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今回の世界不況は1929年に始まった世界大恐慌以来の大きく深刻なもので、その意味で第2次世界大不況(depression)と呼ぶにふさわしいものである。
この景気下降は、各国の関係機関が公表した統計的な事後検証によると、世界的に2007年末には始まっているが、08年中に大きな金融危機が表面化し、同年下半期には実体経済の急速な悪化が進行して、グリーンスパン(前米連邦準備制度理事会議長)による指摘以来、広く「100年に一度の経済危機」といわれるようになった。たしかに、最近の景気の落ち込みのスピードも幅も第2次大戦後ではもっとも大きく、これを恐慌と呼んでも過言ではないほどである。
例えば、アメリカの08年10〜12月期のGDPは年率3.8%の減少で、1981年1〜3月期以来の大きな減少であった。しかも、この場合、国内最終需要は5.1%も減少したのであるが、生産物の多くが在庫として積み上げられた結果、在庫投資の増加というかたちとなり、それが見かけ上でGDPの減少率を少なく表わすことになったのである。
実際、この期における最終需要の各項目の減少率は、個人消費3.5%(消費の減少率としては大きい)、設備投資19.1%、住宅投資23.6%、輸出19.7%、輸入15.7%という激しいものであった。その結果、日本の対米輸出や日本企業のアメリカでの現地生産も大打撃を受けることになった。
上記のような在庫投資の増加は、その後に在庫整理のための生産の縮小を招くことになるわけであり、そうした要因もあって、09年1〜3月期のアメリカのGDPはさらに年率5%以上の減少になるものと予想されている(NYタイムズ、1月31日)。
他方で、日本の08年12月の鉱工業生産指数は、対前期比で9.6%の低下で、低下幅は過去最大であり、またその対前年前期比は20.6%という驚くべき大幅な低下であった。しかも、トヨタ自動車をはじめとする日本の主要メーカーは、09年に入ってその減産幅を拡大しており、そのため、同指数は続けて09年1月,2月とも低下すると経済産業省は予想している。
このような生産縮小は、雇用の急速な悪化をもたらしており、08年12月の完全失業率は4.4%で、その前月からの上昇幅は月間0.5ポイントと過去最大であった。
こうした予想以上の景気悪化により、多くの人びとはパニックに陥っているようだ。「誰もが、ほとんど群集心理に駆られて、価格、人員、投資など、あらゆる支出をカットしつつある」(NYタイムズ、同前)。そのようなパニック、それこそ過去における恐慌の特徴であった。いま進行しているのは、このような厳しい不況である。
ところが、今回なぜ100年に一度といわれるほどの危機が起きたのか、そして、この危機に対する《100年に一度といえるような対策》はどうあるべきか、についてはまだ明確にされていない。最近提案されている奇策ともいえるものとしては政府紙幣発行論があるが、これの理論的裏付けは不明確だ。
私はこの大きな危機の原因と対処法について、次回から順次述べていきたい。その際、政府紙幣発行論も重要検討課題として随時取り上げる。 (この項は終り)
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