文太郎の日記帳

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危うい金融バブル

 2013年の日本経済は株高(年間上昇率は57%)と円安(対ドル26%の下落)のうちに幕を閉じた。日経紙(12月31日)はこれを「歴史的な値動き」と報じ、「大規模な金融緩和などで日本が長引くデフレから脱するとの期待が浮上。内外の投資家が取引を活発に膨らませた」と興奮気味に書いた。30日に東京証券取引所の大納会に現職首相としては初めて顔を出した安倍首相は「来年もアベノミクスは買いだ」と大はしゃぎを見せた(日経、同上)。
 だが、実態の日本経済は株価のようには成長していない(後述)。中でも国内需要の中核である民間消費と企業設備投資は依然として低調だ。また外需では、円安になっていても輸出は伸びていない。 
 これを見れば明らかなように、株価の上昇は経済実態を反映したものとは言えず、金融大緩和(実は放漫金融)に伴う溢れるような投機的マネーが主導しているバブル相場(注)にほかならない。

 (注)bubble とは、「空気やその他のガスを囲む薄い液体の球(sphere)」(Oxford dictionary)のことで、シャボン玉(球)(水に溶かした石けんを管で吹いて膨らませた気泡)はその例。転じて、「現実からかけ離れた良好なあるいは幸運な状態で、長続きしそうにないもの」をさす。具体的な用法では、「やがて価格の崩落という結果に終わる、著しい(通常は急速な)資産価格の上昇、典型的には価値の実質的な増加によってではなく、投機や熱狂によってもたらされる資産価格の上昇」(同上)を表す場合に用いられる

 現実の日本経済は、GDP(国内総生産)の実質成長率(各4半期の対前期比成長率、その季節変動調整値の年率換算値)で見ると、2013年の第1四半期(1〜3月)の4.5%から第2四半期の3.6%、第3四半期の1.1%へとスロ−ダウンしている。
 総生産の成長を支える需要の主要項目の対前期増加率(年率換算前の四半期増加率)を見ると、民間消費支出は2013年の各4半期に1.0%、0.7%、0.2%と鈍化、民間企業設備投資は−1.0%、0.9%、0.0%と停滞している。
 これに対して伸びている需要は、民間住宅建設の2.2%、0.3%、2.6%と、公的固定資本形成(政府の固定資本投資)の1.1%、6.3%、6.5%である。政府固定投資の大幅な増加は、政府による公共事業予算の大幅増加によるものであり、民間住宅建設の増加はこうした公共事業増加による不動産景気の上向き、異常金融緩和の影響、及び消費税の引き上げを見込んだ住宅の先行的取得によるものである。この民間住宅建築と公共投資の増加は、政府予算と金融大緩和によって拍車をかけられているものの、かなり実需を反映したものと言えるだろう。しかし、そうした建設ブームも民間消費と企業設備投資という成長の二つの主柱を大きく動かすには至っていない。

 他方、外需である「財貨・サービスの輸出」の2013年各4半期の増加率は、円安にもかかわらず、3.9%、2.9%、−0.6%と低下している。これは、企業の在外生産比率の上昇により、円安が輸出増に結びつきにくくなっているためと、中国やブラジルなどの新興国の成長が鈍化したことの影響によるもののようだ。それにもかかわらず、円安が進むと輸出企業の株価が上昇する場合が多かった。これは、主として輸出額(ドルなどの外貨建て)の円換算値が増加する「資産効果」を見込んだものであり、輸出競争力強化の結果としての輸出増によるものとは言いにくい。
  対して、円安は輸入価格の顕著な上昇をもたらし、その結果、13年各四半期の「財貨・サービスの輸入」は1.0%、1.7%、2.2%と伸び率を高めた。こうした輸入物価の上昇が消費者の支出を抑制し、輸入原・燃料に大きく依存する企業の経営を圧迫していることは言うまでもない。
 それにもかかわらず、円安と言えば「日本経済にプラス」と条件反射する株式市場やマスコミは“狂っている”と言っても過言ではない。

