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◇風邪による私の熱は24日(木)にはほぼ平熱にまで下がったのですが、25日(金)夜にはまた37.6度まで上昇し、今回の風邪がなかなか手強いことを思い知らされました。そのため、26日(土)に再び内科医へ行き、その後また静かにしています。今日(27日)は今のところ平熱に下がっています。
このあと、今週は29日(火)に前立腺診断のための血液検査、30日(水)に大腸の内視鏡検査を控えていますので、あと数日は慎重にしている必要があります。
◇私は年金生活者ですので、風邪で静養していると言っても、“普段でもたいした用事はないのだから、それとあまり変わりがないのでは?”と言われそうですが、普段は結構忙しいのです。
この機会に生活の一端を公開しますと、私は週に最低1回は英語(1時間、マン・ツー・マン)とドイツ語(最低80分、通常は4〜5人のグループ)のレッスンをネイティブから受けていますし、月2回はピアノのレッスン(30分)を受けています。外国語は、やはりリスニングとスピーキングをしていないと身に付かないし忘れる、と考えて続けています。正直なところ、高齢化に伴って記憶力は減退しますので、新しい単語を覚えるのは難しいですが、5つ覚えて4つは忘れても1つは残ると考えることにしています。
ピアノは、退職後に楽しみと健康のため(両指、とくに私は右利きですので左手を使うことが脳を活性化するそうです)に始めました。以上の両者ともに復習あるいは予習にかなりの時間をとられます。こうした勉強と「診断録」の執筆(これには相当のの準備−資料収集を含めてーを必要とします)で、正直なところ、私の毎日は現役時代なみと言っていいぐらいの忙しさです。
◇でも、いろいろ勉強していると思いがけない“小さな新発見”をすることが多々あり、そうしたことも学ぶ楽しさを増してくれます。
たとえば、最近 Takt (タクト)というドイツ語を調べていて気がついたこと(あらためて知ったこと)がありました。タクトとは“タクトを振る(あるいは、とる)”(オーケストラなどで)と日本語で使われるあのタクトです。しかし、Takt というのは単に「拍子」あるいは「拍」(4分の3拍子という場合の拍)のことなのですね。ですから、指揮棒はあくまで指揮棒ーTaktstock(タクトシュトック)ーと言うべきなのです(英語ではbaton)。さすがに広辞苑はこの両者の関係を正しく解説しています。関連して、「手拍子」というのはなかなかいい表現だということに気づきます。
◇さて、今回も簡単な時評を書き添えます。取り上げるのは、最近また話題になっているユーロ圏の共同債券、いわゆる「ユーロ債」です。
これは、ユーロ圏17ヵ国が共同で国債を発行し、市場で調達しようというプランで、EU委員会のバローゾ委員長が11月23日の記者会見で公表した。同委員長はそれについての3案を示したが、とにかくユーロ債の眼目は、ユーロ圏すべての国の連帯保証で国債を発行すれば、ドイツのような財政健全国も保証に加わるので、この債券の金利はユーロ圏最優良のドイツ国債なみとはいかないまでも、かなり低い金利で資金を市場で調達できるはずである。そうすると、ユーロ圏の援助側の国は対重債務国援助の負担が減るし、また今は市場で調達する場合には異常高金利で悩むギリシャ、ポルトガル、イタリアなどの重債務国は国債金利を大幅に引き下げることができ、財政負担を軽減できるという考え方だ。
このアイディアは、一見して明らかなように、ドイツなどの信用力にぶら下がって、財政健全国の国債も重債務国の国債も共同で市場で低金利で発行しようとすることにほかならない(ドイツなどにとっては逆に金利が上昇することになる)。
◇この仕組みを理解する上でのいい例が、日本で行われている「共同発行市場公募地方債」の発行だ。これは、言いかえると、「市場公募」による「共同発行」の「地方債」である(以下は財団法人「地方債協会」のホームページによる)。
具体的には、平成23年度(2011年度)には、北海道、神奈川県、大阪府、鹿児島県などの道府県と、札幌市、仙台市、京都市、大阪市、福岡市などの政令指定都市の計35地方団体(月により発行主体が替わることがある)が合計1兆5360億円の10年満期地方債を連帯責任(連帯債務を負う)で発行する。この場合、各団体ごと、各月ごとの発行額は決まっている。 そこで、たとえば、北海道は年度中に計800億円の地方債(北海道債)を発行するが、いざの場合には、この共同発行地方債の総額1兆5360億円までの債務を北海道は保証するのである。このように各地方自治体が連帯保証をするので、信用力の弱い、あるいは市場になじみが薄い自治体もこのプランに乗れば楽に債券を発行できることになる。
なお、この共同発行地方債は地方財政法における次の規定にもとづいている。「…二以上の地方公共団体は、議会の議決を経て共同して証券を発行することが出来る。この場合においては、これらの地方公共団体は、連帯して当該地方債の償還及び利息の支払いの責めに任ずるものとする」
(第5条の7)。
