文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

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2013年08月

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 本題に入る前に、28日の東京株式市場で日経平均株価がまた203.91ポイント、1.51%急落したことに一言触れておきたい。この日の株価下落の主因は、シリア情勢の緊迫化と、それを理由とするNY株価(27日)の下落だが、このことは安倍首相・黒田日銀総裁主導の「異次元金融緩和」による株価押し上げ効果がすでに遠い昔の物語となってしまったことをあらためて示している。
 そもそも、国際的条件と国内の需要不足状態を度外視して、もっぱら金融市場へのマネー供給量を増やすことでデフレを克服できるという理論がお粗末だったのである。

 それはとにかくとして、「政府は、消費税率を法律に従って来年4月に引き上げるべきか、安倍総理大臣の判断の参考にするため、財界や労働界など有識者60人から意見を聞く「集中点検会合」を26日スタートさせ、有識者らは引き上げへの賛否などを表明」した(NHKニュース、26日、ほか)。この会合は今月31日まで6日間連日開かれ、そのあと甘利経済再生担当相が来月3日にも会合の結果を報告書として安倍首相に提出することになっている。
 首相はこの報告書に加え、来月9日に発表される今年4〜6月のGDP(国内総生産)改定値などの経済指標を踏まえて、10月上旬頃までに消費税率を引き上げるかどうか最終判断をするものと見られている(同上)。

 この会合の模様はこのところ連日マスコミで報じられている(とくにNHKは熱心に)が、まことにバカバカしい会合だ。
 そもそもこの会合は、なんらかの結論を導き出すものではない。各出席者が自分の意見を言いっ放しにするだけであり、しかも大部分の出席者の意見はすでによく知られている。だから、この会合は、単に「有識者」60人のいわば意見公示会に過ぎない。はじめから、安倍首相はこの会合からなんらかのまとまった「結論」を得ようとは考えていないのだ。

 それに、この有識者の意見発表は安倍首相の「判断の参考」とするためのものであるのに、肝腎の首相はこの会合には出席していないのである。26日の初日の会合では麻生副総理兼財政相が会合の趣旨を述べているのであり、いわば「主不在(ぬしふざい)の会合」となっている。
 当の安倍首相は24日から29日まで、バーレーン、クゥエート、カタールの中東3ヵ国と東アフリカのジブチを訪問中である。つまり首相は、この消費税率引き上げに関する「集中点検会合」のほとんど全期間に外遊中なのだ。もし首相が、本当に真剣に有識者の意見を聞こうというのであれば、この外遊から帰国した後に「点検会合」を開くべきだったのだ。

 以上の事実は、安倍首相は実はすでに消費税引き上げの可否に関してすでにおよその結論を持って居り、「集中点検会合」なるものは、単に首相が各方面の意見をよく聞いて結論を下したという形を作るためのパフォーマンスに過ぎない。よくても、首相はこの会合で述べられた意見の中から、自らの結論に都合がいいものを利用しようとするのであろう。
 では、安倍首相が持っている結論は、法律(「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」、以下では消費増税法と略称することがある)で定められた通りに消費税引き上げを実行することなのか、あるいは、この法律の「付則18条」で述べられている事項(経済状況等の総合的勘案)を根拠に、「その施行の停止」を含む「所要の措置」を講じようとしているのか。私は安倍首相は「施行の延期」を軸に、引き上げの「代案」の各種バリエーション(毎年1%ずつで計5%引き上げの案を含む)を考えていると見る。

 もし、安倍首相が法律通りに消費増税を実施するつもりならば、なにもあらためて有識者に「引き上げの可否」を問う必要はない。その場合にもし有識者の意見を聞くのであれば、消費税を引き上げた場合のその経済への影響と、それへの対策(それが必要だと判断する場合には)について聞けばよいのである。
 この消費増税法は、その制定当時(2012年8月10日)の「経済状況を好転させることを条件として実施する」ことになっているが、安倍首相は“アベノミクスによって日本経済は劇的に好転した”としばしば自己宣伝してきているのであるから、本当にその点に自信があるのなら、いまさら消費増税実施を逡巡する理由はないはずだ。

