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上記の標題は、4月18,19両日にワシントンで開かれたG20(主要20ヵ国)の財務相・中央銀行総裁会議の主要結論(日本にとっての)を伝えた読売新聞(20日夕刊)の1面トップの見出しである。このG20の結果を伝えた他の各紙の報道ぶりもほぼ同様で、“今回のG20で日本の政策は円安誘導のためだとの批判を受けるのではないか”という事前の危惧が一掃されたことへの安堵感が表れていた。
たしかに、G20に先立つ12日に米国財務省が議会に送った為替報告書で、「日銀の金融緩和策が円安・ドル高につながったことに関連し、『競争的な通貨切り下げを慎むよう引き続き迫っていく』と明記」(日経、13日夕刊、なお当「診断録」4月14日号参照)していたから、G20でも類似の批判を受けるのではないか、との危惧が政府・日銀などにあったのも当然である。結果的にこうした危惧は杞憂(きゆう)に終わった。
しかし、私たちはこうした「G20による日本への理解」の背景と、こうした公式発表の背後にある新興国の日本批判を視野に入れておく必要がある。
その点でまず承知しておくべきことは、今回のG20の主要課題が「世界経済の成長の支持と強化」にあった、ということである。G20のコミュニケはその本文冒頭(序文に相当する項目「1」に続く「2」において)で、「われわれは成長を高め、仕事(job)を創り出す決意を再確認した」と述べており、その理由として「世界の成長は引き続きあまりにも弱く、多くの国では失業があまりにも高い水準にとどまっている」という危機意識を述べている(G20 Information Centre )。
この点の危機意識は米国で極めて強く、ルー財務長官は19日に「世界経済の成長は低迷が続いており、失業率も依然として高すぎる。世界の需要拡大が不可欠であり、われわれの最優先課題だ」と述べている(ロイター、20日)。むしろ、米国のこうした問題意識がそのままG20のコミュニケに反映されたとも言えるだろう。
日本の政策については、以上のような文脈の下で、コミュニケの項目「4」において次のように言及されている。「われわれは、これまでにも進歩はみられたが、成長を強化し、持続的でバランスの取れたものにするためには、一層の行動が要求されることで合意した。いくつかの国は、前回の会合以降に、経済活動を促進するための措置(step)をとった。とくに日本の最近の政策行動はデフレーションを阻止し、国内需要を支援するためのものである」と。
すなわち、「各国はその成長を促進する緊急の必要がある」との問題意識の中で、日本の最近の政策の積極性が評価されたわけである。このような日本への言及は、「競争的な通貨切り下げの自制」など為替レート問題を扱った項目「6」においてではなかった。
しかし、そのコミュニケの項目「6」は、「長期にわたる金融緩和が意図せざるネガティブな副作用を生み出すことに留意するであろう」と締めくくっている。この留意事項は「韓国が新興市場の懸念に配慮するよう主張した」ことに配慮したものである(ロイター、20日)。またシルアノフ・ロシア財務相(G20議長)は、「日本の緩和策が及ぼす副作用への監視強化の必要性も合意内容に含まれた」と述べている(同上)。
こうした報道は、今回のG20における「日銀緩和への理解」が条件付きのものであることを示している。
この間の事情については、韓国では以下のように伝えられている(朝鮮日報日本語版Chosun Online、20日による)。すなわちG20では「日本の円安政策を黙認する先進国とそれを批判する新興国が対立した。韓国、中国、ブラジル、オーストラリアは日本が円相場を人為的に切り下げるアベノミクスを集中的に批判したが、米国や欧州連合(EU)など先進国は円安を容認する立場を取った」。
「ヒョン・オソク経済担当副首相兼企画財政部(省に相当)長官は、ブルームバーグ通信のインタビューや米財務長官、ロシア財務相、國際通貨基金(IMF)専務理事との会談で『日本の量的緩和は実体経済に与える影響が北朝鮮リスクより大きい。今回の会議で見直されるべきだ』と強調した。
「しかし欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のレーン委員(経済・通貨担当)は『日本の長期不況を考えると、攻撃的な円安政策を容認可能だ』と述べるなど、先進国はアベノミクスに理解を示している」。
以上のような情報を総合して考えると、日本の金融大緩和政策(それは明らかに円安をもたらした)は、世界経済の弱い成長についての先進国の危機意識の下で容認されたが、新興諸国からの「円切り下げ政策」との強い批判をまぬがれなかった、ということであろう。
私には、この「G20におけるアベノミクスの扱い」とともに、ここで「世界の成長は引き続きあまりにも弱い」(上記)と、世界経済の現状についての危機感が表明されたことに強い関心を持つ。
私がそうした関心を持たざるを得ない最近の現象としては、例えば金相場の急落がある。NY市場(NYMEX)における金先物価格は、4月9日の1586.7ドル(オンス)から、10日に27.9ドル、12日に63.5ドル、15日に140.3ドルと急落し(11日には6.1ドル戻しているが)、15日の終値1361.1ドルへ14.2%もの下落となった。
この急落について、「金価格のバブル崩壊は、債券や商品、株式の各市場に潜む巨大なリスクを警告している。それらの危険はまだ差し迫ったものではないが、まぎれもなく本物だ」との警告もある(ロイター、17日)。G20の政策責任者たちも、こうした現象も念頭に置いているのかも知れない。(終り)
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