文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

一層の円安促進は危険

 安倍政権の脱デフレ政策の影響で円安と株高が進行してきたが、この先も円安が進んで、そのことがデフレ脱却を促進するのだろうか?政府が日銀の新総裁として金融緩和積極論者の黒田東彦アジア開銀総裁を国会に提示したことも、日銀の一層の金融緩和への期待とともに、市場とくに株式市場におけるさらなる円安への期待を強めているようだ。 
 しかしドル/円相場は、おおむね昨年9月中・下旬における1ドル=77円台を円のピーク(ドルの底値)として急速に下落したあと、今年2月5日以降における1ドル=93円台で底打ち(ドルの頭打ち)の様相を呈しているように見える。政策面から見ると、これまでの過度の円高の修正は望ましいことだったが、今後における円安の一層の進行、あるいは促進は望ましいことではない。なぜなら、円安はすでに輸入物価(円建て)の上昇から各種輸入物資の顕著な値上がりをもたらしているからだ。また円安の一層の進行は、積極的な“円からの逃避”と、その影響による国債利回りの上昇・長期金利の上昇をもたらす可能性を強める。

 輸入物価は今年1月に前年同月比で10.8%、前月比で5.2%上昇、昨年12月の2.9%上昇から一段と上向きの傾向を強めている(日経、2月28日。以下の輸入価格上昇の国内各種価格への影響も同紙による)。
 輸入品のうちLNG(液化天然ガス)、原油、石炭の価格上昇で、電力10社と都市ガス大手4社は、原燃料価格の変動を料金に反映させる原燃料費調整(燃調)制度にもとづき、4月の料金を引き上げる。また原油価格の上昇により、レギュラー・ガソリンの店頭価格は2月25日時点で12週連続の上昇となった。 
 原料のナフサ価格の上昇で合繊や石化製品の価格も上昇、東レは3月出荷分からポリエステル繊維やナイロン繊維の国内卸売価格を約10%引き上げる方針。またレジ袋や容器に使うポリエチレン樹脂では日本ポリエチレンが3月納入分で6%前後の値上げを表明した。

 鉄鋼原料の鉄鉱石や石炭の輸入価格も円安及び中国の需要増で上昇、その影響でJEEスチールは薄鋼板価格を4月出荷分からトンあたり1万2000円、新日鐵住金は建材用薄鋼板を4月出荷分から12〜18%それぞれ値上げする。
 紙製品(パルプが原料)では、日本製紙クレシアが4月出荷分からトイレット紙やティッシュ紙など家庭用紙の出荷価格を15%以上値上げする。この結果、「ティッシュの小売価格は5箱1パック198円の商品で約230円になる」(日本製紙クレシアの話)という。
 穀物では農林水産省が製粉会社に対する輸入小麦の売り渡し価格を4月から平均9.7%引き上げる。 

 以上のような輸入関連商品の値上げが4月以降に集中しており、その頃に消費者物価が上昇を示す公算が大きい。
 ただし、こうした円安の影響による輸入関連商品の価格上昇が末端小売価格(消費者価格)の上昇へ波及するかどうかについては否定的な見方がある。上記日経紙などはその点についての代表例だ。すなわち、「輸入原材料や食料価格の上昇が最終製品など川上まで浸透すれば、消費者物価も上がってデフレ脱却に近づく。ただ企業が最終製品を値上げできるかどうかは家計の懐次第。少なくとも所得が増えるとの期待が高まらなければ、消費増→企業の収益増→賃金増→消費増という好循環は生まれない」と述べている。
 しかし、こうした見方は、そもそも消費者物価さえ上がればデフレ脱却だと考える短絡的なもので、デフレはそもそも長期にわたる需要不足によるものだということを理解していないと同時に、逆に、さし当たっての物価上昇の可能性を過小評価したものである。

