文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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 本題に入る前に、28日の東京株式市場で日経平均株価がまた203.91ポイント、1.51%急落したことに一言触れておきたい。この日の株価下落の主因は、シリア情勢の緊迫化と、それを理由とするNY株価(27日)の下落だが、このことは安倍首相・黒田日銀総裁主導の「異次元金融緩和」による株価押し上げ効果がすでに遠い昔の物語となってしまったことをあらためて示している。
 そもそも、国際的条件と国内の需要不足状態を度外視して、もっぱら金融市場へのマネー供給量を増やすことでデフレを克服できるという理論がお粗末だったのである。

 それはとにかくとして、「政府は、消費税率を法律に従って来年4月に引き上げるべきか、安倍総理大臣の判断の参考にするため、財界や労働界など有識者60人から意見を聞く「集中点検会合」を26日スタートさせ、有識者らは引き上げへの賛否などを表明」した(NHKニュース、26日、ほか)。この会合は今月31日まで6日間連日開かれ、そのあと甘利経済再生担当相が来月3日にも会合の結果を報告書として安倍首相に提出することになっている。
 首相はこの報告書に加え、来月9日に発表される今年4〜6月のGDP(国内総生産)改定値などの経済指標を踏まえて、10月上旬頃までに消費税率を引き上げるかどうか最終判断をするものと見られている(同上)。

 この会合の模様はこのところ連日マスコミで報じられている(とくにNHKは熱心に)が、まことにバカバカしい会合だ。
 そもそもこの会合は、なんらかの結論を導き出すものではない。各出席者が自分の意見を言いっ放しにするだけであり、しかも大部分の出席者の意見はすでによく知られている。だから、この会合は、単に「有識者」60人のいわば意見公示会に過ぎない。はじめから、安倍首相はこの会合からなんらかのまとまった「結論」を得ようとは考えていないのだ。

 それに、この有識者の意見発表は安倍首相の「判断の参考」とするためのものであるのに、肝腎の首相はこの会合には出席していないのである。26日の初日の会合では麻生副総理兼財政相が会合の趣旨を述べているのであり、いわば「主不在(ぬしふざい)の会合」となっている。
 当の安倍首相は24日から29日まで、バーレーン、クゥエート、カタールの中東3ヵ国と東アフリカのジブチを訪問中である。つまり首相は、この消費税率引き上げに関する「集中点検会合」のほとんど全期間に外遊中なのだ。もし首相が、本当に真剣に有識者の意見を聞こうというのであれば、この外遊から帰国した後に「点検会合」を開くべきだったのだ。

 以上の事実は、安倍首相は実はすでに消費税引き上げの可否に関してすでにおよその結論を持って居り、「集中点検会合」なるものは、単に首相が各方面の意見をよく聞いて結論を下したという形を作るためのパフォーマンスに過ぎない。よくても、首相はこの会合で述べられた意見の中から、自らの結論に都合がいいものを利用しようとするのであろう。
 では、安倍首相が持っている結論は、法律(「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」、以下では消費増税法と略称することがある)で定められた通りに消費税引き上げを実行することなのか、あるいは、この法律の「付則18条」で述べられている事項(経済状況等の総合的勘案)を根拠に、「その施行の停止」を含む「所要の措置」を講じようとしているのか。私は安倍首相は「施行の延期」を軸に、引き上げの「代案」の各種バリエーション(毎年1%ずつで計5%引き上げの案を含む)を考えていると見る。

 もし、安倍首相が法律通りに消費増税を実施するつもりならば、なにもあらためて有識者に「引き上げの可否」を問う必要はない。その場合にもし有識者の意見を聞くのであれば、消費税を引き上げた場合のその経済への影響と、それへの対策(それが必要だと判断する場合には)について聞けばよいのである。
 この消費増税法は、その制定当時(2012年8月10日)の「経済状況を好転させることを条件として実施する」ことになっているが、安倍首相は“アベノミクスによって日本経済は劇的に好転した”としばしば自己宣伝してきているのであるから、本当にその点に自信があるのなら、いまさら消費増税実施を逡巡する理由はないはずだ。

 ところが、首相は実は日本経済の好転について確信を持っていないのだと私は推察する。そのことは、自ら推進した円安をテコとした株高が5月22日の日経平均15627.26をピークに下落傾向をたどっていること(8月28日の終値は1338.46)、今年第2四半期(4〜6月)の実質GDP成長率が第1四半期のそれより目立って鈍化し、かつ民間の予測値をも大きく下回ったこと(当「診断録」8月12日号参照)、7月の輸出額(季節調整値)が8ヵ月ぶりに減少したこと(同上8月22日号)などに首相が衝撃を受けたためだと推測できる。
 こうした期待外れの経済データを前に、安倍首相は法律通りに消費増税を実施する自信を無くしたと私は推測する。だからこそ、この増税の実施を宣明することを避け、その実施の可否について“未決定”という態度を表明してきているのだろう。

 したがって、安倍氏の本心は増税を回避(停止あるいは延期)したいのだが、それを上記のようなことを根拠に決めると、アベノミクスの“成果”を自ら否定することになるので、それは避け、“有識者の有力意見”を根拠にして増税見送りを決める形をとりたいのだと思う。併せて、増税延期が“安倍政権は財政再建軽視”という批判を招くことにどう対処するかについて、智恵を得たいのではないか。
 現に、安倍首相の最有力ブレーンである浜田エール大名誉教授と本田静岡県立大教授(両者とも内閣官房参与)は、景気の実勢はそれほど強くないとして、2013年4月の消費増税実施の見送り、ないし毎年1%(5年間)の引き上げ案を強く主張しているのは周知の事実だ。もし首相が増税実施に踏み切れば、そのことは最有力ブレーンと袂(たもと)を分かつことになる。安倍氏にその勇気と確信はあるまい。
 加えて、増税の延期、停止、小幅化は首相と政権への一般国民の支持を高めると首相は読んでいるのではないか。

 上記のような要因を根拠として、安倍首相は法律上で来年4月に予定されている消費増税を見送るか、毎年1%増税の案(あるいはその変種)への変更を決めると思われる(ただし後者の案の場合には新しい法律の制定が必要となる)。
 万一、安倍首相が増税実施に踏み切ることがあれば、そして2013年度中に補正予算を追加しなければ、14年度の実質経済成長率は0.2%程度(13年度は2.7%程度)に急落すると民間調査機関は予測している(日本経済研究センター愛宕伸康主任研究員。JCERアングル月曜10時便、8月19日、による)。そうなれば、自民党内から安倍降ろしの気運が高まり、政権基盤が一挙に揺らぐことにもなるだろう。(終り)

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