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6月5日の東京株式市場の日経平均株価はまたまた518.89ポイント、3.83%の大幅安となった。この下げ幅は前々日6月3日の下げ512.72ポイントを上回り、5月23日の暴落(1143.28ポイント)、同30日の737.43ポイントの大幅安に次ぐ今年3番目の大きさである。
その結果、5日の終値13014.87ポイントは5月22日のピーク15627.26ポイントから2612.39ポイント、16.7%も下落したこととなる。また、この日の終値は4月5日の終値(12833.64)以来の安値である。すでに東京株式市場の包括的な株価指数であるTOPIXは6月3日の下げで、その4月5日(黒田日銀によるいわゆる異次元金融緩和が発表された翌日)以来の安値をつけていた(当「診断録」6月3日号参照)が、日経平均(N225)も2日遅れでこれと同様の水準に沈んだわけだ。
5日の東京株価大幅下落がとくに重要な意味を持つのは、この日の昼の講演で、安倍首相が“アベノミクスの3本の矢”と自称する政策パッケージの“第3弾”の「成長戦略」を、その最終決定(14日に閣議決定の予定)に先立ち自信満々発表したのだが、その直後に株価が急落したからである。
5日の市場が開く前には、市場関係者の間には株価の先行きについての大きな期待があった。すなわち、5月23日以降における株価の相次ぐ大幅下落の後を受け、「今後の市場にインパクトを与えそうなのが、本日に発表される政府の成長戦略第3弾です。これでアベノミクス3本目の矢のメニューは出そろい、その内容や実行の度合によっては市場は大きく動く可能性があります」(日経ビジネスオンラインメール、5日)として、親安倍色の強いマスコミも事実上この成長戦略が株価を反転させるのではとの期待を滲ませていたのだ。
その5日の日経平均の動きは、前日のNY株価が小幅に下げたことなどの影響で前場は34ポイント安で引けた。ところが、後場の開始(12時半)とほぼ平行して行われた安倍首相の成長戦略に関する講演(上記)を受けて、「相場は午後の開始直後に一気に跳ね上がり、上昇転換した日経平均の上げ幅は一時177円に達した」(Bloomberg、5日12時42分)のだった。
だが、こうした「上昇の勢いは続かなかった」。「しんきんアセットマネジメント投信の山下智巳主任ファンドマネジャーは、成長戦略は『法人税減税など踏み込んだ政策を期待していた投資家にとっては失望する内容だった可能性がある』と指摘」した(Bloomberg、5日13時52分)。
安倍首相は5日に述べたこの講演で、自らの成長戦略で「1人あたりの国民総所得を今後10年で150万円以上増やす」(日経その他、5日夕刊)と約束したが、安倍氏はそうした目標をかかげれば、国民はそれを信じるし、目標も達成されると思い込んでいるらしい。そうした目標をかかげることなら誰でもできるのに、だ。どうやら、同氏の政治家としての甘さは、前に首相だった時から変わっていないようだ。
5日の東京市場は、そうした首相の成長戦略の甘さに失望して、結局518ポイントという株価大幅安で反応したわけである。
なお、市場には5日の株価大幅下落について、「米国金融当局の量的緩和政策の縮小観測が引き続き重しとなる中、政府の成長戦略第3弾に対する失望も加わった」(Bloomberg、5日15時57分)ものとの見方があるが、そもそも米国や最近の日本の中央銀行が行っている異常な金融緩和は無限に続けられるものではなく、いずれはその縮小に向かわざるを得ないことは本来明白なことなのだ。もしそうした政策を無限に続ければ、やがて超インフレーションを招くことになるからである。
ところが安倍自民党や黒田日銀の中枢、そして株式市場はその点を理解できず、日銀のいわゆる異次元金融緩和も米国連邦準備制度(Fed)の量的金融緩和第3弾(QE3)も無限に続くような錯覚に依拠して来たから、QE3の縮小の可能性を示唆した最近のバーナンキ連邦準備制度理事会議長の発言に慌てているのである。
要するに、いわゆるアベノミクスもその先鋒を務める黒田日銀も、デフレ脱却のためには、本来は人口減対策を含む経済社会の土台からの着実で長期的な改革が必要であることを理解できずに、「2年以内に2%以上の物価上昇を実現する」と主張する超金融緩和策などにより、短期間にデフレを克服できるかのような、いわばデマゴギー的な政策を進めて来ているのである。したがって、それが次々と破綻していくことは避けられない。5月23日以降における株価の崩落は、そうした破綻の最初の重大な表れである。(終り)
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