文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

現代短評

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首相・谷垣密談の以後

 先ず、昨年の3.11大震災・原発災害に遭われた犠牲者・被害者にあらためて弔意とお見舞いを申し上げる。
 さて、当「診断録」2月28日号で、野田佳彦首相にとって難局打開の方策は自民党との妥協で消費税関連の法案を成立させた上で衆議院を解散するほかはないのでは、と述べた直後の3月1日に、マス・メディアは首相と谷垣禎一自民党総裁が2月25日に極秘に会談していたと報じた(讀賣、日経ほか、3月1日)。そして、この会談では「消費税引き上げ関連法案の扱いや、法案成立と引き換えに衆院解散を約束する『話し合い解散』についても意見交換していることがわかった」という(讀賣、2日)。
 この密談については両当事者はその事実を否定しているが、政界ではその事実を当然の前提として、話し合い解散の是非やその実現の可能性についての議論がかまびすしい。
 他方で、2012年度の予算が3月8日に衆院を通過した(ただし赤字国債発行のための特例国債法案は予算本体から切り離して)ことから、国会審議と政局の焦点は消費税関連法案の閣議決定(3月中の予定)とその国会での審議に移ることになり、状況はいよいよ「消費税政局 突入」(讀賣、9日、1面トップ見出し)という局面へ入ることになった。

 野田首相と谷垣総裁との密談では、消費税関連法案の成立後の解散を目指す首相と、まず解散・総選挙を行い、その後の連立政権(自民・民主による)での法案成立を主張する谷垣総裁の意見が対立した(読売、2日)とされるが、恐らくその通りであろう。そして、この両者の主張のいずれが通るかによって、この「消費税政局」の行方が決まることも言うまでもないであろう。
 この両者の駆け引きはチキン・ゲーム(注)に似ていると言えそうだが、どちらかと言えば野田首相の方に有利さがあるように思える。なぜなら、首相側は消費税法案の国会審議で、会期末(6月21日)までに自民党との妥協が成立しなければこの法案を継続審議(次の臨時国会での)に持ち込む(解散も先送りする)ことができるのに対し、谷垣氏は今年9月に自民党総裁選を控えており、それまでに(臨時国会が開かれるのは恐らく9月以降)自民党内が強く求める衆院解散を勝ち取れなければ総裁退陣に追い込まれるからである。

 (注)チキン・レースとも言われる。二人のドライバーが別々の車に乗って反対方向から相手の車をめがけて走る(あるいは同じ壁へ向かって走る)ゲーム。先にハンドルを切った方がチキン(臆病者)と呼ばれる。

 ただし、政府・与党側も特例国債法案の成立につき自民党の合意を取り付けなければ予算執行に支障を来すことになる。だが、自民党の反対で予算(成立済みの)が執行できない事態になることは自民党も避けたいだろうから、ギリギリのところで政府与党がこの法案を消費税関連法と切り離して成立に持ち込むことも不可能ではないであろう。

 他面、谷垣総裁が求める「先ず解散」という順序の場合には、野田内閣が提出した消費税法案は衆院解散で廃案となるし、総選挙では民主党が議席数を大きく減らしそうなので、新内閣が再び野田首班の内閣(民主・自民の連立による)となる公算は大きくない。つまり、解散先行の場合には、野田首相が政治生命を賭けている「社会保障と税の一体改革」を自らの手で実現する機会を失う危険が大きいのだ。したがって、野田首相とすれば解散先行論には絶対に同意できないはずだ。
 これに対し谷垣総裁の場合には、解散の前に消費税関連法案及び特例国債法案の成立で政府与党に妥協しても、総選挙で自民党が衆院第1党の議席を得る望みがある。とくに、総選挙前に民主党から消費税引き上げに反対の小沢派が離党していれば(あるいは除名されていれば)、それだけ自民党が第1党となる公算が大きくなる。したがって谷垣総裁の側には、消費税関連法案の成立を先行させた場合の特別の不利はないはずだ。ただ、政府・与党の窮地を助けることになるという点が難点だろう。

 このような計算からであろう、「関連法案成立後解散」のシナリオに自民党側の方も徐々に積極的になってきているように見える。例えば次のように伝えられている。野田・谷垣の「極秘会談を受け、自民党では執行部までも消費税関連法案の成立と引き換えに衆院を解散する『話し合い解散』に前のめりになりつつある。ただ、中堅・若手には、民主党との徹底抗戦を求める強硬論も少なくないだけに、党内の意見集約にはなお時間がかかりそうだ」(msn産経ニュース、6日)。
 自民党側を躊躇させている「関連法案成立後解散」のシナリオへの大きな不安は、法案成立後に野田首相が本当に解散を実行するかどうかという点、すなわち「首相の出方は読み切れない」(朝日デジタル、6日)という点にある。この点を石原伸晃幹事長があからさまに語っている。「僕が野田さんなら、谷垣さんともし仮に会ったとすれば、『…じゃあ一緒にやりましょう』と法律を成立させる。で、その後は『状況は変わった』となりますよ。おそらく解散しない。だって民主党は…選挙をすれば絶対議席が減りますから」と(讀賣、11日)。