 以上は2013年における日本の経済実態の推移を四半期別にGDP及びその構成項目についてみたものだが、次にGDPの各年(年間)の成長率の推移を見ることで13年の特徴を見よう。
 実質GDPの対前年成長率は、2010年から4.7%、−0.5%、1.4%で(以上は実績)、13年は推定で2%台であり、13年の成長率がとくに高くなるわけではない。名目成長率は実績では10年から2.4%、−2.3%、0.5%だったが、13年は円安による輸入物価の上昇などの影響で物価が上昇するので、3%程度に高まる見通しである。これは、放漫金融がもたらすインフレ効果であり、経済の実質成長率の上昇とは異なる。

 ここで、念のため、黒田日銀が目指す「2%のインフレ目標」についてコメントしておこう。黒田総裁などは、2%の物価上昇率が実現すれば、それが「デフレ克服」だと主張しているが、それはデフレの根本を忘れた(むしろ知らない)議論である。
 デフレと言われる日本の長期にわたる消費者物価の下落は、実態経済における長期的な需給ギャップ(需要不足)の結果である。だから、短期的な景気上昇局面で物価が上昇したり、放漫金融のようなインフレ的政策で物価が上昇しても、根底にある長期的な需給ギャップが解消されなければ、デフレが克服されたことにはならないのだ。
  現実に日本で進行し始めている消費者物価の上昇は、放漫金融下における円安、それによる輸入物価の上昇を主因とするものであり、短期的視点で見ても、需給逼迫による物価上昇ではないのだ。

 このように、2013年における株高に象徴される日本の景気好転現象は、財政による公共投資増加の効果を除くと、放漫金融によるマネー過剰がもたらした、経済実態を遙かに上回るバブル的なものであり、その先におけるバブルの崩壊を内包したものである。
 では、この金融バブルは何時、あるいはどのような条件の下で崩壊するだろうか。その条件は二つあると私は予想する。その一つは、現在のようなバブル景気の下、2014年以降に政府がさらに財政面から景気刺激策を続けることの影響で、実態経済の成長が加速された時である。その時には、現状では銀行、保険、証券など主として金融組織内を回流している過剰マネーが実態経済に流れ込み、それが需給関係の逼迫と物価上昇の加速をもたらす場合である。この場合には政府・日銀は否応なしに金融政策の転換、すなわち放漫金融の中止、金融引き締め政策の導入に着手せざるを得なくなるだろう。その時には、バブルの崩壊、すなわち株価の暴落など景気の崩落が表面化せざるを得ないであろう。

 日本の金融バブルを崩壊させるもう一つの条件は、米国の金融政策の転換、すなわちこれまでの量的金融政策(その第3弾であるQE3)の縮小であろう。
 米国の中央銀行すなわち連邦準備制度(Federal Reserve System、略称Fed)は、そのQE3を2014年1月から縮小することを12月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で決定した。すなわちFedが市場から購入する国債などの証券購入額をこれまでの月850億ドルから100億ドル減額するという。FOMCの声明によると、これは景気回復に伴って雇用状勢が改善したためである。今回このQE3の縮小が公表された時には、米国の株式市場では、その背景となった米国景気の好転を好感して、また今回の決定が金融引き締めを意味しないというので株価は上昇した。しかしこれまでは、株式市場はQE3の段階的縮小をマネー過剰状態の終焉(その始まり)としてネガティブに受け取っていた。
 Fedがこのようにこれまでの巨大な金融緩和策の縮小を考慮するのは、米国景気の回復・上昇が本格的な軌道に乗った時には、過剰マネーが実態経済に流れ込んでインフレを招く恐れがあるためだ。
 米国景気が本当にしっかりした回復・上昇の軌道に乗ったのであれば、こんごFedの量的金融緩和策が縮小されることは必至である。

