文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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 年末26日に第2次安倍内閣が発足したが、その顔ぶれを見ての第一印象は、「不適任者が顔をそろえた内閣」で、この有様ではこの内閣は大事な政策では失敗し(経済政策)、あるいは無為に過ごす(外交安全保障問題)ことになりそうだというものである。したがって、第2次安倍内閣の命脈はかなり早い時期に尽きると予想する。 

マスコミはこの内閣を「重量級」(日経電子版、27日)と受け取っているようだが、重量だけなら“大男総身に知恵が回りかね”ということもある。重量級というわけは、閣内に元首相・党総裁の麻生太郎氏、前党総裁の谷垣氏、9月の党総裁選で安倍氏と争った石原伸晃、林芳正両氏、公明党元代表の太田昭宏氏等を取り込んだためらしい。
 要するに安倍首相は党総裁・党代表級の“大物”に支えられる、ということのようだ。だが、いくら大物をそろえても、そのそれぞれが政策とその実行で安倍内閣に成果を上げさせる力量を持っていなければ何にもならない。実際には、そうした点で安倍内閣の閣僚は不適材揃いなのだ。

 新安倍内閣の布陣での不適切さには2種類がある(安倍首相自身の不適切さは措くとして)。その一つは、任命すべき適材を適所に任命しなかったということと、任命すべからざる不適材を重要ポストに任命したことである。前者の代表例は石破茂自民党幹事長を防衛相に任命しなかったこと、後者の代表例は麻生太郎元首相を財務相(兼副総理)に任命したことである。
 安倍内閣の特徴は何といってもその“タカ派”ぶりで、総選挙で自民党を選んだ有権者の多くはそのタカ派内閣が尖閣問題や竹島問題などで中国・韓国に押されない防衛政策を実行してくれるものと期待したはずだ。そして、自民党のそうした防衛政策を代表するのが石破氏である。私も正直なところ、“石破防衛大臣”がどのような政策を実行するか、出来るのかをを見たい気持ちがあったぐらいだ。

 ところが安倍氏はその石破氏をさっさと党幹事長に祭り上げ、防衛政策の担当から外してしまった。次の参院選挙を前にすると幹事長職は極めて重要なポストだというのがその理由だが、石破氏が選挙の指揮に特段有能であるとは思えない。実際には安倍氏はライバル石破氏の「無力化作戦」(週刊朝日、1月4/11日合併号)を行っているとのことであり、石破氏には「組閣や党役員人事については相談せず、蚊帳の外に置いている」という(同前)。つまり、石破氏は党においても内閣においても無力化されたようなのだ。
 その石破氏のいわば代りに小野寺五典氏が防衛相に任命されたが、同氏には外務副大臣、党副幹事長の経験はあるものの、防衛問題に深い見識や経験があるわけではない。この人事を見れば、安倍首相は領土問題に関して特別の覚悟と対策をもって臨んではいない、ということが見えてくる。果たせるかな、安倍氏は島根県が定めた「竹島の日」(2月22日)に政府主催の式典を開催するとの衆院選公約(同党総合政策集)を見送る方針を早々と決めている(msn産経ニュース、12月21日)。

 また安倍自民党は選挙公約(総合政策集)で「尖閣諸島の実効支配を強めるために同島に公務員を常駐させる」と述べていたのだが、菅義偉官房長官は12月27日の記者会見で、「私たちは日中関係を重視している。大局的、戦略的視点をもって取り組んでいきたい」と述べ、「尖閣への公務員常駐を見送る考えを示した」(毎日jp、27日)。
 これは、自民党がこれまで尖閣問題について民主党政権を非難してきた方針、すなわち“対中妥協路線”を自らも実行することを表明したものである。わが国が中国との対立をいま以上に強めないとの方針は歓迎できるが、顧みて自民党の野党時代の無責任路線と、安易な公約破棄にはあきれる。
 要するに安倍内閣には、「日米同盟の強化」以外に、実は確固たる防衛政策も外交方針もないのだ。だから防衛相にも、特段防衛問題に見識があるわけではない小野寺氏を任命したものと思われる。ちなみに、同氏は古賀派(池田元首相以来の宏池会)を継いだ岸田文雄氏(新外相)率いる岸田派に属しており(讀賣、27日)、派閥人事の匂いが濃厚である。

 外相にはその岸田氏が任命された。だが、同氏は「経済金融分野などの政策通」(讀賣、同)ではあっても、外交分野での特段の経験・見識があるわけではない。
 総選挙に臨む自民党の政権公約には、「日米同盟の一層の進化を図る」ことと並んで、「中国・韓国・ロシアとの関係を改善する…」とあったが(日経、11月22日)、こうした難しい課題を岸田新外相が担い、解決できるのか、はなはだ疑問だと言うほかない。それなら、高村正彦副総裁(外相を2度経験、現在日中友好議員連盟会長)を外相に起用する方が遙かに勝っていた。とくに日中の対立緩和を図るならそれが最適の人選ではなかったか。だが、安倍首相は石破氏の場合と同様に高村氏を副総裁に祭り上げて「無力化」したかったのだろう。。
 このように安倍首相の閣僚人選は、防衛、外交の例に端的に表れているように、どうでもいいよううな人材(そのポストに関して)を充て、その道の専門家は外すという色彩が濃厚である。したがって、この内閣は外交・安全保障政策に関しては「無為に過ごす」(上述)公算が大きいと思われるのだ。