 ところが、首相は実は日本経済の好転について確信を持っていないのだと私は推察する。そのことは、自ら推進した円安をテコとした株高が5月22日の日経平均15627.26をピークに下落傾向をたどっていること(8月28日の終値は1338.46)、今年第2四半期(4〜6月)の実質GDP成長率が第1四半期のそれより目立って鈍化し、かつ民間の予測値をも大きく下回ったこと(当「診断録」8月12日号参照)、7月の輸出額(季節調整値)が8ヵ月ぶりに減少したこと(同上8月22日号)などに首相が衝撃を受けたためだと推測できる。
 こうした期待外れの経済データを前に、安倍首相は法律通りに消費増税を実施する自信を無くしたと私は推測する。だからこそ、この増税の実施を宣明することを避け、その実施の可否について“未決定”という態度を表明してきているのだろう。

 したがって、安倍氏の本心は増税を回避(停止あるいは延期)したいのだが、それを上記のようなことを根拠に決めると、アベノミクスの“成果”を自ら否定することになるので、それは避け、“有識者の有力意見”を根拠にして増税見送りを決める形をとりたいのだと思う。併せて、増税延期が“安倍政権は財政再建軽視”という批判を招くことにどう対処するかについて、智恵を得たいのではないか。
 現に、安倍首相の最有力ブレーンである浜田エール大名誉教授と本田静岡県立大教授(両者とも内閣官房参与)は、景気の実勢はそれほど強くないとして、2013年4月の消費増税実施の見送り、ないし毎年1%(5年間)の引き上げ案を強く主張しているのは周知の事実だ。もし首相が増税実施に踏み切れば、そのことは最有力ブレーンと袂(たもと)を分かつことになる。安倍氏にその勇気と確信はあるまい。
 加えて、増税の延期、停止、小幅化は首相と政権への一般国民の支持を高めると首相は読んでいるのではないか。

 上記のような要因を根拠として、安倍首相は法律上で来年4月に予定されている消費増税を見送るか、毎年1%増税の案(あるいはその変種)への変更を決めると思われる(ただし後者の案の場合には新しい法律の制定が必要となる)。
 万一、安倍首相が増税実施に踏み切ることがあれば、そして2013年度中に補正予算を追加しなければ、14年度の実質経済成長率は0.2%程度(13年度は2.7%程度)に急落すると民間調査機関は予測している(日本経済研究センター愛宕伸康主任研究員。JCERアングル月曜10時便、8月19日、による)。そうなれば、自民党内から安倍降ろしの気運が高まり、政権基盤が一挙に揺らぐことにもなるだろう。(終り)

ダウ6日続落で15000割れ

 NY株式ダウ平均株価は、8月21日(水)も105.44ポイント下落し、これで14日(水)以来6日連続の下落(合計下落幅は553.46ポイント、下落率は3.58%)となり、ダウは7月3日以来の15000割れとなった(この事実を内外のマスコミは大きくは取り上げていない)。8月21日の終値14897.55は6月25日(14760.31)以来の安値である。

 
 21日の市場がもっとも注目したのは、当日公表されたFed(連邦準備制度《中央銀行》)の7月30〜31日のFOMC(公開市場委員会《Fedの政策決定機関》)の議事録で、そこからFedの量的金融緩和政策第3弾(QE3)縮小のタイミングについて具体的な手がかりを得られないか、と期待したのだった。だが、議事録では「『ほぼすべての参加者』が年内の債券購入ペース縮小を『おおむね支持』したと記され」(Bloomberg、21日)たが、「その縮小のタイミングについては一致しなかった」(NYTimes電子版、21日)ことも明らかになった。
 しかし、6月の同委員会ではQE3の継続が決められただけであったことと比べて、7月の委員会では大勢が「Fedによる巨額の経済刺激策を縮小する方向に近づいた」(edging closer)」(NYTimes同上)ことはたしかなようだ。

 それでも、7月のFOMC議事録からは、「経済の基礎的な強さについての大きな疑問が残っていること」、したがって「政策のいかなる変更も、FOMCの次回の会合(9月17〜8日)までに明らかになる経済データいかんにかかっていることも明らか」である 。「いく人かの委員会メンバーは、住宅市場と自動車販売には好転が見られるが、経済成長が近いうちに高まる可能性については6月の委員会当時よりは懐疑的になっている」という(同上)。