 その時には、世界的な過剰マネー縮小のインパクト(米国の金融政策とその下でのマネー供給の影響は依然としてグローバルである)が、日本のバブル崩壊の引き金となる可能性がある。
  黒田日銀総裁がどれだけ力んでも、日本の金融政策や金融情勢は米国の影響を強く受けざるを得ない。黒田日銀のいわゆる異次元金融政策も、しょせんは米国の、すなわちFedの後追いをしただけのことであった。だから、2013年の4月から5月にかけては、“日銀もFedなみのことをやる”という市場の捉え方と期待から、急激な円安と株高が進んだのだった。だが、そうした円安・株高が一段落した5月下旬以後は、円相場も株価も米国の経済情勢、とりわけFedの政策(及びその先行き見通し)によって左右されてきたと言っても過言ではない。

 結局、過剰マネーの下での米国及び日本のバブル景気、その象徴である株高は、実態経済の一層の好転と結びついた場合に、本当のインフレに転化する危険、その結果としてのインフレ抑制策の導入とバブルの崩壊をもたらす可能性を孕んで(はらんで)いるのだ。
 黒田日銀の浅薄さは、デフレを克服するには物価を上げさえすればいいと単純に考え、デフレをもたらした日本経済の長期の問題を見ず、またやみくもな物価引き上げ政策がもたらすインフレーションの危険を見ない点にある。その点、Fedは大金融緩和政策をとりながら、過剰マネーがもたらすインフレの危険を考慮に入れており、そこにわずかに中央銀行らしさが残っていると言える。

 繰り返すが、安倍政権とマスコミが浮かれる2013年末の日本経済の“好調さ”が実際にはバブル景気であることを忘れてはならない、ということである。(終り)

(お断り)当「診断録」9月30日号でお断りしたように、現在、「診断録」の発表は不定期に行うことにしている。今後「診断録」を執筆・公表した時には、もう一つの私のブログ「文太郎の日記帳」(blogs.yahoo.co.jp/to1952dai/)やツイッター(BUNTARO TOMIZUKA@BTTOKYO)でその旨をお知らせしたい。

米国次第の日本の景気

 米国の与野党の対立、その現れである上院と下院の対立のために、米国では10月1日に始まる新会計年度の予算は暫定予算さえも決まらず、その結果、予算ゼロで政府機関の一部が閉鎖を余儀なくされそうな状況だ。これまでも、米国のFed(連邦準備制度ー中央銀行)がその超金融緩和政策(その第3弾、QE3と略称)の縮小をいつ開始するかをめぐって、世界経済が振り回されてきたが、それに加えての財政の行き詰まりである。
 こうした状況では、米国の政治と金融政策がハッキリするまでは、日本を含む世界の経済の行方は見通し難の状態が続くだろう。

 このような米国の政治経済の不透明さの影響で、日本経済のある意味でシンボルである株価はほとんど方向感覚を失った感がある。
 すなわち東京株式・日経平均株価は、黒田日銀の異次元金融緩和の限界が明らかになったために、5月22日に15,627.26のピーク(年初来の)をつけた後大幅に下落した。その後、株価は盛り返して7月18日には14,808.50まで戻したが、それ以来9月30日(この日の終値は14,455.80)まで、この水準をさえ(5月のピークどころか)抜くことが出来ないでいる。この間、今年第2四半期(4〜6月期)の実質経済成長率が上方修正されるなど、経済好転の情報がいくつか出たにもかかわらず、である。

 こうして、異次元金融緩和を先陣とする「アベノミクス」でデフレから脱却するという、国内の構造要因や世界経済動向を度外視した経済政策の限界がいっそうハッキリした。加えて、安倍政権には、困難な状況に臨んで明確な経済政策をまとめて打ち出す能力が欠けていることがハッキリしてきた。
 その象徴が、明年4月からの消費税率引き上げをめぐる政策の迷走ぶりである。ひたすら成長率を引き上げ、それを高く保ちたい安倍首相は、当初はこの消費税増税を先送るする腹であったが、財務省をはじめとする増税派の圧力に押され、加えて財政再建を進めるという国際公約にしばられて、結局増税実施に踏み切ったようだ(9月30日時点での状況)。ところが、現在の経済が好調に見えても、消費増税のデフレ効果が大きい、したがってそのデフレ効果を補う対策が必要だと説得されて、復興特別法人税の1年繰り上げての廃止など、法人税の軽減を中心とする減税策を導入する意向である(具体的には10月1日に安倍首相が発表するという)。

