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参院選に臨んで、安倍首相は自らの経済実績を前面に押し出して勝負しようとしている。例えば同首相は参院選公示後の第1声を福島であげたが、その際、自らの政策で「経済成長率はマイナスからプラスに変わった。民主党政権が3年間で出来なかったことを半年間でやった」と誇示した(讀賣、7月4日夕刊)。これはとんでもないウソであるが、民主党の海江田代表を始め、どの党の党首もこれを批判することがない(マスコミも同様)ので、簡単に事実を指摘しておく。
安倍首相が誇る成長率とは、2013年1〜3月期の実質経済成長率(関連データは内閣府公表資料による)が年率換算の前期比で4.1%だったことを指す。では、この直前、民主党政権下の2012年各四半期の成長率(年率換算、前期比)はどうであったかを見ると、1〜3月から10〜12月期まで各期順に、4.8%、−0.6%、−3.6%、1.2%で、2012年の年間では1.2%とプラスだった。
四半期ごとの成長率はいろいろ変動するもので、2012年の場合も7〜9月期は3.6%のマイナスだったが、1〜3月期は4.8%のプラスで、これは安倍首相が誇る今年1〜3月期の4.1%を上回っている。要するに、一つの四半期の結果だけでものを言うのは素人の感覚なのだ。
また、ほぼ民主党政権下の3年間に当たる2010年〜2012年の各年の年間実質成長率を見ると、4.7%(10年)、−0.6%(11年)、1.9%(12年)で、11年だけがマイナスであった。この一事を見ても、別に民主党をかばうつもりはないが(そしてデフレは克服できなかったが)、同党政権下では3年間マイナス成長であったかのように言う安倍首相の言がいかにインチキであるかがわかる。
しかも、2011年というのは3.11の大震災と福島原発事故があった年である。その影響で、実質成長率は11年1〜3月期には−6.9%という大きな落ち込みを余儀なくされたのである。その後の各四半期の実質成長率は、−1.2%(4〜6月)、7.1%(7〜9月)、−0.7%(10〜12月)と推移し、大震災と原発事故の影響による落ち込みを次第に回復した(10〜12月期は実質的には横ばい)が、1〜3月の落ち込みが極めて大きかったために、上述のように年間トータルでは−0.6%となったのだった。
要するに、民主党政権下でマイナス成長になったのは、大震災と原発事故があった2011年だけだったわけだ。安倍首相はそうした大震災の影響まで民主党政権の責任だと言っていることになる。
これは何を意味するか。実は安倍氏には、3.11がいかに大きな打撃を福島県など東北の各県をはじめとする日本国民と日本経済に与えたかが本当にはわかっていないのだ。彼は上述の福島での参院選第1声で「自民党は原発の安全神話に寄りかかり、原発政策を推進してきた。深刻に反省しなければならない。だからこそ、私たちには復興を加速させる大きな責任がある」(読売、同上)と言っているが、それは上辺(うわべ)だけのものに過ぎず、実は彼の心には当時の惨事の記憶などまったくないのだと言わざるを得ない。。
そもそも、「自民党は原発の安全神話に寄りかかり、原発政策を推進してきた。深刻に反省しなければならない」と言いながら、自民党と自らの今後の原発政策については一言も触れないで、一足飛びに「だからこそ、私たちには復興を加速させる大きな責任がある」と経済成長の話(自慢話)に持ち込んでいる(逃げている)のである。
そうしてみると、安倍首相が参院選の第1声の場として東北の宮城県、岩手県ではなく福島県を選んだのは、同県でのパフォーマンスで原発事故についての形だけの「反省」をしてみせて、それにより過去についての免罪符を購い、かつ将来についての白紙委任を買い取ったつもりなのであろう。
それにしても、各野党だけではなく、福島県民までがこうした安倍発言を黙過しているように見えることが私には理解できない。(終り)
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