|
米国の与野党の対立、その現れである上院と下院の対立のために、米国では10月1日に始まる新会計年度の予算は暫定予算さえも決まらず、その結果、予算ゼロで政府機関の一部が閉鎖を余儀なくされそうな状況だ。これまでも、米国のFed(連邦準備制度ー中央銀行)がその超金融緩和政策(その第3弾、QE3と略称)の縮小をいつ開始するかをめぐって、世界経済が振り回されてきたが、それに加えての財政の行き詰まりである。
こうした状況では、米国の政治と金融政策がハッキリするまでは、日本を含む世界の経済の行方は見通し難の状態が続くだろう。
このような米国の政治経済の不透明さの影響で、日本経済のある意味でシンボルである株価はほとんど方向感覚を失った感がある。
すなわち東京株式・日経平均株価は、黒田日銀の異次元金融緩和の限界が明らかになったために、5月22日に15,627.26のピーク(年初来の)をつけた後大幅に下落した。その後、株価は盛り返して7月18日には14,808.50まで戻したが、それ以来9月30日(この日の終値は14,455.80)まで、この水準をさえ(5月のピークどころか)抜くことが出来ないでいる。この間、今年第2四半期(4〜6月期)の実質経済成長率が上方修正されるなど、経済好転の情報がいくつか出たにもかかわらず、である。
こうして、異次元金融緩和を先陣とする「アベノミクス」でデフレから脱却するという、国内の構造要因や世界経済動向を度外視した経済政策の限界がいっそうハッキリした。加えて、安倍政権には、困難な状況に臨んで明確な経済政策をまとめて打ち出す能力が欠けていることがハッキリしてきた。
その象徴が、明年4月からの消費税率引き上げをめぐる政策の迷走ぶりである。ひたすら成長率を引き上げ、それを高く保ちたい安倍首相は、当初はこの消費税増税を先送るする腹であったが、財務省をはじめとする増税派の圧力に押され、加えて財政再建を進めるという国際公約にしばられて、結局増税実施に踏み切ったようだ(9月30日時点での状況)。ところが、現在の経済が好調に見えても、消費増税のデフレ効果が大きい、したがってそのデフレ効果を補う対策が必要だと説得されて、復興特別法人税の1年繰り上げての廃止など、法人税の軽減を中心とする減税策を導入する意向である(具体的には10月1日に安倍首相が発表するという)。
しかしそうした法人減税は、東日本大震災からの復興財源を奪う復興軽視政策であるとの批判や、大衆に対して増税して企業向けには減税という企業優遇の政策だとの批判があることを別としても(そうした批判は正当だが)、そうした減税の穴を埋める新たな財源探しが必要になるという“つぎはぎ”財政をもたらしている。
そのような思いつき且つ粗雑な財政政策をするのなら、スッキリと消費増税を先送りする方が理にかなっているし、国民の納得を得られる。加えて、消費増税の消費抑制効果を防ぐ景気効果と、円安による物価上昇の影響を考慮すると、増税がなくても、2013,14年度の税収が予想以上に増え、それが財政の好転に寄与することが見込める。
それにもかかわらず、安倍首相は10月1日に消費増税の方針とその考え方を発表すると伝えられるが、説得的なものが出て来るとは考えられない。結局、安倍首相は単純素朴なアベノミクスを理論的武器として経済対策をスタートしたが、國際経済問題を含む複雑な“応用問題”に直面すると、対処の明確な指針を失って右往左往し、各方面の主張のごった煮の政策に落ち着く結果に陥っている。
残念なのは、そうした政権のいい加減さを的確に批判し、それと対決する野党が存在しないことである。(終り)
(お知らせー9月4日号の再掲)私は家内ともども10月に老人ホームへ転居する予定であり、そのためにいろいろの準備を進める必要があるので(また体力的にも)、こんごは日常の仕事や勉強を減らすことが必要になってきた。そこで、これを機会に、私にとって最も時間と努力を要する当「診断録」を以後は不定期刊としたい。「診断録」はこれまでも厳密には定期刊行物ではなかったけれども、だいたいにおいて1週間以内の間隔で公表してきた。それを、こんごは重要な出来事や情勢の変化などがあった場合に限定して執筆・公開することにしたいのである。
その代りに、もう一つの私のブログ「文太郎の日記帳」(blogs.yahoo.co.jp/to1952dai/)に、随時、政治・経済・社会の諸問題についての簡単なコメントを加えるようにし、今後「診断録」に執筆・公表した時には、上記のブログやツイッター(BUNTARO TOMIZUKA@BTTOKYO)でその旨をお知らせしたい。
以上、是非ご了承下さるようお願いする。
|