 しかしそうした法人減税は、東日本大震災からの復興財源を奪う復興軽視政策であるとの批判や、大衆に対して増税して企業向けには減税という企業優遇の政策だとの批判があることを別としても(そうした批判は正当だが)、そうした減税の穴を埋める新たな財源探しが必要になるという“つぎはぎ”財政をもたらしている。
 そのような思いつき且つ粗雑な財政政策をするのなら、スッキリと消費増税を先送りする方が理にかなっているし、国民の納得を得られる。加えて、消費増税の消費抑制効果を防ぐ景気効果と、円安による物価上昇の影響を考慮すると、増税がなくても、2013,14年度の税収が予想以上に増え、それが財政の好転に寄与することが見込める。

 それにもかかわらず、安倍首相は10月1日に消費増税の方針とその考え方を発表すると伝えられるが、説得的なものが出て来るとは考えられない。結局、安倍首相は単純素朴なアベノミクスを理論的武器として経済対策をスタートしたが、國際経済問題を含む複雑な“応用問題”に直面すると、対処の明確な指針を失って右往左往し、各方面の主張のごった煮の政策に落ち着く結果に陥っている。
 残念なのは、そうした政権のいい加減さを的確に批判し、それと対決する野党が存在しないことである。(終り)

(お知らせー9月4日号の再掲)私は家内ともども10月に老人ホームへ転居する予定であり、そのためにいろいろの準備を進める必要があるので(また体力的にも)、こんごは日常の仕事や勉強を減らすことが必要になってきた。そこで、これを機会に、私にとって最も時間と努力を要する当「診断録」を以後は不定期刊としたい。「診断録」はこれまでも厳密には定期刊行物ではなかったけれども、だいたいにおいて1週間以内の間隔で公表してきた。それを、こんごは重要な出来事や情勢の変化などがあった場合に限定して執筆・公開することにしたいのである。
 その代りに、もう一つの私のブログ「文太郎の日記帳」(blogs.yahoo.co.jp/to1952dai/)に、随時、政治・経済・社会の諸問題についての簡単なコメントを加えるようにし、今後「診断録」に執筆・公表した時には、上記のブログやツイッター(BUNTARO TOMIZUKA@BTTOKYO)でその旨をお知らせしたい。
 以上、是非ご了承下さるようお願いする。

 政府は8月26日から31日までの6日間、消費税率を予定通りに(法律で定められた通りに)来年4月から8%に引き上げるべきかどうかについて、有識者60人から意見を聞く「集中点検会合」を行った(当「診断録」8月28日号参照)が、その結果について甘利経済財政再生相は9月3日に安倍首相に対し報告、「出席者60人のうち7割超が『消費増税を予定通り実施すべきだ』と求めたことなどを説明した」(日経ほか、4日)。
 だが、この「7割超が増税賛成」という有識者の意見の傾向は、そもそも出席者の顔ぶれから見て既定の事実だったのであり、そこに「有識者からの意見聴取」を利用して“増税は当然”の空気を作り出そうとした政権内“増税派”の思惑が読み取れる。それは、増税延期ないし1%小刻み増税を主張している首相ブレーン(浜田、本田両内閣官房参与)に対する反撃にほかならない。

 この「点検会合」に招かれた有識者60人の顔ぶれは、「学者・エコノミストが23人、経団連・連合・農協・漁協・日本自動車工業会など業界団体の関係者が25人、医療・介護・子育てなど社会保障に関係する人が9人、これに自治体の首長、東日本大震災被災地の関係者、若者の代表らが加わった」(朝日新聞デジタル、9月1日)。
 これらの有識者の内、「意見が割れたのは学者・エコノミスト」で、「業界団体や社会保障の関係者は圧倒的に賛成が多かった」。「増税そのものに反対したのは、主婦の団体や若者の職探しを支援するNPOの代表ら5人だけだった」(朝日、同上)。

