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嘉田由紀子滋賀県知事を代表とする新党「日本未来の党」が28日に設立され、「卒原発プログラム」の策定、中学校卒業までの子供への年間31.2万円の手当支給、消費増税の凍結、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉入りへの反対、などの政策要綱原案を発表した(朝日新聞デジタル、29日)。
同党には、既設の新党「国民の生活が第一」(代表・小沢一郎)、「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」(共同代表・山田正彦、河村たかし)が合流、「みどりの風」(共同代表・谷岡郁子、亀井亜紀子等4人)からは所属の前衆議院議員3人が合流(谷岡氏らは党を存続させ、残る参院議員4人で活動する)、また社民党に離党届を提出していた阿部知子前衆議院議員も参加、現時点では前衆院議員61人と参院議員12人の計73人を擁する党となった(読売、28,29日)。これにより、未来の党は現時点では前衆院議員数では衆院の第3党となって、「日本維新の会」の11人を大きく引き離すこととなり、これまで言われてきた第3極がすくなくとも二つに大分解したことが明確になった。
私は今月初めの「診断録」(11月4日号)で次のように書いた。「第3の極としてまともに自立しているのは、橋下氏の影響下にある維新の会と、小沢一郎氏が率いる『国民の生活が第一』だけではないだろうか」。しかし「維新の会は、…他の会派との提携には積極的ではなく、仮に提携を考えるとすれば吸収合併型をもっぱら追求しているよう」であり、「他方『国民の生活』は反増税、反原発が主たる主張なので、社民党や共産党と通ずる面が多いが、小沢氏にいま社共との提携を考える気配は見えない」と。
その後、維新が17日に石原慎太郎氏が率いる「太陽の党」を吸収(ただし石原氏を維新の代表に担ぎ上げてその知名度を利用)したのに対して、「国民の生活」は嘉田新党に合流するかたちで、とにかく社共を除く反原発の野党各派をまとめることになった。これまで日本の政党は自己主張の面ばかりが強く、党として連携あるいは合同したり、政権のために連立することに消極的か不得手であったが(公明党の自民党との万年提携は例外)、今回はさすがに政治巧者の小沢氏が動いたためか、反原発の野党各派の大きな合同・連携が出来上がりつつあるようだ。
反原発(嘉田氏は卒原発と言っているが)の野党の各小党派がまとまったことは、党を選ぶべき国民の側から見ると好都合だろう。自民党からは、未来の党は「実態は『小沢新党』で嘉田氏はオブラートに過ぎない」(高村副総裁の談話。讀賣、28日夕刊)との批判がある。たしかに、「小沢氏が未来の党の党首としてではなく、舞台裏で政党運営や選挙を操ろうとするのは間違いない」(WALL STREET JOURNAL日本版、29日)だろう。これは小沢氏の力量からすれば当然のことだ。しかし、この新党は単なる“小沢党”よりは大きな広がりを持っていると見るのが妥当だ。むしろ真の第3極はこれだと見ることも出来る。総選挙においてもかなりの成績を上げるのではないか。
ただし、反原発以外の政策については、28日に発表された政策要綱原案は抽象的だし、この党に合流した各党派間の調整もできていない。その意味では、同党はまだ政権党候補ではなく、批判政党にとどまっている。そうした点では、未来の党は従来の社民党、共産党のあり方を超えていないと思う。
これに対して、維新の会は政策面では一層混迷あるいは曖昧さを深めている。すなわち同会は、「民主党と同じ『30年代の原発稼働ゼロ』を掲げていた」のが、「原発を容認する石原慎太郎氏が合流し、条件付きで原発の稼働を容認する姿勢」(讀賣、29日)に転じた。ところが29日に発表した衆院選公約「骨太2013−2016」と政策実例では、エネルギー政策では「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」を打ち出した(毎日jp、29日)。これでは、まったく政策に定見がないと言うべきだ。
さらに、維新の会にとって今後大きな課題になるのは、石原代表の「核武装容認」論の扱いだろう。石原氏は都知事だった頃の6月28日のAFP通信とのインタービューで、「日本は核兵器を持つべきだと思っています。持ったって絶対に使えない。しかし日本が核兵器開発のためのコンピューターを使ったシミュレーションするだけで、日本の存在感は変わってくると思います」と語っている(AFP、7月14日)。また同氏は維新の会代表になった後の11月20日には日本外国特派員協会での講演で、「尖閣諸島をめぐり対立する中国への対応に関し『日本は核兵器(保有)に関するシミュレーションぐらいやったらよい。これが一つの抑止力になる』と表明した」(時事通信、20日)。ただ、石原氏はこれは「個人の考えだ」(同)と断ってはいるが。
とにかく維新の会は、そうした石原氏を進んで代表に迎えた。したがって、維新が“核武装論者を党首にいただく新党”というイメージを持つことは否定できない。そのことが選挙と今後の政治にどう影響するか。
現時点では、世論調査における維新の会への支持率は、調査機関により結果が大きく分散している(以下の調査結果は未来の党の設立以前)。すなわち、11月26〜28日に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査(日経、29日)では、「衆院選で投票したい政党や投票したい候補者がいる政党」で維新の会は15%で2位となっている(1位は自民の23%、3位は民主の13%)。これに対し、NHKが23日〜25日に行った世論調査(NHKニュース、26日)の各党支持率では維新の会は4.2%に過ぎない(1位は自民24.3%、2位は民主16.6%)。
このように結果が大きく分かれるのは、調査機関の調査方法にもよるだろうが、対象の維新の会に対する世論の動向がまだ大きく揺れている(維新自身が揺れているため)からではないかと思われる。
さらに、維新の会のもう一つの(最大の、と言うべきか)未知数は、同会が選挙後の政界においてどのような位置を占めるのかという点である。この点で注目されるのは第3極の「ある党首」の次のような発言だ(未来の党設立以前の時期)。「維新はもはや反既成政党ではなく、憲法改正なども含めた自民党よりライトの政党になっていくように見える。この考えは、もともと維新の松井一郎幹事長が自民党中枢と水面下で画策してきた連携の形だ。もはや維新は“自民党の補完”という流れをたどるはずだ」(サンデー毎日、12月9日号)。
石原代表は26日にロイターなどとのインタービューで、「強力な第2極をつくらなければならない」と次のように述べている(ロイター、26日)。「自民、公明に過半数をとらせたら結局同じことだ」。「第2極を作り、強力なキャスチングボードになりたい(キャスティングボート《casting vote=決定投票》を握る、の言い間違いかー引用者の加筆)」 。この発言の意味も、自公両党(石原解釈では合わせて1極)で衆院で過半数を取れない場合に、“維新が自公の連立に参加して過半数を制する”という意味だと理解するとよくわかる。この展望にもとづくと、たしかに維新はもはや第3極ではない。
あるいは(多分?)石原氏は、その場合に自らが首班に選ばれることを狙っているのかも知れない。石原氏の野心(我欲)から考えると、同氏が単なる“第3極の党首”で満足するはずがないことはよく理解できる。
いま石原・橋下両氏が率いる維新の会を支持している人たちは、“自・公・維新の連立政権”における“石原首相”の実現を期待しているのだろうか? (終り)
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