 NY市場の株価がこのところ下げているのは、市場には、QE3という超金融緩和が縮小された場合の、リスク資産市場へ加わるその下方圧力に対する警戒とともに、現実における景気の強さに対する疑問とが併存しているからではないかと思われる。こういう状況では、QE3縮小でも、景気悪化によるその延期でも、その“どちらに転んでも”市場にはいいことではない、ということになるわけだろう。
 21日の市場では、QE3の縮小を見越して、株価の下落とともに、「10年もの米国債の利回りが2.89%に上昇し、ドル相場の指数(諸通貨のバスケットに対する)は0.5%上昇した」(Financial Times電子版、21日)。米国においてのみならず、世界的にも「株価指数は下落し、債券利回りは上昇している。そして最近のインドなどの新興国市場は混乱に陥っている。インド・ルピーの相場は(資金の流出でー引用者の加筆)水曜日(21日)にはドルに対して最低に陥った…」(Financial Times、同上)。

 片やQE3縮小の可能性、他方では米国や新興国などの景気の不透明さは、いろいろの面で日本経済にも影響を与えている。
 QE3の縮小見通しによる米金利高・ドル高が,日本の株価に影響を与えるとともに円相場の上昇を抑えていることは周知の事実だが、日本の輸出の伸びが7月には止まったことは注意されていない。すなわち、19日(月)に発表された7月の貿易統計(財務省)によると、輸出は対前年同月比で12.2%の増加で5ヵ月連続の増加、数量ベース(価格の影響を除いた)でも1.8%増と「14ヵ月ぶりに前年を上回った」(日経、19日夕刊ほか)。ところが季節変動(及び取引日数の差)を調整した額(同じく財務省)によると、7月の輸出は5兆7816.79億円で6月の5兆8862.13億円から減少、2012年12月以来7ヵ月続いていた輸出の増加が止まった。

 さすがにFinancial Times (電子版、19日)はこの事実(季節調整値で見た輸出の推移)を見逃さず、「日本の輸出はこの8ヶ月間で始めて7月に減少した。これは、円安による輸出の押し上げ効果が、米国やアジアといった主要市場(key markets)における需要の沈滞によって相殺されたからだ」と報じた。ただし、同紙が指摘している米国での需要沈滞の影響の根拠については明らかでない。
 このFinancial Timesはさらに、「この憂鬱な数字は、先日発表された期待を下回るGDP(4〜6月のー加筆)の数値とともに、安倍氏が増税計画を修正するとの期待を高めるだろう」と述べているが、これも的確な指摘と言えるだろう(当「診断録」8月12日号参照)。

 とにかく、世界市場が米国中央銀行の超緩和的金融政策及び米国景気の行方に振り回される状況はまだ当分続きそうだ。(終り)

NY株価下方屈折の意味

 NY株価のダウ平均株価は8月16日(金)に終る1週間に344.01ポイント、2.2%下落したが、この週間下落率は6月以来(後述)の大幅なものであった。ダウ平均の直近のピークは8月2日(金)の15658.36で、その翌営業日の5日(月)から16日までの11営業日の内、実に8営業日にダウ株価は下落している。この間の差し引きのダウ株価下落は576.89ポイント、3.7%に達する。
 こうしたNY株価の推移をグラフに描くとはっきりするが、ダウ平均は2012年11月15日の12542.38を底値として上昇トレンドをたどってきたのだが、13年8月2日を分岐点として下方に屈折した可能性が濃厚だ。この12年第3四半期からの株価の上昇トレンドは、Fed(米連邦準備制度)が同年9月に実施を決定した量的金融緩和策の第3弾(QE3)にほぼ照応するものであったと言えるだろう(注)。

 (注)QE3は当初(9月から)はFedが月額400億ドルの住宅ローン担保証券(MBS)を買い取るというものであったが、12年12月には米長期国債も月額450億ドル買い取ることを追加決定した(買い取り額合計は月間850億ドルに)。