 こうした人選をしたのは内閣府で、決まったその顔ぶれから見て、増税賛成派が多数を占めることは点検会合の前から明白であった。しかし、この会合は意見を聞くためのもので、なんらかの結論を出す性格のものではなかったから、そこでの意見について「7割超が増税に賛成」と勝手に“集約”して首相に報告すること自体がおかしなわけで、そこに意図が込められていたことは明らかだ。
 本当に有識者の意見を聞こうというのであれば、増税の賛成派、反対派それぞれの論点を整理して、それらを比較・検討することこそがあるべき姿だろう。
 甘利氏が首相に「有識者の7割超は増税支持」と報告した3日の首相官邸の場に同席したのは麻生副総理・財務相で、そのあたりにも財務省を中心とする増税推進派の思惑を見て取れる。

 甘利経済財政相のこの報告に対して安倍首相は、10月1日に発表される日銀の企業短期経済観測調査を最後の経済指標として確認した上で、「判断は10月上旬にする」と表明した(日経、同上)。
 私はデフレの脱却と経済成長を最優先課題とする安倍首相は消費増税延期に傾いていると見ていた(当「診断録」8月28日号)が、以上のような増税推進派(ないし肯定派)の反撃に対してどう対処するかが見ものだ。仮に首相が増税に踏み切ることになると、アベノミクスを演出した安倍ブレーンと袂(たもと)を分かつことにもならざるを得ない。
 なお、私の考えは、社会保障の維持・充実のためには消費税の引き上げは必要と考えるが、安倍政権が黒田日銀を使って放漫金融によるインフレ政策を推進している以上、消費税増税はインフレ(形を変えた課税である)との二重課税になるので反対である。

 以上のような増税派とその延期派とのきわどいせめぎ合いの中で、推進派・延期派の双方が期待しているのが2020年オリンピックの東京招致成功のようだ(決定は日本時間の8日早朝)。「もしも東京に決まれば、日本経済や株価をめぐる『3つのモヤモヤ』が晴れる」(日経電子版、田村正之編集員、2日)との期待だ。ここであげられている「3つのモヤモヤ」とは、「1つ目は最近方向感を失い気味の株価、2つ目はデフレ脱却の成否、3つ目が消費税率上げの行方」を指す(日経、同上)。中でも「最大のモヤモヤと言えば、本当にデフレから脱却できるのかどうか」だが、「オリンピックはアベノミクスの強力な支援材料として、デフレ脱却を促すとの期待が多い」(同上)。

 なぜなら、「招致が決まった後に予想される競技場や選手村建設などはアベノミクス第2の矢である財政政策を、外国人観光客の訪問増加や、容積率の規制緩和、首都圏再開発などは第3の矢の成長戦略を後押しする」からだという。
 そういう期待を反映して、東京株式市場では建設株が値を上げ、8月26日には「清水建設、大成建設の株がともに年初来高値を更新した」(日経電子版、8月26日)。この日の終値は清水は464円、大成は424円だったが、大成は9月3日には430円と高値を更新している(9月4日は清水448円、大成427円)。

 
 自国でのオリンピックを国威発揚の機会として利用することは、ヒトラーのドイツ(1936年、ベルリン)、共産党政権下の中国(2008年、北京)が代表例だが、それを経済政策の切り札として政府や経済界が期待するというのは今度の日本が初めてではないか。もし日本が2020年五輪の東京招致に成功すれば、安倍首相も法律通りに消費増税に踏み切る可能性が高まり、増税推進派と延期派の対立も回避できるわけだ。
 だが、本当に日本(東京都)はこの招致に成功するのだろうか。もし、それに失敗すれば、そのダメージは極めて大きいものになるだろう。つまり、経済政策の成否を外部(この場合は国際オリンピック委員会)の決定に委ねることのリスクは極めて大きいことを承知しておく必要がある。(終り)

