文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

現代短評

[ リスト ]

 小沢一郎民主党元代表に4月26日に無罪判決が出た結果、それが今後の政局にどう影響するかの議論が、当然のことながら政界、マスコミ、世間で盛んになっている。小沢無罪の一番の影響は、同派にとって(小沢氏の党活動停止処分の解除を経て)9月の民主党代表選で小沢氏あるいはその代理者を野田首相に代わる新代表の候補に担ぐ可能性が出てきたことだろう。このことは、自民党の総裁改選が9月に行われることと合わせ、おそらく8月末までに政局の焦点である消費税引き上げ法案の帰趨、したがって政局の帰趨が決まることを意味する。
 おそらく野田首相の側はそのギリギリまでこの法案の採決を延ばし、9月の自民党代表選の前には衆院解散を実現させたい自民党執行部の妥協(法案への同意ー修正を含んでのーとその後の解散)を誘い、なんとか法案成立に持ち込むのではないかと思われる。

 ここで、この代表選を見据えての野田政権、民主党小沢派、自民党それぞれの思惑を整理してみよう。
 野田首相の目標はあくまで今国会中での消費税法案の成立だが、自民党(及びおそらく公明党)の協力なしに法案の採決に踏み切れば、野党に加え小沢派の反対で同法案は衆院段階で否決される(同派56人の造反があれば)から、それは絶対に避けるだろう。そこで自民党の妥協を待つわけだが、そのために政府・与党としては現国会の会期(6月21日)を延長(おそらく8月末位まで)しても同法案の成立を期すだろう。
 小沢派は、法案の採決が行われればこれに反対するだろうが、その場合には造反議員の党からの除名を覚悟しなければならいから(解散になれば同派に多い1年生議員は選挙に弱い)、むしろ採決を遅らせて9月の代表選で野田首相側との雌雄を決する道の方が有利との判断にになるだろう。つまり、採決を急がないという一点では、小沢派と首相側の思惑が一致するはずだ。

 では自民党はどうか。同党としては消費税法案に賛成する前に衆院解散を実現させたい方針だったが、最近では野田首相が事後の解散を確約すれば法案の成立(修正を含み)に応ずるとの方針(話し合い解散)になし崩しに変わっているようだ。しかし、そうした政府・与党との妥協の代価をできるだけ高く釣り上げたい(法案に自党の主張を最大限に盛り込ませる)として、あの手この手によりできる限り政府を追い詰めようとするだろう(現にしているように)。
 自民党が政府を追い詰める一つの方法に内閣不信任案があるが、その可決のためには民主党からの同調者が必要だ。だが、昨年6月の菅内閣不信任案上程・採決に際しては民主党小沢派などの同調を期待できたが(結局不発に終わったものの)、今回は自民党としては小沢派(消費税に真っ向から反対している)の同調を当てにすることは道義上もできないはずだ。

 以上の結果、国会会期の延長を前提とすると、野田首相側も谷垣自民党執行部も9月の民主・自民両党の代表選・総裁選の接近を睨んで、8月までギリギリの駆け引き(一種のチキン・レース《2台の車が壁に向かって、あるいは向き合って激走するレース》)に追い込まれるだろう。その場合にどちらが先にハンドルを切るか。
 野田首相の場合には、もし党代表選に臨んでも、小沢氏あるいは小沢派代表の代理格の候補に勝つチャンスはある(この点は後述)。したがって、仮に現国会をいったん閉じて消費税法案を継続審議にしても、9月の代表選を待つ余裕がある。ところが谷垣総裁の場合には、総裁選までに衆院解散を勝ち取れなければ再選不可能との見通しがほぼ確実である(それだけ、総選挙待望の落選議員が自民党には多い)。
 したがって、持久戦になれば首相側が有利で、その場合には自民党が急速に妥協に向うだろう。

 こうして政府・与党と自民党(及びおそらく公明党)の妥協が成立して消費税引き上げ法案の採決が行われれば、小沢派は自公以外の野党とともに法案に反対せざるを得ないし、結局民主党を離党(多分除名により)して新党を結成し、法案成立後の解散・総選挙に臨むことになるだろう。そして、この総選挙には小沢新党のほか石原新党、橋下大阪市長が率いる維新新党などが新規参入して、政界地図を塗り替える総選挙となるだろう。
 では、なぜ小沢派が9月の民主党代表選で(その時まで党に留まったと仮定して)勝つ公算が小さいか。それは、小沢氏が長らく党活動を封じられている間にその党内での影響力を低下させたことに加え、小沢氏が今回の裁判で無罪になったとはいえ、問題となった小沢氏の資金団体・陸山会の政治資金(4億円)の出所についての疑問が残されたからだ。

 その点については、野党やマスコミも盛んに問題にしているが、毎日新聞による次の指摘が明快だ。すなわち、同紙のコラム「余録」(4月27日)は小沢氏自身の著書『日本改造計画』から次のような同氏のかつての主張を引き合いに出している(私は原典で確かめる余裕はなかったが)。
 「1億2000万人が直接政治資金の流れをチェックするのが、もっとも民主的で効果的な監視である」。「政治資金の出入りを1円にいたるまで全面的に公開し、流れを完全に透明にすることである。それによって、政治家が不正を働く余地も、国民が不信を抱く余地もまったくなくしてしまう」。
 「余録」はその上で次のように論じている。「ならば元代表の資金管理団体の政治資金報告の事実と違う記載について国民は真実を知りたいー1億2000万分の11人である検察審査会がそう思ってもおかしくない」と。
 小沢氏は、消費税引き上げについての民主党主流派のマニフェスト違反を厳しく批判しているが、それなら自らの以上のような言行の不一致をどう説明するのか。同氏はこういう点で民主党内での説得力・影響力をも低下させているのである。

 以上のように見ると、小沢氏が無罪になっても、やはり政局の主導権は野田政権の側にあると見得る。
 残る問題は、政府・与党と自民党などとの妥協が遅れれば、2012年度予算(成立済み)の執行に不可欠な特例公債法案(赤字国債発行を認める法案)の成立も遅れ、予算執行に重大な支障が起きることだ。しかし、自民党がこの法案の成立をも拒んでいれば、予算執行障害の責任が自民党など野党に負わされる可能性があるので、この点での与野党の妥協は消費税法案の採決に先んじても成立するものと思われる。(終り)


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事