◇ユーロ債の場合には、3案の中で最も効果があるとされているのは、上記の共同地方債の場合とは違って、ユーロ圏17ヵ国をひっくるめた一つの「共通」債を発行し、それで調達した資金を各国に配分するというもので、全17ヵ国の信用力のいわば平均を市場で問うようなものだ。ここでは、信用力の低い国がそれの高い国に依存して資金を調達するという共同債の性格がより露骨に示されている。そして、どの国も全体の債務について連帯責任を負うことになっているが、実際に責任を負う能力を持っているのは財政が健全な大国(圏内の)だけだ。他方で、重債務国は、もしこの債券に関して債務不履行に陥っても、その責任は実質的には他の大国が負ってくれるので、財政はよりルーズになりかねない。
だから、ユーロ共同債とは、結局ドイツなどの最終責任(負担)で重債務国向けに市場で比較的低い金利で資金を調達しようという案なのだ。下手をすると、そのドイツまでが重債務国の連帯債務で沈んでしまう恐れもある。これではドイツなどが反対するのは当然である。
◇このユーロ共同債について、EU委員会のレーン委員(経済・通貨担当)は、「率直に言って、財政規律を強力に守る措置が十分でなければ、ユーロ共同債は簡単にジャンク債(ボロクズ債−加筆)に変わるだろうと指摘」(Bloomberg電子版、11月23日)、またフィンランドのウルプライネン財務相は「(財政状況が)健全な国々が危機に陥った国々と同じ責任を共同で負うこととなり、最悪の場合、投資家がユーロ圏に対して持っている最後の信頼感を失わせる可能性がある」と述べた(ロイター電子版、24日)。
ところが日本や米国のマスコミには相変わらずドイツに負担を求める議論が優勢だ。その代表例は讀賣(25日)で、「共通債は欧州危機の収束に向けた『切り札』だが、導入までには高いハードルがある」とユーロ債構想を無批判で持ち上げた上で、そうしたハードルとして、「ドイツなど財政状況が健全な国は、財政危機に陥っている国の支援に消極的だ」と批判している。
◇ここで重債務国援助におけるドイツの負担について、EFSF(欧州金融安定ファシリティあるいは安定基金)の場合を例にとって見ておこう(当「診断録」10月2日号参照)。この資金量(融資可能額)は4400億ユーロで、EFSFはその資金を市場で債券の形で調達するのだが、その際にユーロ圏各国が負担能力(欧州中央銀行=ECBへの出資比率による)に応じてこの債務(EFSF債券の)を保証することになっている。その際、実際に保証能力がある国は限られてくるので、総保証額は7800億ユーロに設定されている。そのうちドイツの負担分は各国中の最大で2110億ユーロ(分担比率は27.1%)で、この額は2011年のドイツの国家予算の3分の2に相当する大きさである。さし当たってはこれは債務の保証であるが、もしEFSFがその融資を回収できず(その可能性は大きい)、その結果としてEFSF債の償還が困難となれば、保証国は実際に償還責任を負うことになる。
かりに、日本が近隣のある国の債務を保証し、しかもその保証額が政府予算規模の3分の2にも上っている時に、さらにその国との共同債で債務の連帯責任を求められたらいったいどういうことになり、マスコミや世論はどう言うだろうか?
要するに、国が他の国を援助するというやり方には無理があるのだ。
◇ところで24日には、イタリアのモンティ新首相を迎えて、ストラースブールで独仏伊の3国首脳会談が行われ、その際にユーロ共同債やECBの役割などについて議論されたが、日経紙は「メルケル独首相がユーロ共同債構想を『必要ない』と明言」したことなどをとらえて、3ヵ国の「互いの意見対立は埋まらなかった」と、やはり暗にドイツを批判した(25日)。とくに、モンティ首相が「首相就任前に学者として導入(共同債の)を主張した」として独伊間の主張の対立をにおわせた(同上)。
この会談の真相については確証はないが、FAZ紙(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)は次のように伝えている(電子版、24日)。
「メルケル独首相は、前日(23日)に自らがドイツ連邦議会で行ったユーロ債拒否の演説の詳細な説明を行い、これに対してサルコジ仏大統領とモンティ伊首相は黙ってうなずいた」。またモンティ首相は「以前に“安定債”(共同債のこと−加筆)について示した自らの感動(Begeisterung)を相対化しようと努力した」と。
いずれにせよ、私はユーロ(共同)債の導入は無理だと思う。(ユーロ債の項 終り)
◇最後に、前号のお知らせの繰り返しですが、「診断録」の合本(B6製本、約470ページ)第3集を作ることにしました。収録したのは185号(2010年11月4日号)から263号(2011年9月29日号)で、12月上旬中には出来あがる予定です。大震災、菅内閣から野田内閣への交代、欧州債務危機の再燃・本格化などを含む時期のものです。
市販はせず、少部数の印刷・製本ですの、すこし高くなりますが、いつものようにご希望の方には実費(ゆうメール代込みで3100円)でお分けします。ご希望の方は12月10日までに、下記メールアドレスまで、お名前(本名)、住所をお知らせ下さい。実費は製本現物をお送りする際にお知らせする振込先へお願いします。
sanko24bun@yahoo.co.jp
(以上)
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