(お知らせ)私は家内ともども10月あるいは11月に老人ホームへ転居する予定であり、そのためにいろいろの準備を進める必要があるので(また体力的にも)、こんごは日常の仕事や勉強を減らすことが必要になってきた。そこで、これを機会に、私にとって最も時間と努力を要する当「診断録」を以後は不定期刊としたい。「診断録」はこれまでも厳密には定期刊行物ではなかったけれども、だいたいにおいて1週間以内の間隔で公表してきた。それを、こんごは重要な出来事や情勢の変化などがあった場合に限定して執筆・公開することにしたいのである。
 その代りに、もう一つの私のブログである「文太郎の日記帳」(blogs.yahoo.co.jp/to1952dai/)に、随時、政治・経済・社会の諸問題についての簡単なコメントを加えるようにし、もし今後「診断録」に執筆・公表した時には、その都度、上記のブログやツイッター(BUNTARO TOMIZUKA@BTTOKYO)でその旨をお知らせしたい。
 以上、是非ご了承下さるようお願いする。

 本題に入る前に、28日の東京株式市場で日経平均株価がまた203.91ポイント、1.51%急落したことに一言触れておきたい。この日の株価下落の主因は、シリア情勢の緊迫化と、それを理由とするNY株価(27日)の下落だが、このことは安倍首相・黒田日銀総裁主導の「異次元金融緩和」による株価押し上げ効果がすでに遠い昔の物語となってしまったことをあらためて示している。
 そもそも、国際的条件と国内の需要不足状態を度外視して、もっぱら金融市場へのマネー供給量を増やすことでデフレを克服できるという理論がお粗末だったのである。

 それはとにかくとして、「政府は、消費税率を法律に従って来年4月に引き上げるべきか、安倍総理大臣の判断の参考にするため、財界や労働界など有識者60人から意見を聞く「集中点検会合」を26日スタートさせ、有識者らは引き上げへの賛否などを表明」した(NHKニュース、26日、ほか)。この会合は今月31日まで6日間連日開かれ、そのあと甘利経済再生担当相が来月3日にも会合の結果を報告書として安倍首相に提出することになっている。
 首相はこの報告書に加え、来月9日に発表される今年4〜6月のGDP(国内総生産)改定値などの経済指標を踏まえて、10月上旬頃までに消費税率を引き上げるかどうか最終判断をするものと見られている(同上)。

 この会合の模様はこのところ連日マスコミで報じられている(とくにNHKは熱心に)が、まことにバカバカしい会合だ。
 そもそもこの会合は、なんらかの結論を導き出すものではない。各出席者が自分の意見を言いっ放しにするだけであり、しかも大部分の出席者の意見はすでによく知られている。だから、この会合は、単に「有識者」60人のいわば意見公示会に過ぎない。はじめから、安倍首相はこの会合からなんらかのまとまった「結論」を得ようとは考えていないのだ。

 それに、この有識者の意見発表は安倍首相の「判断の参考」とするためのものであるのに、肝腎の首相はこの会合には出席していないのである。26日の初日の会合では麻生副総理兼財政相が会合の趣旨を述べているのであり、いわば「主不在(ぬしふざい)の会合」となっている。
 当の安倍首相は24日から29日まで、バーレーン、クゥエート、カタールの中東3ヵ国と東アフリカのジブチを訪問中である。つまり首相は、この消費税率引き上げに関する「集中点検会合」のほとんど全期間に外遊中なのだ。もし首相が、本当に真剣に有識者の意見を聞こうというのであれば、この外遊から帰国した後に「点検会合」を開くべきだったのだ。

 以上の事実は、安倍首相は実はすでに消費税引き上げの可否に関してすでにおよその結論を持って居り、「集中点検会合」なるものは、単に首相が各方面の意見をよく聞いて結論を下したという形を作るためのパフォーマンスに過ぎない。よくても、首相はこの会合で述べられた意見の中から、自らの結論に都合がいいものを利用しようとするのであろう。
 では、安倍首相が持っている結論は、法律(「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」、以下では消費増税法と略称することがある)で定められた通りに消費税引き上げを実行することなのか、あるいは、この法律の「付則18条」で述べられている事項(経済状況等の総合的勘案)を根拠に、「その施行の停止」を含む「所要の措置」を講じようとしているのか。私は安倍首相は「施行の延期」を軸に、引き上げの「代案」の各種バリエーション(毎年1%ずつで計5%引き上げの案を含む)を考えていると見る。

