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国連安全保障理事会は16日、北朝鮮による「衛星の打ち上げ」という名目の長距離弾道ミサイルの発射に対して、「強く非難する」との安保理議長(今月の議長は米国のライス国連大使)の声明を採択し、北朝鮮制裁の「決議」は見送った。いうまでもないが、「議長声明は安保理意思決定の重さでは『決議』より一段下」(讀賣、17日)のものなのだ。それにもかかわらず、日本政府は「当初目指した決議ではないものの、『内容は100点満点で、タイミングも早かった』(外務省幹部)と歓迎している」(同上)。
このような結果は、すでに米国メディアが早くから予想していたとおりであった。すなわちNYTimes(11日)は、北朝鮮の衛星発射についての国際社会の対応は「安保理議長の声明以上のものにはならないだろう」と伝えていた(当「診断録」4月12日号)。声明を出す「タイミングが早かった」ことも、あらかじめ筋書きが出来ていたことを暗示している。そうした筋書きができていたのは、そもそも米国が(おそらく中国も)遅くとも昨年12月には北朝鮮の衛星打上げ計画について同国から通告を受けて(北自身による公式発表は今年3月16日)、それを黙認していたためと推定できる(「診断録」3月23日号、4月13日号)。
日本や韓国は、そうした北朝鮮と米中2大国との裏交渉の“蚊帳(かや)の外”におかれていたわけだ。
今回の安保理議長声明は、「北朝鮮がさらなる発射や核実験をすれば、『安保理として相応の行動をとる』とし、追加制裁に根拠を与える内容も盛り込んだ」(朝日、17日)。この声明は、裏を読めば、今回は安保理としては「相応の行動をとらない」と言っているわけであり、その上で、こんご弾道ミサイル発射や核実験をすれば「相応の行動をとる」と述べているのである。このことは米中露というアジア関連の核3大国が本気で問題にしている北朝鮮の行動が、同国の3回目の核実験(近くに予想される)にあるという推測を裏付けている(「診断録」4月12日号)。
既存の核大国は、なによりも核の拡散を警戒している。なぜなら、それを認めれば、日本やドイツといった経済・技術大国が自前の核武装をする動きを誘発し得るからだ。
そもそも「オバマ米政権は、イラン核問題ではイラン産原油輸入削減を各国に呼びかけ、圧力強化の先頭に立った」が、「一方、昨年夏以降、直接対話が続いていた北朝鮮問題での危機感は乏しかった」(讀賣、同上)。そのような米国の空気を反映しているためと思われるが、16日付のNYTimes(Web版)もこの安保理議長声明については第1面の片隅に「その他のニュース」として小さく報じているだけだ(しかも、ニューヨーク本拠の国連関連のこの記事はソウル発!)。こうした危機感の欠如もあって、米国は北朝鮮の衛星発射計画を知りながら、その日本への通告を怠っていたのであろう。
もっとも、米国もその点で忸怩(じくじ)たるものがあったと思われ、この衛星発射直後にキャンベル国務次官補が16日に日本ついで韓国を訪問している。おそらく米国としての弁明を行ったものと推定される。
以上のような事情を推測することができなくて、安保理「決議」を得ようと走り回った玄葉外相などはピエロのように見えた。また、国会では自民党などが、日本政府による北朝鮮の弾道ミサイル発射の確認が遅れたといって大問題視しながら(政府の情報の遅れはお粗末だが)、米国によるこの問題の日本への事前通告がなかったという重要問題を追求しようとしないのは、日本の保守勢力の“対米従属慣れ”ともいうべき体質から来ているとはいえ、情けないことだ。(終り)
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