文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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 中国の2010年のGDP(国内総生産)は39兆7983億元(速報値、中国国家統計局)、そのドル換算値は5兆4000億ドル(日本の内閣府試算、asahi.com、1月20日)ないし6兆400億ドル(Chinadaily、1月21日)であるのに対し、日本の10年の推定GDPは内閣府試算では5兆4023億ドル(asahi.com、同)なので、中国のGDPは10年に日本を上回って世界第2位となったとマスコミで報じられている。
 しかし、日々報じられる中国経済の実情を考えると、この比較には疑問があり、実態では中国経済の規模は日本の2倍ぐらいになっている可能性が高い。現に、世界銀行公表(10年12月15日)による「購買力平価にもとづく為替相場によるドル換算額」によると、09年のGDPは①米国14兆1190億ドル②中国9兆911億ドル③日本4兆1397億ドル④インド3兆7782億ドル⑤ドイツ2兆9696億75ドルで、中国は日本の2.2倍、米国の64.4%(3分の2弱)に達している。
 他方で、もし各国のGDPがこの通り、あるいはそれに近いとすると、人民元の為替相場はものすごい率で切り上げるのが妥当ということになってくる。
 
 中国のGDPが日本をやっと超えた大きさだと理解した場合には、例えば両国の原油消費量の大きな差を説明できない。09年の1日あたりの原油消費量は中国では891.1万バレル、日本では439.6万バレルで、中国は日本の2.03倍だった(日経、同)。中国でのエネルギー消費効率が悪いとしても、ほぼ同一の規模での経済における原油消費量が日本の2倍ということを理解するのは不可能である。この事実は、実は中国のGDPが過小評価されていると考える以外に説明できない。
 
 類似のことは新車販売台数についても言える。10年の新車販売台数は中国で1806万台で日本の496万台(日経、20日夕刊)の3.64倍であった。
 日中両国の1人あたりGDPは、一般報道によるGDPにもとづけば、日本の4万2431ドルに対し中国は4412ドル(日経、同)で、中国は日本の約10分の1である。このことは、両国の1人あたり国民所得の比較についても当てはまると見ていいだろう。
 他方で、自動車の販売高は国民1人あたりの所得の大きさに依存していると考えられるから、同一人口あたりの自動車販売高は中国は日本の10分の1、しかし総人口あたりではその10倍、したがって販売総台数では日中双方でほぼ同じという計算になるのが普通ではないか。
 
 ただし、中国はいま自動車の新規普及期にあるのでそれだけ販売台数が多くなるとか、鉄道網の不足で自動車に対する需要が多くなるといった事情は考慮されるべきだが、そうした要因で年間1800万台という巨大な新車販売台数を説明することはできない。上述のような要因を考慮しても、日本での販売台数のせいぜい2倍、1000万台あたりが限度という計算になるのではないか。
 ちなみに、GDP世界1位の米国(09年は14兆1190億ドルで、10年の中国のGDP の2.3倍以上)での10年の新車販売台数は1159万台(米調査会社オートデータ調べ)であり、そのピークだった2004,5年でも1690万台だったのだから、中国の1800万台がいかに途方もない数字であるかがわかる。
 この秘密は、1800台という販売台数そのものを否定できない(日本の自動車メーカーもその実態を認識している)以上は、中国のGDPが過小評価されている、ということでしか解けない。 
  
 そもそも、最近の世界経済は中国を中心とする新興諸国の高成長によって引っ張られてきたわけであるが、GDP世界第2位の国、それも第1位の国の半分以下の経済規模の国がそれほどの世界経済牽引力を持つということも理解しにくい。日本は1968年に西ドイツ(ドイツ統一前の西半分)を抜いてGDP世界第2位となったのであるが、それ以後も日本が世界の経済成長を引っ張ったと言えるようなことはなかった。
 
 ここで引用した、世界銀行作成の「PPP(=purchasing power parity、購買力平価)にもとづく各国GDPのドル換算額」で使われている購買力平価とは、各国の物価(逆にいえば通貨の購買力)をもとに理論的に算出された為替相場のことで、この理論によれば規制や人為的操作がなければ実際の為替相場はこの購買力平価に等しくなると考える。
 
 実は米国のCIA(中央情報局)も各国のGDP比較についてこの「PPP方式」を採用しており(the World Factbook における各国比較)、すでに10年についての推定結果が示されている(CIAのホームページ)。それによる1位から6位までは次の通り(この比較表では1位にEUが置かれているので、2位以下が世銀調査の1位以下に相当する。単位は10億ドル)。 
 ①EU14兆890②米国14兆720③中国9兆854④日本4兆338⑤インド4兆046⑥ドイツ2兆951。これによると、10年には中国のGDPは米国の66.9%(3分の2強)、日本の2.7倍になる。 
 
 この「PPPにもとづく各国GDP比較」を用いると、現実の為替相場を用いてのドル換算によるGDP比較の矛盾のかなりの点が解消される。
 ここで重視すべきは、CIA調査は現実の米政府の政策決定の基本資料になっているということである。そう考えると、米国が考える米中関係における中国の重みは、日本で考えるそれより格段に重いと言うべきであろう。それは、経済関係だけではなく軍事面での対抗関係を含むことはいうまでもない。
 では、中国はなぜこうした評価にもとづいて自国の経済力を誇示することをしないのか。実はここには、もう一つの重大な、人民元の為替相場の問題があるのだ。
 
 いま、09年の中国のGDPについて、そのドル表示額として世銀PPP方式による9兆0911億ドルを置き、他方に人民元による表示額である34兆0507億元(中国統計年鑑)を等置すると、90911億ドル=340507億元から、1ドル=3.745元という計算結果が出る。これは1月20日に人民銀行から公表された人民元の基準値、1ドル=6.5883元(05年7月の元切り上げ以後の元の最高相場)に比べると、ものすごい人民元高の水準であり、それは実に75.7%の元切り上げ(ドルにとっては43.1%の対元切り下げ)を意味する(注)。
 
 (注)元の上昇率は、1元=1/6.5883ドル(分数)から1元=1/3.745ドルへの上昇として計算される。 
 
 中国としてはこのような人民元高を誘発するようなGDP評価を避けようとするのだろうし、米国としてはこういう人民元相場の“理論値”を胸にしまって中国に対し元切り上げを迫っていると考えられる。その点を考えると、GDPをどう評価するかという問題は、直接に国際交渉の中身に直結していることがわかる。
 ちなみに、世銀PPP方式による日本の09年のGDP 4兆1397億ドルと日本政府推計の470兆9368億円とからPPPによる09年平均の為替相場を逆算すると、1ドル=113.761円となる(現実の銀行間平均相場は93.5円だった。東洋経済新報による)。
 
 もちろんPPPによるドル換算がそのまま正しいということにはならないが、GDPなどのドル換算による国際比較に当たっては、すくなくとも現実の為替相場とPPPによる理論的相場の間のどこかに適正値があると考える必要がある。
 それにしても、中国の真の経済規模が日本の2倍近辺であるという評価にはかなりの説得力があるのではないか。(この項 終り) 
(お断り 本稿は1月23日付の前号「中国GDP日本の2倍かも」を整理し、簡略化したものである)

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