氏の副総理としての入閣については、野田首相の一体化改革への決意と態勢を示したものとしてマスコミも経済界も総じて好意的である。その点で、民主党内閣に対しておそらく初めてマスコミなどから追い風が吹いていると言えそうだ。しかし、だからといって、そうした外野からの追い風に舞い上がって無用の強気(例えばいたずらに解散権をちらつかせるような)に走っては、たちまち足許をすくわれることになるだろう。

▼ユーロ圏国債の格下げ
 13日に米国の格付け会社S&P(スタンダード&プアーズ)がフランスなどユーロ圏の9ヵ国の国債格付けを一斉に引き下げたので、そのことについてとりあえずのコメントをしておきたい。
 S&Pは、すでに昨2011年12月5日に、EU条約改正案が審議される予定のEU首脳会議(12月8,9日)を前にして、この首脳会議の結果を見てユーロ圏15ヵ国(ドイツを含む)の国債格付けを引き下げの方向で見直すと警告していた(当「診断録」12月7日号参照)から、その意味では今回の格下げは意外なものではない。むしろ、以前には首脳会議後すぐにでもドイツを含む15ヵ国を格下げするといっていたのが、1ヵ月も遅れて、ドイツなどを除く9ヵ国に格下げ対象国を限定したのは、S&P自身の確信の無さを露呈しものとの感さえある。

 それに、S&Pのいつものやり方だが、同社は当該国が債務削減や融資交渉で何らかの具体的進展を見せた直後に、その国の格下げを発表する傾向がある。昨年12月の場合には、来るべきEU首脳会議でユーロ圏の国々の財政規律を強化する条約改正が提案・議論されるとの報を受けて、12月5日にイタリア、スペインでの国債利回りが低下した直後に上記の格下げ警告が発表された(「診断録」同上)。
 今回も、1月12日にスペインとイタリアの国債入札が好調で、応募額が調達予定額を上回り、利回りがスペインの場合には1%、イタリアの場合には0.5%の幅で低下し、その影響でユーロ相場が若干回復した(NYTimes電子版、12日)直後の13日にS&Pはユーロ圏9ヵ国国債の格下げ(しかもスペインとイタリアは、キプロス、ポルトガルと並んで2段階の格下げ)を発表したのである。

 以上のような動きを見ると、私にはS&Pはなんらかの予断あるいは意図を持ってこうした国々の格下げを行っているように思えてならない。(終り)

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[▼ユーロ圏国債の格下げ]は鋭い指摘と思います。S&Pの背後または出資者に関係があるのではないでしょうか。

2012/1/15(日) 午後 3:03 [ 大好調 ]


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