 他方で、安倍首相が任命すべきでない人を任命した端的な例は麻生財務相(副総理)である。麻生氏は自らが首相だった2009年に、米国のガイトナー財務長官がG20参加各国に対して「GDP比2%以上の追加財政支出を」と要請したことに無条件に応じ、与謝野財務・金融・経済財政相に対してこの要請の実行を指示し、財源を考えないまま10兆円を上回る09年度補正予算の編成に着手させたのだった(当「診断録」2009年4月9日号参照)。
 なにしろ、財源を顧慮することなく補正予算額の「下限」を指示するという前代未聞の予算編成となったため、与党主導の補正予算の奪い合いが起きて、結局この補正予算規模は約15兆円にふくれあがり、それをまかなうために国債約10.8兆円の追加発行を行うこととなった。09年度当初予算の国債発行額は33.3兆円だったから、この補正予算で国債発行額は一挙に44.1兆円に跳ね上がったのである(「診断録」、09年10月23日号)。加えて、09年度の税収は不況の影響で予算を約7兆円下回ったため、実績では09年度国債発行額は約52.0兆円に達し(財務省資料)、戦後初めて歳入に占める国債発行額の比率(国債依存度)が51.5%と50%を突破したのである(前年度08年度の国債依存度は39.2%)。

 つまり麻生首相(当時)は、財源を顧慮することなく「大盤振る舞い」の(補正)予算(09年4月9日付日経紙の見出し)を編成するという破天荒なことを実行し、以後の財政危機深刻化の幕を開けた人物なのである。
 安倍首相は「デフレ脱却のため」を大義名分に、その麻生氏を副総理・財務相に任命し、大規模な12年度の補正予算を編成すること、その際には12年度当初予算で設定された新規国債発行額の上限44兆円にこだわる必要がないことを指示した(日経、27日夕刊)。これにより、「3年ぶりの補正段階での国債増発が確実」となり、「民主党政権が3年間、国際公約として守ってきた毎年度の『新規国債発行44兆円枠』を突破する」ことになった(日経、同)。
 これで見ると、安倍首相は麻生氏の「財源を顧慮しない財政の大盤振る舞い」の実績を承知の上で同氏を財務相に任命したことがわかる。その意味では、安倍首相にとっては新内閣随一の「適材」任命である。

 だが麻生財務相の登場は、安倍首相にとっては「適材」の登用だろうけれども、国民にとっては最悪の「不適材」の登用である。
 もちろん、デフレ脱却のためにある程度の国債増発を含む12年度補正予算を編成することは必要であろう。しかしその場合においても、そのことと財政収支悪化の歯止めのための工夫とが両建てで考えられる必要がある。そのような配慮を欠いた大型補正予算が編成され、かつそれに続けるかたちで大型の13年度予算が編成されることになると、安倍首相が日銀に要求している無制限の金融緩和方針とが相まって、日本経済は「デフレからの脱却」ではなく、資産価格の上昇を特徴とするバブルとインフレへの突進の時期を迎えることになるだろう。
 その結果、2013年の進行とともに、日本経済のインフレ化懸念及び財政悪化懸念から、“悪い”円安の進行と国債相場の下落(国債利回りしたがって一般長期金利の上昇)が起きる公算が大きい。

 そのようなインフレの進行が明らかになれば、安倍政権もそれを放置するわけにはいかなくなり、インフレ抑制のための引き締め政策に転ずる必要に迫られるだろう。安倍氏も首相就任前に、「物価上昇率が2%を超えれば金融を締めていく」と述べている(「診断録」12月17日号)。そうなれば、日本経済は急ブレーキによって激突型の景気後退(ハード・ランディング)に陥ることになるだろう。
 安倍内閣のインフレ政策に対しては、海外からもブレーキをかけられそうである。すなわち、中国政府は安倍政権の下で円安がどこまで進むのか、それによって長期金利は上がるのかに重大な関心を寄せており、そうしたことを根拠に、市場の一部ではすでに「中国は保有する日本国債の売却に動く」とのシナリオが語られ始めている(日経電子版、28日)。そのような中国の日本国債売りは、市場での広い日本国債売りと、それによる長期金利の上昇を引き起こすだろう。

 安倍首相の意識的かつ過度の円安誘導の政策に対しては米国からも「懸念の声」が届いている(日経電子版、同)。「2期目を迎えるオバマ大統領は09年から14年に米国の輸出を2倍に増やす目標をかかげる。安い円や人民元は米国の輸出競争力をそぎ、目標の達成を阻みかねない。産業界の反発も強い」(同前)。
 そうした米国の反発は、「日米同盟の強化 」を大目標とする安倍内閣の方針と矛盾することになるから、安倍首相もこの反発を無視することは出来ないだろう。また過度の円安推進は、その他多くの国からも“通貨切り下げ競争をもたらす”との反発を受ける公算が大きい。

 安倍首相とすれば、外交安全保障政策などについは成果を上げなくても、とにかくデフレからの脱却と景気回復の傾向が続いていれば、その後はどうなろうとも、13年7月の参院選挙で自民党は勝てるし、安倍政権長期化の展望も開けるとの計算をしているように見える。
 しかし、参院選挙の後先のいずれかはとにかく、市場からの反撃(国債相場の下落や物価、金利の予想以上の上昇)及び外国からの批判により、むしろ安倍内閣の命脈が尽きる可能性とその筋道が早くも見えてきた。終り)

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毎回先生のブログは拝読しています。株式市場は活況で為替は円安と安倍総理の思惑どおりですが、当診断録から今がピークで近いうちに先生のご指摘どおりになると思います。

2012/12/29(土) 午後 6:19 [ - ]


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