文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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安倍外交早くも挫折

 1月中に米国を訪問してオバマ大統領と会談し、日米同盟の強化を確認したいとする安倍首相最優先の外交プランは、米国側がこれに応じなかったために挫折した。傷心の安倍氏は、やむなく首相就任後最初の訪問国として東南アジアの3ヵ国(ベトナム、タイ、インドネシア)を選び、16日から3日間の日程で出発する。 

 「日米同盟を強化しなければ、強い外交力は手に入らない。最初に米国を訪問したい」(日本テレビ番組での発言、2012年12月16日)というのは、昨年末の総選挙前からの安倍首相の計画である。すなわち同首相(と同時に安倍氏率いる自民党)によれば、「民主党政権では日米首脳会談の開催すらままならない状態であったので、まずは首脳同士が会談することから始め、かつてのような良好な日米関係が修復できれば、中国もロシアもそう簡単に日本を挑発できなくなる」(zakzak《産経新聞発行の「夕刊フジ」の公式サイト》、12月27日)という認識である。
 これは、要するに、“親分”米国に保護してもらえば中露などの周辺非友好国も日本に手出しを出来ないと考える、従属国型外交であり、言いかえれば外交無策にほかならない。

 ところが米国はこの安倍首相の申し出に応じなかった。これは「2期目を迎えるオバマ大統領の多忙さに加え、早期の首脳会談では成果も乏しいと見られるから」で、外務省幹部は「米側は早期の首脳会談に慎重姿勢を示しているようだ」と語っている(朝日新聞デジタル、1月7日)。つまり米国側は、ただ単に日本に“肩入れ”をしているポーズを示すだけの首脳会談などはお断りで、首脳会談をするなら日米間の懸案の問題(普天間飛行場の移設やTPP問題など)を協議・解決すべきだという意向なのだ。
 政府は安倍首相の1月中の訪米が実現困難になった理由を「オバマ大統領の2期目の就任式などがあり米側の日程が立て込んでいる」からと糊塗し、その上でこれを「2月以降に先送りする方向で調整に入った」ようだ(msn産経ニュース、23日)。

 この安倍1月訪米の挫折について、中国はすかさず皮肉たっぷりにコメントした。すなわち「新華網」(中国最大のニュース・サイト)は「環球時報」(中国共産党の機関紙「人民日報」の国際版)の次のような論評を伝えた(「毎日中国経済」、1月8日)。「安倍首相が念入りに計画していた外交デビューは失敗。日米の親密さを強調するために、安倍首相は初の訪問先を前回(前回首相であった時ー引用者の加筆)の中国から変更したが、冷遇される結果となった」。
 また新華網は、フランスメディアによるこの問題の報道を引きつつ次のように伝えている。「フランスメディアはタカ派の安倍首相は靖国神社の参拝に興味を示しており、第2次大戦の最大の戦勝国である米国は不満を隠そうとしないと伝えた。日本メディアは『日米同盟は日本外交の柱であり、特に北京側がねじ(領有権問題)を調節する力を握っている時にはなおさらだ』と指摘した。だが、日本がアジア戦略のパートナーなのか、それともトラブルメーカーなのか、米国はまだ判断を下していないようだ」。
 ただし、この新華網の報道の後半(上記の「だが」以下)は、紛らわしいが、新華網自身のコメントと思われる。

 ところで、米国のマスコミもこのフランスメディアと類似の疑問を呈している。すなわち1月3日付のNYタイムズは次のような記事(私はその時は見落としたが)を掲載した(「週刊ポスト」、1月25日号による)。すなわち、「ポスト」誌が報じたところによると、「NYタイムズは『日本の歴史を否定する新たな試み』という見出しで、安倍首相が旧日本軍による従軍慰安婦の強制を認めた河野談話の見直しに言及していることを『右翼の国家主義者』と批判し、『安倍氏の恥ずべき衝動は、北朝鮮の核開発問題などの対処に不可欠な地域の緊密な協力を脅かしている』と書いた」。

 これらの欧米マスメディアの報道を見れば、米国側が安倍首相の「歴史認識」(従軍慰安婦問題を含む)にある種の疑問を抱いていること、そのことが日中間のみならず日韓間の摩擦のタネになっていることに不快の念を抱き、その意味でオバマ大統領のパートナーとしての安倍首相の資質に不安を抱いていることは否定できないと思われる。
 そうしたことと、TPP参加問題や普天間基地の移転問題での安倍首相のスローな対応ぶりとが重なって、安倍首相の1月中の訪米とその際の日米首脳会談の実現を米国側が拒否したのであろう。
 だが、安倍首相(及びその下の自民党)は歴史問題で「河野談話」などの過去の外交的到達点(成果)を否定しているだけではない。現実の国際情勢の認識においても大きな過ちを犯している。

 すなわち、尖閣諸島問題を例にあげると、安倍首相と自民党は尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲内であること(この点については米国政府も米議会も確認)を盾に取った上で、日本が米国との同盟を強めれば中国も尖閣への領土要求をあきらめ、同諸島の日本への帰属が国際的にも認知されるかのように思い、かつ国民に宣伝している。だが米国は、尖閣諸島への安保条約の適用についてはこれを確認しつつ、他方では、これら諸島の領土的帰属については中立の立場であると繰り返して強調してきている。つまり米国は、そうした領土問題は「当事国の間の協議で解決すべきもの」という立場であり、この問題で日本に肩入れをする意思は持たない。
 現実には、安倍首相が懸命に日米同盟の強化を叫んでも、尖閣諸島の領空あるいは防空識別圏に昨年12月13日以来中国の飛行機がたびたび飛来しており、新年の1月10日には戦闘機を含む中国空軍の航空機複数が防空識別圏に飛来、これに対して自衛隊の戦闘機が緊急発進しているありさまだ(朝日新聞デジタル、11日)。

 このような中国の態度と米国の立場を見れば、尖閣諸島をめぐる日中間の対立は、日中両国の対話で沈静化を図る(領土の帰属の解決の以前に)ほかはない。ところが、安倍政権はそうした外交的努力を全くしないで、すべてを米国頼みで解決しようという自主性の無さ(属国根性)を露呈している。
 そもそも安倍首相と自民党には、かつての米ソ冷戦の時代の「ソ連封じ込め政策」と同じように、中国を“封じ込む”ことが日本の対外戦略の基本であるべきで、米国も同様だと思い込んでいるフシがある。しかし今日の中国は、政治体制はとにかくとして、経済面では市場経済を採用し、世界第2位の経済大国に成長して、他の諸国にとっての(もちろん日本にとっては特に)巨大な市場となっている。だから、日本の対中政策の基本は、中国の限度を超える対外膨張には厳しく対処しつつ、日中間の政治的・経済的交流を可能な限り円滑にすることに置かなければならないはずだ。

 そうした点で、安倍自民党は日本の国益を損ねる考え方と動きをしていると言っても過言ではない。(終り)

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