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5月6日のギリシャの総選挙で、これまで大連立を組織していた2大政党(PASOKとNDー後述)が大敗北を喫した結果、同国は連立政府の組み直しの必要に迫られているが、マスコミ報道でおわかりのようにその組閣工作が難航している。この新連立政府組織が失敗に終われば6月中旬には再選挙が行われる。
こうして、ギリシャは国家破産の危機に加え、大変な政治危機に陥りそうであるが、可能な限り連立政府を組織して安定政権を作ろうとする同国の政治手法には、日本としては大いに学ぶべき点があると思う。
ここで、今回の総選挙の結果の各党の獲得議席数をまとめておく(その結果を前回の総選挙の結果と比較。前回→今回の順。ギリシャ内務省5月8日の発表、Wikipediaによる)。なお、選挙結果の第1党には50議席が加えられるので、今回の第1党NDの総選挙での実質獲得議席は合計から50を減じて評価する必要がある。
�ND新民主主義党(82→108)、�SYRIZA急進左翼連合(13→52)、�PASOK全ギリシャ社会主義運動(160→41)、�ANEL独立ギリシャ人(0→33)、�KKEギリシャ共産党(21→26)、�XA黄金の夜明け(0→21)、�民主的左翼(0→19)、�LAOS正統民衆集会(15→0)、その他の党派(0→0)
以上、どの政党も単独では全議席(300)の過半数(151)に達しないので連立政府を組織せざるを得ない。その際のやり方は、憲法の規定で、まず第1党から連立協議のイニシアティブをとり、その連立工作が失敗すれば次は第2党が、それが失敗すれば第3党が連立工作にあたる。以上のすべてが不成功に終った場合には、1ヵ月以内にやり直しの総選挙が行われる。
現実のギリシャでは、すでに第1党、第2党の連立工作が不成功に終り、目下は第3党のPASOKが連立のための協議を各党と始めたところだが、これも成算に乏しく、結局、再選挙に行き着く公算が極めて大きい。このうちNDとPASOKだけがEU(欧州連合)及びIMFからの資金援助と、その条件としての同国の厳しい緊縮政策を支持、推進してきたのだが、この2党による大連立が不可能になった(両党併せての議席数は149)結果、対ギリシャ援助の履行と緊縮政策の継続が危機に陥ったわけだ。
そこで、おそらくギリシャの運命は来たるべき再選挙の行方にかかることになる。その際、5月の総選挙で単純に緊縮政策推進の旧連立与党に鉄槌を下したギリシャ国民も、その結果起き得ることの重大さ(対ギリシャ援助の中止、ギリシャの国家破産の現実化、ギリシャのユーロ圏からの離脱)を冷静に考えて、5月総選挙とは異なる投票行動をとる可能性がある。
その意味で、連立政府の組織を義務づけているギリシャの政治ルールと、それが不成功に終った場合の再選挙というやり方は、日本としても大いに参考にできる事であると思う。
日本では、衆参両院でいわゆる「ねじれ」現象が起きても、真剣に連立政府(連立与党が両院で多数をとれるような)を組織する努力を行ってこなかった(とくに2009年の参院選後)。そのことが“なにも決められない政治”の基本的な原因になってきている(当「診断録」2011年6月25日号その他参照)。その点で、いまは第1党の民主党の責任は重いが、自民、公明以下の野党もそうした連立の重要性と必要性を理解していない(少なくともそれに相応しい行動をしていない)点で、やはり批判をまぬがれない。
日本では、現行制度運用の工夫と努力、改良が行われずに、短絡的かつ単細胞的な参院廃止論(大阪維新の会などによる)が持ち出されるありさまで、その意味で、日本の政党は議会制の運用に習熟していないと言っても過言ではない。
日本の政治家も国民も、ギリシャの財政危機について論じ、憂え、そして慨嘆し、そこから教訓を引き出すだけではなく、併せてギリシャ政治の智恵から学ぶべきであろう。(終り)
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