文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

現代短評

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 橋下徹大阪市長を代表とする「大阪維新の会」は国政進出を目指して8月31日に次期衆院選の公約「維新8策」の最終版をまとめた(讀賣ほか、9月1日)。そして、橋下代表を党首として9月中旬に新党を設立する(ロイター、3日)。
 他方で、橋下氏が実現を目指している「大阪都」構想を実質的に具体化するための「大都市地域特別区設置法」案が8月29日に参院本会議で可決、成立した。この法律により、大阪市と堺市を解体して、そこに東京23区と同じような特別区を設置し、橋下氏が指摘する大阪府と政令指定都市の大阪市・堺市との二重行政を解消出来るようになったが、この法には大阪府を「大阪都」へ名称変更する条項は盛り込まれなかった。 

 橋下氏はもともとは、大阪都の実現を可能にするために(それを推進する国会議員を選出するために)「大阪維新」が国政へ進出する必要があるといっていたのだが、それを実質的に可能にする法律が出来た今では、「大阪維新」の国政進出それ自体が目的となってしまった感がある。しかも橋下氏が大阪市長のまま新党の党首になるというのだから、いったい国政をになう人が市長である大阪はどうなるのかという疑問も起きる。これでは、橋下氏が自ら衆議院選に出る出ないにかかわらず、大阪市長職を犠牲にして国政へ軸足を移すことを意味するし、結果としては橋下氏は自らの政治的野心を達成するために大阪を利用したことになりそうである。

 念のために、まず「維新8策」の最終案を見ておこう。その主なものは次の通りである(主として讀賣、上記による)。
 ▽首相公選制を導入、▽参院の廃止を視野に衆院の優越を強化、▽消費税を地方税化、▽衆院の定数を240に半減、▽年金を賦課方式から積み立て方式に移行、▽環太平洋経済連携協定(TPP)に参加、▽憲法改正発議要件を(衆参各院の総議員数の)3分の2から2分の1に緩和、▽財政のプライマリーバランス黒字化の目標設定、▽高齢者はフローの所得と資産でまずは生活維持(自助)、▽日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備、▽日本全体で沖縄負担の軽減を図るさらなるロードマップの作成、等々。

 以上のうち、首相公選制や参院の廃止は、近年における首相短命化や衆参両院の「ねじれ」による「決められない政治」の常態化に対する批判から、短絡的に出てきている思いつき(一般国民やマスコミの間に流行した)をそのまま取り入れたものであるし、「財政のプライマリーバランス黒字化の目標設定」だけなら歴代の政権がいずれもが行ってきた(だが目標は遠のくばかり)もので、“何を今さら”と言うほかない。また「沖縄負担の軽減を図るさらなるロードマップの作成」などは、沖縄の基地問題の解決策から逃げただけのことだ。さらに、日本経済のデフレ状態をどうするか、といった長年の重要問題については口を閉ざしたままである。
 要するに、「維新8策」なるものはまったく無内容で、とても国政選挙に臨む政党の公約などと言えるものではない。この程度のものなら、高校生でも一晩で書き上げることが出来る。つまり、「大阪維新」には国政に進出する準備など何も出来ていないのだ。それなのに、橋下氏は「大阪都構想」推進で見せた手腕が生み出したバブル的人気に乗って、自らの政治的野心を膨らませているのではないか。

 他方で、「大阪都構想」はどうなるのか。「大阪府」を「大阪都」に名称変更することは、今回の「大都市地域特別区設置法」では不可能だが、政令指定都市である大阪市と堺市を解体して、それを「特別区」に分割し、橋下氏が批判してきた(大阪)「府」と(大阪及び堺)「市」の二重行政を解消することはできる。だが、そのことを実現するためには、こんご大阪市及び堺市が大阪府と「特別区設置協定書」を作成して、それについて議会の議決と、大阪市及び堺市での住民投票による同意を得なければならない。
 ところが、そもそも特別区の区域割りやその名称、税源配分を決めることが難事業である上、いざ「大阪市」及び「堺市」を無くすとなったときには、それぞれの市民の間から猛反対がでることは必定だ。それでも、「大阪」市民の場合は同じ名称の「大阪」府があるから我慢できるかも知れないが、中世以来の輝かしい伝統がある「堺」がなくなることへの賛成を得ることは無理というほかない。私は結局この両市とも住民投票を実施すれば「市廃止」の提案は否決されると見る。 

