文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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安倍政権で危うい日本

 12月16日の衆議院総選挙の結果は、予想以上の自民党の大勝、民主党の惨敗で終り、私が最も危惧した自民、公明両党での衆議院3分の2以上の議席獲得が実現した(定数480の3分の2は320、選挙結果は自民294,公明31で計325)。これで、大部分の自公政権提出の法案は、衆院で可決の後、参院で否決されても、衆院において3分の2以上で再議決すれば成立することになった(ただし、憲法改正の発議は衆参両院それぞれで3分の2以上の多数で議決する必要があるので、自公両党だけではこの条件を満たすことは出来ない)。
 こんごは来る26日に招集される特別国会で安倍自民党総裁が首相に選出され、早ければ同日中にも自公連立の安倍新内閣が発足する見通しだ。安倍政権は公約したデフレからの脱却、尖閣諸島への公務員の常駐など「同諸島の実効支配を強化」する政策を進めると思われるが、こうした政策は、日本経済のインフレ化、日中関係の一層の悪化を招き、日本を危険な状態へ導くことになるだろう(当「診断録」12月15日号参照)。

 日本を長年のデフレ状態から脱却させることは必要だ。しかし、安倍自民党が約束した、無際限の金融緩和と大型予算による公共事業の実施という政策はデフレ脱却を超えてインフレを招く政策であり、また財政赤字をさらに拡大する結果を招く。そうした政策の結果として日本がインフレの傾向を示した時にはどうするのか?安倍氏は「(消費者物価上昇率が)2%を超えれば金融を締めていく。それが中央銀行の役割だ」と平然と述べている(11月29日の名古屋市での街頭演説で。msn産経ニュース、29日)。 このやり方は日本の高度成長時代の政策のあり方とほとんど同じだ。そして、そうした引き締め政策の結果は新たな景気後退とデフレへの突入である。そのようなやり方では当然デフレから脱却することは出来ない。
 もし、安倍方式で本気でデフレから脱却させるというのなら、物価の上昇を恐れることなく金融の緩和と財政からの景気刺激を続けなければならない。その場合には、本格的なインフレーションがデフレに取って代わることになるだろう。そして、政府の債務負担の実質価値はインフレの中で急速に減価し、結果としてその実質負担額は大きく軽減される。

 安倍氏にそこまでの度胸があるだろうか。むしろ上述の発言のように、安倍式反デフレ政策は、「金融と財政による景気刺激→物価上昇の激化と国際収支の悪化(今日では円安の進行)→引き締め政策の導入→景気の後退」という往事の悪循環(その中での日本経済の一層の弱化)を再現させることになる公算が大きい。
 このような安倍自民党の政策は、今日先進諸国がおしなべて陥っている経済困難と、それを克服する上での各国の政策的苦闘から何も学んでおらず、したがって自らは何の工夫も用意していないことを意味する。先進諸国は、長年にわたり、「不況に対しては赤字財政と金融緩和による景気刺激」というケインズ主義的政策で政策運営を行い、その結果として財政赤字と政府債務残高を増やし続け、ついに国債相場の下落という危機を迎え始めたのだ。そのはしりがギリシャなどユーロ圏の国々である。
 日本では、ギリシャなどの財政危機をユーロ圏に特有の現象と見る(見たがる)見解が大勢だが、それは先進諸国にほぼ普遍的な現象なのだ。

 そうした財政危機に対して、ユーロ圏は主として財政の緊縮という正統派的政策(古めかしい)で対処し、それに伴う景気の悪化を敢えて拒まないという方針で進んできている。これは、新興諸国などの外国経済が成長を維持することを前提に、ユーロ圏が輸出の拡大で景気の悪化を緩和することを期待しての政策だと言える。“ユーロ危機”という世界的大合唱の中で進んだユーロ安は、皮肉にもそうしたユーロ圏諸国の思惑通りの結果を生み出している。
 これに対して米国は、厳しい財政緊縮方針(及び「小さな政府」の主張)は野党の共和党によって(とくにそのイデオロギー的中核をなすティー・パーティーによって)主張されており、その影響は2010年の議会選挙で下院において共和党が多数派となって以来顕著になった。その結果、オバマ民主党政権も財政緊縮を含む難しい景気対策を工夫せざるを得ないようになっている。しかし、景気維持・振興と財政改善を両立させる政策は至難で、オバマ政権はその点で苦慮しているのが実状だ。

 ところが、安倍自民党はそうした問題の所在にはまったく無関心に(あるいは意識的に無視して)金融の無制限緩和と財政拡張を実行しようとしている。米国の中央銀行である連邦準備制度(Fed=Federal Reserve System)の理事会(FRB=Federal Reserve Board)も無制限の金融緩和を実行しているが、これは“財政が動けない(少なくとも動きにくい)”ので、それを補う役割を担うためなのだ。
 これに対して、安倍反デフレ政策はそうした各国共通の“政策の悩み”などまったく関知しないように気楽に主張されているのである。そして「物価上昇率が2%を超えれば引き締め政策」と平然と言う。しかも、この場合のすべての責任は日銀にあると言っているのだ(あたかも「政府はその責任を負わない」とでもいうように)。
 安倍政権の反デフレ策がこのような状態で進めば、やがてインフレ警戒(通貨価値下落への警戒)から円安(いわゆる悪い円安)が進み、それが輸入物価の上昇を通じてインフレを加速するという悪循環が始まるだろう。これは、円の「世界最強の通貨」の地位からの転落を意味する。

 安倍自公政権の発足でさし当たり大いに危惧されるもう一つの政策は対中国政策である。今回の総選挙に臨む自民党の公約では、一方では「中国・韓国・ロシアとの関係を改善する」と謳い(うたい)つつ、他方では「尖閣諸島の…実効支配を強化する。島を守るための公務員の常駐や、周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島・海域の安定的な維持管理に努める」と述べ(日経、11月22日)、尖閣の「現状変更」の方針を示した。
 これが実行されれば、中国とくに排外主義的な中国大衆の感情を刺激し、新たな反日運動を引き起こす可能性が大である。そのことは、ある程度沈静化しつつある中国での日本商品排斥の運動(戦前の用語で言う日貨排斥)を再燃させ、日本の対中輸出や日本の現地企業の活動にもたらす悪影響を強めるだろう。そうしたことが、日本経済に大きな困難をもたらすことは言うまでもない。

 安倍氏は今回の総選挙中に、繰り返し「自民党は実行できる政策だけを公約している」と強調してきた。したがって、発足する安倍新内閣は上記のような政策を実行することになるだろう。
 私どもとしては、安倍自民党(及び公明党)がもっと経済や日中関係の現状と問題点、及びそれに対処すべき政策について勉強し、公約で示したような暴走的政策へ突き進むことがないように願い、かつ監視すべきであろう。
 なお、維新の会との関係を含む、選挙後の自民党(政権党)のその他の問題点については、適時こんごにおいて取り上げることとしたい。(終り)

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