 そのQE3の縮小の方針をバーナンキFed議長が明らかにして市場にショックを与えたのが今年6月19日の記者会見においてだった。その影響で、ダウ平均株価は同19日に206.4ポイント、20日に353.87ポイント、合計で559.91ポイント、3.7%の大幅安を演じたのだった(この下落直前、同18日のダウ平均は15318.23)。
 6月の後のNY株価は、単純化して言えば、QE3の実施見通しが遠のいたといっては上げ、やはり9月には実施されそうだと言っては下げるような状況だった。しかし、QE3を縮小するFedの方針の前提が米国景気上昇の確認(その指標が失業率7%)とされていたので、景気上昇が確実になれば、QE3が縮小されても景気が腰折れすることはないとの楽観論も台頭した。そして、実際に景気好転を示唆する景気指標もそれなりに明らかになったこともあって、NY株価は8月はじめまでは上げてきたのである。

 だが、先週末の株価の下落は、消費者信頼感指数(ロイターとミシガン大学の調査)が7月の85.1から8月の80.0に急落したことの影響が大きかった。これに照応するように、百貨店チェーンのノードストロームの第2四半期(8月3日までの3ヶ月間)の売上高増加がアナリストの予想を大きく下回って、同社の株価が16日に4.9%下落したほか、「ウォルマートやギャップ、メーシーズからマクドナルドなど、中産階級及び低所得層の需要に応じているチェーン店は、格差を伴う経済回復の危機を感じている」(NYTimes電子版、16日)という。
 またQE3縮小の見通しの影響で米長期金利が上昇している(10年国債の利回りは2.86%と過去2年来の高水準に)状況の下、「7月の新規住宅着工及び住宅建築許可の件数が予想を下回ったことは、住宅抵当金利の上昇が住宅市場の勢い(momentum)を鈍化させる可能性を示唆している」(同上)。

 このような市場の動向について、投資会社のリバティビュー社のリック・メックラー社長は「市場が直ちに大規模な軌道修正に入るとは考えにくいが、今年上期に見られたような市場の勢いが失われつつあることは確かだ」(同上)と述べているが、同感だ。
 とにかく、QE3という大金融緩和の影響で、NYの株価そして世界の主要市場の株価が、多かれ少なかれ、景気実態以上に上げてきたことは事実であるから、そうした金融緩和が早晩縮小から廃止に向えば、そのことで景気が失速することはないとしても、多くの市場(東京を含む)で株価が修正を余儀なくされることは避け難いと言うべきだ。(終り)

 12日に内閣府が発表した2013年4〜6月期のGDP(実質国内総生産)の増加率(対前期)は0.6%、年率換算で2.6%で、プラスの成長率は3期連続だが、その率は1〜3月期の0.9%、年率3.8%に比べ、年率では1%ポイント以上低下した。また年率2.6%の成長率は、民間エコノミストの予想平均の3.6%増をも下回った(日経、12日夕刊)。 
 日経、讀賣などは12日夕刊で、またNHKは昼夜のニュースで、主として成長率の「3期連続プラス」を強調する報道をしていたが、4〜6月期には安倍首相期待の黒田日銀による「異次元金融緩和」の効果が出始めるはずだったのに、その期待は裏切られ、逆に成長は減速したのである。この点につきNYTimes(電子版、11日付)は、「日本の経済拡大はスローダウン」との見出しで成長減速を伝え、この減速は「安倍晋三首相の経済政策の前途を曇らせ、また、同首相が日本の巨大な公的債務を削減する努力を先送りするのではとの危惧を高めている」と的確に問題点を指摘していた。