 現に、新法にもとづく初の大阪府・市の協議の場である「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」の会合(8月31日)で、国会ではこの新法を推進した自民党の大阪府市議が「大阪都構想」(都と名乗ることは出来ないが、今も便宜上この言葉が使われている)に強く反発して、橋下市長らと激論をする展開となった(朝日新聞デジタル関西、9月1日)。
 この協議会は府市のトップと府市の議会の代表で構成されている。席上、橋下大阪市長が「大阪都になれば二重行政はなくなる。経済成長のためにも必要だ」とあらためて主張したのに対し、自民党の府市議から「大阪市を消滅させる必要があるのか」、「都にしなくても二重行政を解消できる」との疑問がぶつけられ、激しい応酬になった(朝日新聞デジタル、同上)。
 なお、大阪府議会と大阪市議会における党派別議席数では、いずれでも「大阪維新の会」が第1党、公明が第2党、自民が第3党で、府市の「公明は都構想に一定の理解を示した」(同上)とされる。

 法律の裏付けが出来て、橋下市長らがいざ実際に大阪府市再編構想を具体化しようとしたその発端で、早くもこの構想への強力な反対意見が出現したわけだ。仮に特別区の区割りなどが議会で出来たとしても、大阪市と堺市の廃止案が住民投票にかけられたときには、そこで噴出するであろう反対論はすさまじいものになるであろう。
 橋下市長は、自らの「大阪都構想」を具体化し、それへの府市議会と住民の同意を取り付けることがどれほどたいへんかをすでに実感したはずだ。そうした同意を取り付けるためには(たとえそれが可能になるとしても)、莫大な政治的エネルギーが要るはずだ。つまり、とてもその仕事の手を抜いて国政へ進出する余裕などは出てこないはずである。
 このことを逆に読めば、橋下氏は出来れば大阪市長(2011年12月に就任したばかり)を早々に辞任して(大阪問題から逃げて)国会に出たいのではないか。今のところ橋下氏は次期衆院選への出馬については明言を避けているが、周辺からその点での“橋下コール”が強まり、“やむなく大阪市長を辞職する”と言える機会を待っているようにも見受けられる。

 それほどに、「大阪維新の会」の国政進出構想には無理、不自然さがつきまとっているのだ。
 果たせるかな、当の大阪維新の会所属の大阪府議から国政進出への不満の声が出始めた。すなわち、維新の会所属の府議団(58人)は9月3日に、21日から始まる府議会への対応などを話し合うために府議団総会を開いたが、「そのなかで、府議らからは国政進出をめぐる一連の報道などについて執行部から議員らに説明がないことなどに不満の声が相次」いだ。例えば青野剛暁府議は、「いつのまにか新聞等によると国政進出が取り沙汰されている。わけのわからない国会議員が入るとか」と批判した(テレビ朝日、4日)。さらに他の議員らも、「国政進出なんてやめればいい」、「おごれる何とかは久しからず。執行部はひどすぎる。勝手に国政に行ってくれ」とぶちまけた(YOMIURI ONLINE、5日)。

 以上のような、大阪地元の自治体議員からの「大阪都構想」への疑問と、大阪維新の会府議団からの国政進出に対する批判の表面化を見れば、橋下氏がいかに大阪の地元から浮き上がっているかが明瞭になる。
 そうなると、橋下氏はいよいよ“大阪から国政へ”逃げ出さざるを得なくなるであろう。今後の同氏の去就を興味を持って見守りたい。また、多くの国民がどこまでこうした橋下氏への幻想を持ち続けるのか、大きな懸念を持って注目したい。(終り)
 
(お知らせ)この度、当「診断録」の合本第4集(2011年10月2日号〜12年8月30日号)を作成することとしました。すでに出版社に発注済みで、9月中旬末には出来上がる見込みです(非売品)。ご希望の方には、送料込み実費1部2800円で頒布・送付しますので、住所・お名前(実名)を9月20日までに下記までメールでお申し込みください。代金は、現物を発送後に請求します。
 富塚のこの件でのe-mail アドレス: sanko24bun@yahoo.co,jp


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