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鳩山内閣による2009年度第2次補正予算が、迷走の上でだが12月8日に7.2兆円で決まった。しかし、政治面では鳩山連立内閣の不安定性と鳩山首相の指導力不足は残ったままである。
他方、経済面では、ドバイ首長国政府系企業の信用不安やギリシャ国債の格下げ(注)などから、8日のヨーロッパ及びアメリカの株価が下落したこと、国内では今年7〜9月期のGDP成長率が下方修正されたこと及び円相場が反騰したことから、9日の東京市場では日経平均株価が前日の小幅安に続いて下落した。しかし、辛うじて日経平均の1万円割れをまぬがれた。
世界的に見て金融危機がまだ終っていないこと、日本では景気下降が終っていないことが再確認された感じである。
(注)12月8日にドバイ政府持ち株会社ドバイ・ワールド系列のナヒールが今年上半期に134億ディルハム(36億5000万ドル)の損失を計上したとの報道(ブルームバーグ)や格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがドバイ政府関連企業6社の信用格付けを引き下げたことから、あらためてドバイの信用不安が注目された。また、格付け会社フィッチ・レーティングがギリシャ国債の格付けをBBBに引き下げたことから、新興国の債務返済問題への市場の警戒が強まった。
最初に事実を整理しておこう。第2次補正予算は、8日に基本政策閣僚委員会で連立3党の合意を得た上で閣議決定された。
政府原案の予算規模7.1兆円に対して1兆円の積み増しを求めていた亀井静香金融相(国民新党代表)は閣議後の記者会見で、「首相が決定したことだ。連立政権なので各党の意向がそのまま実現しないことがあるのは当たり前だ」と語った(読売、8日夕刊)。これはまさに当たり前のことだが、亀井氏は4日の基本政策閣僚委員会をボイコットした上、7日の時点では「政治主導とは民主党主導ではない」と主張し(TVニュースによる)、内閣における首相の指導性を否定するような発言をしていたから、ようやく当たり前のことを認めたわけだ。
一般に連立内閣の運営が容易ではないことは当然だが、それにしても現内閣における国民新党と社民党(とくに前者)の対処の仕方はいささか異常で、これは鳩山首相が軽んじられているからにほかならない。その意味で、首相のあり方こそが問題なのである。
普天間基地移設の問題にしても、鳩山首相は7日に「年内には決定できない」旨を決め、コペンハーゲンでのCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回条約国会議)に出席した際に、その旨オバマ米大統領に直接伝えるとのことであるが(各紙、8日)、今までは日米作業委員会での合意を尊重すると言い、また岡田外相らの年内決着の方針を認めていたかのようであったのに、結局、不決断のまま追い詰められて先延ばしにしようとするわけで、まことに見苦しい。年内決着が無理なら、最初からそう言えばいいのである。
さて、決定された09年度第2次補正予算だが、その規模7.2兆円のうち、3兆円は減額した地方交付税を補填するためであり、2.7兆円は第1次補正予算で執行停止した額に見合うもの(日経、9日)であるから、現政権が麻生前内閣から引き継いだ09年度予算(当初と補正の合計)に比べての正味の増額は1.5兆円である。その意味ではたしかに景気刺激効果は限られているが、政権交代の前と後とで(円高の進行のほかは)景気情勢がとくに大きく変化したわけではない(景気下降とデフレは麻生内閣時代から続いているものである)から、09年度予算としてはこの程度でやむを得ないであろう。
不十分な点は、2010年度予算で補うべきである。
次に9日に発表された09年7〜9月期GDPの改定値について。実質GDPは当初発表の前期比1.2%増(年率換算4.8%増)から0.3%増(年率1.3%増)へ大きく下方修正された。これは4〜6月期の0.7%増(年率2.7%増)に比べても増加率の低下である。7〜9月期GDPの下方修正の主因は民間企業設備投資が1.6%の増加から2.8%の減少へ修正されたことによる。
さらに重要なのは、名目GDPが−0.1%(年率−0.3%)から−0.9%
(年率−3.4%)へ下方修正(マイナスの値の増加)されたことである。これは4〜6月期の−0.7%(年率−2.8%)よりマイナスの拡大である。名目GDPは08年4〜6月期から6四半期連続で(1年半にわたり)減少したわけで、あらためて今回の景気後退の厳しさが裏付けられた次第である。。
念のために付言すると、この「診断録」でいつも述べている(例えば11月22日号参照)ことだが、現在のようなデフレーションの時期には、GDPの額(とその変化率)は生産物・サービスの市場価格をそのまま集計した名目値を重視すべきで、実質値すなわち名目値を価格下落の指数で修正した計算値を重視すべきではないのである。
それを、麻生前内閣がやったように、名目値には目をつむって実質値をもっぱら判断の基準にするから、09年4〜6月期から景気は回復に転じたというような過早な判断をするのである。実際に景気がすでに回復過程に入っているのなら、この時期にあらためて景気対策の強化を主張する必要はないはずである。
要するに、鳩山内閣の経済政策は、当初は前内閣が編成した09年度補正予算の不急不要部分を執行停止(減額)することだけに集中して、その減額分を補填する動きがほとんど見えなかったから、私はそのことのデフレ効果(デフレ加速)を危惧したのである。それが、11月20日発表の政府月例経済報告におけるデフレの認定や11月下旬以後の円高に煽られたためもあるが、とにかく増額補正を行ったことは良しとしなければならない。
これからの問題は、10年度予算を景気支持的に編成することである。先の「診断録」(11月22日号)で述べたように、10年度予算の概算要求額の削減(仕分けを通しての)だけに終らせる(それではデフレ予算になる)のではなく、民主党マニフェストの線に沿って、景気浮揚のための積極予算を組む必要がある。
政府としてデフレ認定をし、09年度第2次補正で追加的な景気刺激策に舵を切ったのであるから、迷走する鳩山内閣でも、最小限、成長指向的な予算を編成し、議会で成立させるべきである。 (この項 終り)
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