このような理解は実は安倍政権の理解の仕方そのものなのだ。すなわち、賃金上昇で国民の所得が増えれば消費者物価が上がって“デフレから脱却できる”との考えから、安倍首相は2月中旬に経済3団体に賃上げ要請をしたのを手始めに、山口公明党代表が同19日に、麻生財務相が3月1日にそれぞれ経団連の米倉会長等と会談し、「経済の成長は政府・日銀だけの話ではない。労働分配率を考えてもらわないと消費は絶対に伸びない」(麻生氏)と財界首脳にはっぱをかけた(msn産経ニュース、3月1日)。
 だが、財界首脳が賃上げの旗を振ったと仮定しても、それで傘下の日本企業が賃上げに動くようなことはあり得ない。そもそも経済団体トップは、トップと言っても、官僚に命令を下す官庁トップや政府首脳とは全く違う存在なのだが、安倍政権首脳はそうした初歩的なこともわかっていないらしい。それに、個々の企業は、需要の増加とそれによる事業の拡大・好転が見込めない限り、賃金引き上げを進んで実行することなどあり得ないのだ。

 現に、ロイターが2月1日から18日までに大企業と中堅企業400社を対象とした調査の結果(回答は250社)によると、政府の要請に応じて賃金上昇に「前向きになれる」 と回答した企業は11%に過ぎず、89%(製造業では93%、非製造業では85%)の企業が「前向きになれない」と回答した(ロイター、2月20日)。
 「前向きになれない」理由として企業があげたのは、▽「前向きになれる経営状態ではない」(鉄鋼)、▽「グローバルに見た時、日本の人件費は割高」(電機)、▽「海外企業との競争が厳しい」(輸送用機器)、▽「右肩上がりの好景気に自信が持てるまで、賃金引き上げは出来ない」(精密機械)、「賃金上昇分を価格転嫁するのは容易ではない」(サービス)といった考え方が根強い(同上)。
 要するに、企業は円安・株高で当面の企業利益が増えても、それで日本経済の基本条件が変わったとも、デフレ=(長期の)需要不足が克服されそうだとも考えていないのだ。 

 企業は設備投資についても積極的な方針に転じたとは言えず、上記ロイター調査によると、「積極化に転じた」と回答した企業は24%にとどまっている。
 設備投資を積極化しないと答えた企業は、その理由として、▽「株高・円安は上滑りで実体経済の裏付けがない」(金属・機械)、▽「実体がない政策による景気対策であるため」(卸売)など、「安倍政権の政策への疑問がある」(ロイター)ほか、▽「既に生産基地の主力は海外に移ってしまった」(電機)、▽「国内需要は頭打ちで現状設備投資は必要ない」(その他製造)、▽「国内は代替投資のみ」(運輸)などをあげており、「空洞化による国内投資減退の流れは止まりそうにない」(同)。
 要するに安倍式デフレ脱却策は、企業に長期成長の確信を与えていないのだ。

 長期展望の問題はとにかく、企業が政府の呼びかけに応じて自発的に賃上げを実施して、輸入価格の上昇分を末端価格に転嫁しやすい条件を用意するというようなことはないのだ。
 しかしながら、当面のこととしては、私は消費者物価は間もなく上昇する公算が大きいと予想する。それは、拡張的財政政策(2012年度補正予算及び13年度予算)による景気刺激で、当面の(短期間の)景気上昇が強められて少なくとも雇用増と所定外賃金の増加をもたらし、そのことが商品・サービスの末端価格の引き上げを容易にすると見るからである。その上、金融の超緩和による「過剰流動性」(金融部門におけるいわゆるマネーの過剰)が不動産や資源商品・貴金属などの投機的価格上昇をもたらすだろうことも、側面から消費者物価の上昇を促進すると思われる。
 (もし、こうした物価上昇も困難であれば、そのことは企業利益を圧迫して、景気を腰折れさせるだろう)。

 このように円安の下での物価上昇が進めば、「購買力」としての円の通貨価値の低下が明確になって、円からの資金の逃避による“悪い円安”が始まる可能性がある。景気上昇による輸入の増加、それによる経常収支の悪化もそうした傾向を強め得る。そうなれば、日本の国債も「安全資産」としての評価を失い、相場の下落すなわち利回りの上昇に見舞われるだろう。それは、財政危機の表面化をも意味するだろう。

 そのような危機を避けるためには、むやみな金融緩和とそれによる無原則な円安の追求を止めなければならない。しかし、黒田新日銀総裁の任命と、その下での超金融緩和、及びさらなる円安を実現しようとしている安倍政権の施策では、事前に上述のような危機を避けるようとするのではなく、危機を招いた後でハード・ランディング型の対処を余儀なくされる公算が大きいと思われる。(終り)   

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事