文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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 日銀の黒田新総裁、岩田・中曾両副総裁が21日に就任の記者会見を行ったが、黒田総裁は現実における資産バブルの兆候を無視して「物価の番人」(資産価格も広義の物価である)としての中央銀行の総裁にはふさわしくない人物であることを露呈した。また中曾副総裁はデフレの原因を「慢性的な需要不足」などに見出しているのに対し、岩田副総裁は「デフレは貨幣的な現象」(おそらく黒田総裁もこれと同意見と思われる)と述べて需要不足説を否定し、日銀トップ三役間の意見の相違が明白になった。おそらく中曾副総裁(前日銀理事)は日銀の事務当局の意見を代表している(白川前総裁も同意見)ものと思われるので、こんご日銀のトップと事務当局との矛盾も表れるものと予想される。

 黒田総裁は記者団の「物価目標を達成する前に資産バブルになった場合どうするのか」との質問に対し、「いま日本の資産市場に大きなバブルが生じる懸念があるとは考えていない」と答えている(日経22日5面所載の「日銀正副総裁の就任会見要旨」)。
 ところが、安倍政権の発足とともに株価が急上昇していることは今さら言うまでもないことであるし、国土交通省21日発表による公示地価を見ても、「デフレ脱却の期待から不動産に資金が流入しており、地価の潮目は変わりつつある」(日経、22日1面)。株式と不動産は金融緩和の下で最も早くかつ速くその価格が上昇する資産である。なぜなら、金融緩和まして超緩和の下での超低金利と資金の借りやすさは、そうした資金を借り入れて、それで値上がり可能性のある資産(元手を割込む可能性もあるという意味でリスク資産と呼ばれる)への投資(多くは事実上の投機)を刺激するからである。

 土地・家屋の売買価格は消費者物価指数(CPI)には含まれないが、その値上がりはこんごに住宅用不動産購入を計画している一般国民には大きな打撃となる(今すぐ購入を考えている人には安い金利はローンを組む上で有利だが)し、不動産価格の上昇による家賃などの上昇は直接にCPIを上昇させ、現在の国民生活への圧迫材料となる。
 金融超緩和期待の下で進んでいる円安は、外国人による日本の不動産への購入を刺激・促進している。「アジアの富裕層に都心の高級マンションを買う動きが広がっている。台湾の不動産仲介大手、真義房屋仲介は今年の日本での仲介件数を『前年比5割増える』(日本法人)と見込む」(日経、22日3面)。

 外国人による日本のリスク資産の購入は、外貨を円に転換しての購入なら円相場の上昇(円高)に作用するが、その外国人(多くは大手法人)が日本で金利が安い円資金を借り入れてそうした資産を購入すれば、それは円高要因にはならない。その上、そのような外国の資金は、日本での不動産投資(投機)で得た利益(借り入れを返済した後の、円での)を自国通貨に戻す際のリスク(円安・外貨高がさらに進んでいる可能性)を避けるために、円資金を借りると同時に先物で円を売っておく(現在の円直物相場に近い相場で)。そうした動きは、円の先物相場を下げ、そのことが直物の円安を導くことになる。 こうして、金融超緩和は安い円資金を借りてのリスク資産への投機(円キャリー取引と呼ばれる)を通じても円安を促進する(日本人あるいは外国人が安い円資金を借りてそれで外国の高金利資産あるいはリスク資産へ投資する円キャリー取引の場合も、円の外貨への転換で円安が進む)。
 そして、円安の進行がその一面で輸入物価の上昇を通じて消費者物価を上昇させ、国民生活を直撃することは言うまでもない。

 黒田新日銀総裁は、現実に始まっている初期の資産インフレとその資産バブルへの発展の可能性及びその国民生活への影響に目をつぶっているわけだ。同総裁は長年アジア開発銀行の総裁として、例えば中国人民銀行(中央銀行)が近年における自国の資産バブルにどう苦慮し、対処したかを見てきたはずだが、そうして経験は生かされていないようだ。
 また同総裁は、国際金融分野専門の財務省官僚として、2000年代(リーマンショック前のバブル時代)の円キャリー取引を経験ないし身近に目撃してきたはずなのに、そうした経験も生かされていないようだ。

 日銀のトップ三役間の考え方の違い・矛盾も重要だ。現代日本のデフレの原因については、なによりも長期にわたる需要不足の存在とその影響が重要であることは当「診断録」(3月14日号)でも指摘したが、岩田新副総裁は21日の記者会見でそのことを無視して「デフレは貨幣的な現象」という持論を展開した(上述)。
 対して中曾新副総裁は「デフレの原因をどう考えるか」との記者団の質問に次のように答えた。「慢性的な需要不足や、リーマン・ショック後の景気落ち込みが原因。人口減少など構造要因も加わった。日本経済の競争力や成長力強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展が必要だ」と(日経、上記)。これは妥当な認識であり、日銀の金融緩和政策だけではデフレは克服できないことと、デフレ克服のためには日銀以外の「幅広い主体」(すなわち政府及びそのほかの)の適切な政策が必要だと指摘したのである。

 白川前日銀総裁もその退任記者会見(3月20日)において、「デフレの原因」についての記者団の質問に対し次のように答えている。「現在、日本では、急速な高齢化やグローバル化に伴って経済の仕組みを見直していくことが遅れがちとなっており、そのことが成長力を下げています」と指摘し、デフレ克服には「競争力・成長力の強化に向けた幅広い主体による取り組みが不可欠です」と(日銀ホームページ)。白川・中曾両氏の説明が語句まで一致していることは、この両者の見解が日銀全体の主流のそれであることを明白に物語っている。
 したがって、黒田総裁が日銀を自己の指導下に全面的に置くことは容易ではなく、そこになんらかの亀裂・支障が出る可能性がある。

 安倍政権の当局者やいわゆるアベノミクスの信奉者は、円相場、株式相場の動向をすべてアベノミクスの成果だと自認・自讃しているが、これらの相場の動きが国際経済情勢の影響を大きく受けていることを無視しがちである。しかし、日本の株式相場の急上昇も、円安の影響は大きいが、米国景気の上向き、中国経済の底入れなどの外部経済環境の好転、及びそれらを背景とした主要国株式相場の上昇の影響をも強く受けてきているのである。
 現に、ユーロ圏からの救済資金受領の条件として、ユーロ採用国のキプロスが銀行預金に対する課税を義務づけられたことが原因で、これに対するキプロスでの反対運動が激化、その影響でユーロ相場が下落したために、東京株式市場での日経平均株価は18日に340.32の大幅下落を記録したし、22日にも同じ問題で13時30分時点で184.54ポイントの下落となっている。これを見ても、日本の株価が依然として(“アベノミクス”の影響だけではなく)海外経済情勢によっても強く影響される現実を見せつけた。 
 最近の円安にしても、米国経済の立ち直りの兆しによるドル高の反映としての面も強い。

 安倍政権は、最近の経済動向におけるこのような海外要因を無視ないし軽視してきているのであり、そうした点にも現政府の脱デフレ戦略の危うさが見られる。(終り)

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