 もし、安倍首相が法律通りに消費増税を実施するつもりならば、なにもあらためて有識者に「引き上げの可否」を問う必要はない。その場合にもし有識者の意見を聞くのであれば、消費税を引き上げた場合のその経済への影響と、それへの対策(それが必要だと判断する場合には)について聞けばよいのである。
 この消費増税法は、その制定当時(2012年8月10日)の「経済状況を好転させることを条件として実施する」ことになっているが、安倍首相は“アベノミクスによって日本経済は劇的に好転した”としばしば自己宣伝してきているのであるから、本当にその点に自信があるのなら、いまさら消費増税実施を逡巡する理由はないはずだ。

 ところが、首相は実は日本経済の好転について確信を持っていないのだと私は推察する。そのことは、自ら推進した円安をテコとした株高が5月22日の日経平均15627.26をピークに下落傾向をたどっていること(8月28日の終値は1338.46)、今年第2四半期(4〜6月)の実質GDP成長率が第1四半期のそれより目立って鈍化し、かつ民間の予測値をも大きく下回ったこと(当「診断録」8月12日号参照)、7月の輸出額(季節調整値)が8ヵ月ぶりに減少したこと(同上8月22日号)などに首相が衝撃を受けたためだと推測できる。
 こうした期待外れの経済データを前に、安倍首相は法律通りに消費増税を実施する自信を無くしたと私は推測する。だからこそ、この増税の実施を宣明することを避け、その実施の可否について“未決定”という態度を表明してきているのだろう。

 したがって、安倍氏の本心は増税を回避(停止あるいは延期)したいのだが、それを上記のようなことを根拠に決めると、アベノミクスの“成果”を自ら否定することになるので、それは避け、“有識者の有力意見”を根拠にして増税見送りを決める形をとりたいのだと思う。併せて、増税延期が“安倍政権は財政再建軽視”という批判を招くことにどう対処するかについて、智恵を得たいのではないか。
 現に、安倍首相の最有力ブレーンである浜田エール大名誉教授と本田静岡県立大教授(両者とも内閣官房参与)は、景気の実勢はそれほど強くないとして、2013年4月の消費増税実施の見送り、ないし毎年1%(5年間)の引き上げ案を強く主張しているのは周知の事実だ。もし首相が増税実施に踏み切れば、そのことは最有力ブレーンと袂(たもと)を分かつことになる。安倍氏にその勇気と確信はあるまい。
 加えて、増税の延期、停止、小幅化は首相と政権への一般国民の支持を高めると首相は読んでいるのではないか。

 上記のような要因を根拠として、安倍首相は法律上で来年4月に予定されている消費増税を見送るか、毎年1%増税の案(あるいはその変種)への変更を決めると思われる(ただし後者の案の場合には新しい法律の制定が必要となる)。
 万一、安倍首相が増税実施に踏み切ることがあれば、そして2013年度中に補正予算を追加しなければ、14年度の実質経済成長率は0.2%程度(13年度は2.7%程度)に急落すると民間調査機関は予測している(日本経済研究センター愛宕伸康主任研究員。JCERアングル月曜10時便、8月19日、による)。そうなれば、自民党内から安倍降ろしの気運が高まり、政権基盤が一挙に揺らぐことにもなるだろう。(終り)

ダウ6日続落で15000割れ

 NY株式ダウ平均株価は、8月21日(水)も105.44ポイント下落し、これで14日(水)以来6日連続の下落(合計下落幅は553.46ポイント、下落率は3.58%)となり、ダウは7月3日以来の15000割れとなった(この事実を内外のマスコミは大きくは取り上げていない)。8月21日の終値14897.55は6月25日(14760.31)以来の安値である。