 さらに自民党側には、消費税引き上げ反対の小沢派や、同じく反対の連立与党・国民新党の亀井静香代表を抱えている政府・民主党が、本当に消費税関連法案の閣議決定と国会提出に漕ぎつけられるのか、という民主党への不信感がある。石原幹事長はこの点につき次のように述べている。「僕が今一番心配なのは、消費税引き上げ関連法案をめぐる民主党の『出す出す』詐欺です。…果たして法案を出せるのか」と(讀賣、同上)。
 たしかに、民主党内の小沢一郎元代表を支持するグループ約100人はこの法案の閣議決定を阻止すると意気込んでいる。民主党では3月中旬に党財政・金融、厚生労働の合同部門会議などで論議し、政調役員会での了承を取り付けた上で、政府・民主3役会議で関連法案を決定、同下旬に閣議決定・国会提出をする方針だ(讀賣、9日)。果たして小沢派はこのプロセスに大きな影響を与え得るだろうか。
 
 現時点での民主党国会議員は衆院292名、参院105名の計397名である。そうすると、党が正式の機関での議論を積み重ねていく過程で、100人内外の反対派がこのプロセスに基本的な影響を与えることは不可能であろう。
 これに対し、昨2011年5〜6月の「菅降ろし」の政局(内閣不信任案の衆院提出)で小沢派が強大な影響力を発揮しそうであったのは、当時同派が鳩山由起夫派と連携していた(土壇場で崩れたが)ことと、内閣不信任案は自民党など野党が提出し、小沢派などがこれに同調するかたちで一種の与野党連合が成立した(最後は不発)ことによる。
 しかし今回は、小沢派は消費税の引き上げに反対、自民党は基本的には消費税引き上げ推進であるから、この両者が同調することはあり得ない。小沢派とすれば、最終的には関連法案の国会での採決に際して反対票を投ずる方針と伝えられるが、この法案が採決されるのは政府与党と自民党との間に妥協が成立している場合であろうから、そこでの民主党内からの反対票は、100票であっても大勢(可決・否決)には影響を与え得ないだろう。

 傍目からは、小沢派は党内で自分たちの代替政策を主張した上で最終的には党の決定に従い、9月の民主党代表選挙であらためて党の指導権を争うのが適切な策だと思えるのだが。
 実際には、同派としてはいまの民主党主流とは訣別し、来たるべき総選挙では小沢新党として消費税反対、脱官僚などを掲げて闘うハラを固めていると見るべきだろう。そして、橋下新党など他の会派との連携を模索し、民主、自民に迫る政界第3の極を形成する算段と思われる。そうなれば、その成否はとにかく、また興味ある展開だと言える。
 なお、来る4月下旬には小沢一郎氏に対する政治資金規正法違反の裁判の判決が行われる予定だ。最近では、判決が小沢無罪と出る公算が大きいとの見方が有力になっているが、この判決での有罪か無罪かが以後の小沢派の消長を大きく左右することは当然だ。

 以上のように、政界は今や「消費税政局」へ入りつつあるが、客観情勢はわずかながら野田首相側に有利に動いているようである。
 読売新聞社が3月9〜11日に行った全国世論調査によると、野田内閣への支持率は35%で前回調査(2月10〜12日)の30%から5ポイント上昇し、同内閣発足以来の下落にはじめて歯止めがかかった。また、政党支持率は民主20%(前回は16%)、自民17%(前回17%)で自民・民主の順が逆転した(讀賣、12日)。要するに、消費税関連法案などをめぐり執拗に与野党協議を持ちかけている野田首相側と、消費税引き上げに本来は賛成であるのに与野党協議を拒否してひたすら解散を求めている自民党を比較した場合、世論は首相側をベターと見ているということだろう。このような世論の動向も、消費税政局の行方に微妙に影響を与えるものと思われる。
 残る問題は、法案成立後の解散を野田首相がどのように担保するかであろうが、その点は法案採決前に谷垣総裁と野田首相がそれぞれに法案への賛成とその成立後の解散を公式に声明すればすむはずだ。(終り)


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