 
 次にGDPを構成する各項目ごとに4〜6月期の実質増加率(年率換算をしない)を見よう。
 民間消費支出は0.8%で1〜3月期(以下、前記と記す)の08%と同じだが、「持ち家の帰属家賃」(注)を除いた正味の家計消費支出は前期の0.9%から0.8%に鈍化している。 
 民間住宅建築は0.2%の減少で、前期の+1.9%、さらに前々期(12年10〜12月期)の+3.6%と比べ、目立った減速と言わなければならない。
 民間企業設備投資は0.1%の減少で、前期の0.2%の減少よりマイナス幅がわずかながら小さくなったとは言え、依然としてマイナスであった。
 (財貨・サービスの)輸出は3.0%の増加で、前期の4.0%からスローダウン、他方で輸入は1.5%増で前期の1.0%から加速した。その結果、差し引きの純輸出が4〜6月期のGDP増加率0.6%に対して果たした寄与は0.2%で、前期における同様の寄与度0.4%を下回った。すなわち、円安の進展は、輸出を増やす効果があった半面、輸入をも増やしたわけで、その結果、差し引きでは純輸出の増加の成長全体への寄与度を鈍化させたのである。

 (注)持ち家の家計は実際には家賃を支払わないが、国民経済計算上は、持ち家の家計も世間並みの家賃を支払った(自らの家計に)ものと見なして民間消費支出の額を計算している。この単なる計算上の家賃が帰属家賃である。そこで、実質的な家計消費支出については、この帰属家賃を除いたもので見る必要がある。 

 以上のように、今年4〜6月期には、民間の消費はわずかだが増加率が鈍化し、住宅建築、設備投資は依然としてマイナスを続け、純輸出の成長への寄与度は低下したのである。
 マスコミは盛んに「株価上昇などの効果で高額ものへの支出を中心に消費が活発化している」と伝えてきたが、GDP統計で見ると決して消費全体が加速しているとは言えないことがわかる。
 また、黒田日銀が喧伝した「異次元金融緩和」は、長期金利の低下と供給資金の大幅増を通じて、民間の設備投資と住宅建築を刺激してそれを増加させるはずだったが、この点での効果はまったくといっていいほど現れていない。
 結局、4〜6月期に伸び率が高まったのは公的需要(政府の固定投資=公共投資など)だけで、これは前期の0.3%から1.0%へ高まった。つまり、成長加速に役だったのは、アベノミクスと言うよりは、伝統的な政府支出の増加だけだったのである。

 以上のように、4〜6月期の成長率が減速し、民間予想(期待)を下回ったため、12日の東京株式・日経平均株価は95.76ポイント、0.70%下落した(その結果、8月7日〜12日の4営業日通算《9日のみ9.63ポイントの微騰》の日経平均下落幅は881.63ポイントに達した)。
 成長の減速は、上記NYTimesが指摘しているように、安倍政権が予定の消費増税を見送る可能性を高めている。4〜6月期のGDP実績について、安倍首相は「順調に景気は上がってきている」と言い、甘利経済財政・再生相は「(消費増税に向けて)材料の一つとして、引き続きよい数字が出ている」と述べている(日経、12日夕刊など)が、決して予定通りの消費増税をする意向を示そうとはしない。それは、実際には彼らが4〜6月期のGDP実績に失望しているからであろう。

 安倍首相の経済政策上の金看板は「デフレからの脱却」であるので、同首相は成長率の引き上げを至上命題としているはずだ。その立場からすると、4〜6月期に成長が減速したことが明らかになったいま、明年度以降の成長にマイナスに作用するであろう消費増税は見送りたいのが本心だと私は推察する。だが、それを見送ると、国の内外から安倍政権の財政再建策についての熱意が疑われて、国債相場及び株価の暴落を招く恐れがある。
 その意味で、安倍首相はいま自信を失いかけ、判断に迷っているはずだ。こんご彼がどういう選択をするか、まことに興味深い。(終り)

 参院選後の東京市場の株価は、選挙(7月21日)のわずか2日後に大きく失速した後、しばらく回復していたが、8月7日(水)、8日(木)に再び失速した。
 すなわち、日経平均株価は選挙後の7月24日(水)から29日(月)まで4営業日連続で計1117.38ポイントも下落し、参院選前の7月2日(火)からその直後の23日(火)まで続いた日経平均1万4000台を割り込んだが、その後は7月30日(火)からの戻りで、8月1日(木)から6日(火)までは1万4000台を回復していた。ところが同7日(水)、8日(木)の2日でまたもや計795.5ポイント(6日の終値に対する下落率は5.52%)も下げて、8日の終値13,605.56は参院選24日前の6月27日(13、213.55)以来の安値となったのである。
 このことは、日本の株価は参院選後にはアベノミクスや自公安定政権期待によっては動かされず、「景気の実勢(企業業績を含む)や國際経済環境の動静に、より敏感に反応するようになった」(当「診断録」7月29日号)ことが再確認された、ということだ。