 
 21日の市場がもっとも注目したのは、当日公表されたFed(連邦準備制度《中央銀行》)の7月30〜31日のFOMC(公開市場委員会《Fedの政策決定機関》)の議事録で、そこからFedの量的金融緩和政策第3弾(QE3)縮小のタイミングについて具体的な手がかりを得られないか、と期待したのだった。だが、議事録では「『ほぼすべての参加者』が年内の債券購入ペース縮小を『おおむね支持』したと記され」(Bloomberg、21日)たが、「その縮小のタイミングについては一致しなかった」(NYTimes電子版、21日)ことも明らかになった。
 しかし、6月の同委員会ではQE3の継続が決められただけであったことと比べて、7月の委員会では大勢が「Fedによる巨額の経済刺激策を縮小する方向に近づいた」(edging closer)」(NYTimes同上)ことはたしかなようだ。

 それでも、7月のFOMC議事録からは、「経済の基礎的な強さについての大きな疑問が残っていること」、したがって「政策のいかなる変更も、FOMCの次回の会合(9月17〜8日)までに明らかになる経済データいかんにかかっていることも明らか」である 。「いく人かの委員会メンバーは、住宅市場と自動車販売には好転が見られるが、経済成長が近いうちに高まる可能性については6月の委員会当時よりは懐疑的になっている」という(同上)。

 NY市場の株価がこのところ下げているのは、市場には、QE3という超金融緩和が縮小された場合の、リスク資産市場へ加わるその下方圧力に対する警戒とともに、現実における景気の強さに対する疑問とが併存しているからではないかと思われる。こういう状況では、QE3縮小でも、景気悪化によるその延期でも、その“どちらに転んでも”市場にはいいことではない、ということになるわけだろう。
 21日の市場では、QE3の縮小を見越して、株価の下落とともに、「10年もの米国債の利回りが2.89%に上昇し、ドル相場の指数(諸通貨のバスケットに対する)は0.5%上昇した」(Financial Times電子版、21日)。米国においてのみならず、世界的にも「株価指数は下落し、債券利回りは上昇している。そして最近のインドなどの新興国市場は混乱に陥っている。インド・ルピーの相場は(資金の流出でー引用者の加筆)水曜日(21日)にはドルに対して最低に陥った…」(Financial Times、同上)。

 片やQE3縮小の可能性、他方では米国や新興国などの景気の不透明さは、いろいろの面で日本経済にも影響を与えている。
 QE3の縮小見通しによる米金利高・ドル高が,日本の株価に影響を与えるとともに円相場の上昇を抑えていることは周知の事実だが、日本の輸出の伸びが7月には止まったことは注意されていない。すなわち、19日(月)に発表された7月の貿易統計(財務省)によると、輸出は対前年同月比で12.2%の増加で5ヵ月連続の増加、数量ベース(価格の影響を除いた)でも1.8%増と「14ヵ月ぶりに前年を上回った」(日経、19日夕刊ほか)。ところが季節変動(及び取引日数の差)を調整した額(同じく財務省)によると、7月の輸出は5兆7816.79億円で6月の5兆8862.13億円から減少、2012年12月以来7ヵ月続いていた輸出の増加が止まった。

 さすがにFinancial Times (電子版、19日)はこの事実(季節調整値で見た輸出の推移)を見逃さず、「日本の輸出はこの8ヶ月間で始めて7月に減少した。これは、円安による輸出の押し上げ効果が、米国やアジアといった主要市場(key markets)における需要の沈滞によって相殺されたからだ」と報じた。ただし、同紙が指摘している米国での需要沈滞の影響の根拠については明らかでない。
 このFinancial Timesはさらに、「この憂鬱な数字は、先日発表された期待を下回るGDP(4〜6月のー加筆)の数値とともに、安倍氏が増税計画を修正するとの期待を高めるだろう」と述べているが、これも的確な指摘と言えるだろう(当「診断録」8月12日号参照)。

 とにかく、世界市場が米国中央銀行の超緩和的金融政策及び米国景気の行方に振り回される状況はまだ当分続きそうだ。(終り)


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