 具体的には、8月7日の株価大幅安(576.12ポイント、4%)は「米国の量的緩和政策の縮小観測から、市場参加者がリスクオフ(株や高金利通貨などのリスクがある資産への投資を避けること…引用者の加筆)の売り姿勢を強め、ドル・円相場が約1ヵ月ぶりの円高水準をつけたことも嫌気された」(Bloomberg、7日)からだ。また8日の株価続落(219.38、1.59%)は、「米国金融政策の不透明感を背景にした円高への警戒感が強いうえ、国内の街角景気統計(注)の減速を受け、取引終盤に売り圧力が強まった」(同上、8日)ためという。

 (注)「景気ウォッチャー調査」(内閣府の調査)のことで、「地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々の協力を得て、地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とすることを目的」(内閣府ホームページ)とするもの。
 具体的にはタクシーの運転手、小売店の店長、娯楽施設の従業員、派遣従業員、設計事務所長など計2050人を「景気ウォッチャー」に任命、景気の現況、2〜3ヵ月後の景気先行きなどを5段階評価で回答してもらって指数化している。各地域(北海道から沖縄まで全国を11地域に分ける)の調査とそのとりまとめは、北海道二十一世紀総合研究所など民間研究・調査機関が分担担当し、全体を三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が取りまとめている。

 上記の内「米国の量的緩和政策の縮小観測」とは、米国の中央銀行であるFed(連邦準備制度)が行っている金融の量的緩和の第3弾(QE3)が近く縮小されるだろうという予想のことで、6日にシカゴ連銀(Fedを構成する12の地区連銀のひとつ)のエバンス総裁が「9月に連邦公開市場委員会(FOMC。Fedの政策決定機関…引用者の加筆)が債券購入プログラム縮小を開始する決定」をすることを「明確には排除しない」と語ったことが根拠とされた(ロイター、7日)。なお、エバンス総裁はFOMCの構成メンバーの一人である。
 QE3が縮小から廃止へと向うと、金融の引き締まりから株価(直接には米国NY市場の)は打撃を受けると考えられている。NY株価の下落は東京の株価の下落に連動しやすいし、前者はまたドルの下落・円高をもたらす傾向がある。ただし、前に“QE3の縮小が先延ばしされる”との観測が流れた際には、NY株価の上昇とともにドル安が起きたこともあり、QE3の縮小あるいはその延期とドル相場との関係には不確かな面がある(注)。7日と8日には、QE3縮小の具体化の観測がNY株安とドル安をもたらした。

 (注)米国の現行の量的金融緩和(QE3)が縮小されると、米株価には下げ圧力が加わる(日本の株価に連動しやすい)が、他面で金利の上昇から米日の金利差が拡大してドル高・円安をもたらす(日本の株高要因となる)という二面があるためではないか、と考えられる。

 また、8日発表の「景気ウォッチャー調査」の指数は、「52.3と前月比0.7ポイント低下」した。「低下は4カ月連続」である(ロイター、8日)。「企業動向調査と雇用関連が上昇した一方、家計動向関連が低下した」(同上)ことが影響した。このことは、“安倍政権の政策は企業にはプラスを、家計にはマイナスをもたらす”という従来からの野党などの批判を裏付けるものだと言えるだろう。
 それはとにかく、東京市場の株価に国内景気の負の面が影響を与えたことは注目に値する。

 しかし、全体的には、やはり米国の金融政策の有りようが米国及び日本の(のみならず世界の)株価に最も大きい影響を与えていることは否定できない。端的に言えば、世界の市場(株式市場だけではなく、債券、商品などの市場も)はいまFed、とくにそのバーナンキ議長の言動に振り回されているようだ。
 そうした流れの中では、アベノミクスも黒田日銀の「異次元金融緩和」も沈没してしまったとの感が強い。(終り) 

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