文太郎の日記帳

景気、財政赤字、国際経済、政治・政局、世界情勢、日米関係など現代の諸問題を広い視野で解明します。

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

 政府は8月26日から31日までの6日間、消費税率を予定通りに(法律で定められた通りに)来年4月から8%に引き上げるべきかどうかについて、有識者60人から意見を聞く「集中点検会合」を行った(当「診断録」8月28日号参照)が、その結果について甘利経済財政再生相は9月3日に安倍首相に対し報告、「出席者60人のうち7割超が『消費増税を予定通り実施すべきだ』と求めたことなどを説明した」(日経ほか、4日)。
 だが、この「7割超が増税賛成」という有識者の意見の傾向は、そもそも出席者の顔ぶれから見て既定の事実だったのであり、そこに「有識者からの意見聴取」を利用して“増税は当然”の空気を作り出そうとした政権内“増税派”の思惑が読み取れる。それは、増税延期ないし1%小刻み増税を主張している首相ブレーン(浜田、本田両内閣官房参与)に対する反撃にほかならない。

 この「点検会合」に招かれた有識者60人の顔ぶれは、「学者・エコノミストが23人、経団連・連合・農協・漁協・日本自動車工業会など業界団体の関係者が25人、医療・介護・子育てなど社会保障に関係する人が9人、これに自治体の首長、東日本大震災被災地の関係者、若者の代表らが加わった」(朝日新聞デジタル、9月1日)。
 これらの有識者の内、「意見が割れたのは学者・エコノミスト」で、「業界団体や社会保障の関係者は圧倒的に賛成が多かった」。「増税そのものに反対したのは、主婦の団体や若者の職探しを支援するNPOの代表ら5人だけだった」(朝日、同上)。

 こうした人選をしたのは内閣府で、決まったその顔ぶれから見て、増税賛成派が多数を占めることは点検会合の前から明白であった。しかし、この会合は意見を聞くためのもので、なんらかの結論を出す性格のものではなかったから、そこでの意見について「7割超が増税に賛成」と勝手に“集約”して首相に報告すること自体がおかしなわけで、そこに意図が込められていたことは明らかだ。
 本当に有識者の意見を聞こうというのであれば、増税の賛成派、反対派それぞれの論点を整理して、それらを比較・検討することこそがあるべき姿だろう。
 甘利氏が首相に「有識者の7割超は増税支持」と報告した3日の首相官邸の場に同席したのは麻生副総理・財務相で、そのあたりにも財務省を中心とする増税推進派の思惑を見て取れる。

 甘利経済財政相のこの報告に対して安倍首相は、10月1日に発表される日銀の企業短期経済観測調査を最後の経済指標として確認した上で、「判断は10月上旬にする」と表明した(日経、同上)。
 私はデフレの脱却と経済成長を最優先課題とする安倍首相は消費増税延期に傾いていると見ていた(当「診断録」8月28日号)が、以上のような増税推進派(ないし肯定派)の反撃に対してどう対処するかが見ものだ。仮に首相が増税に踏み切ることになると、アベノミクスを演出した安倍ブレーンと袂(たもと)を分かつことにもならざるを得ない。
 なお、私の考えは、社会保障の維持・充実のためには消費税の引き上げは必要と考えるが、安倍政権が黒田日銀を使って放漫金融によるインフレ政策を推進している以上、消費税増税はインフレ(形を変えた課税である)との二重課税になるので反対である。

 以上のような増税派とその延期派とのきわどいせめぎ合いの中で、推進派・延期派の双方が期待しているのが2020年オリンピックの東京招致成功のようだ(決定は日本時間の8日早朝)。「もしも東京に決まれば、日本経済や株価をめぐる『3つのモヤモヤ』が晴れる」(日経電子版、田村正之編集員、2日)との期待だ。ここであげられている「3つのモヤモヤ」とは、「1つ目は最近方向感を失い気味の株価、2つ目はデフレ脱却の成否、3つ目が消費税率上げの行方」を指す(日経、同上)。中でも「最大のモヤモヤと言えば、本当にデフレから脱却できるのかどうか」だが、「オリンピックはアベノミクスの強力な支援材料として、デフレ脱却を促すとの期待が多い」(同上)。

 なぜなら、「招致が決まった後に予想される競技場や選手村建設などはアベノミクス第2の矢である財政政策を、外国人観光客の訪問増加や、容積率の規制緩和、首都圏再開発などは第3の矢の成長戦略を後押しする」からだという。
 そういう期待を反映して、東京株式市場では建設株が値を上げ、8月26日には「清水建設、大成建設の株がともに年初来高値を更新した」(日経電子版、8月26日)。この日の終値は清水は464円、大成は424円だったが、大成は9月3日には430円と高値を更新している(9月4日は清水448円、大成427円)。

 
 自国でのオリンピックを国威発揚の機会として利用することは、ヒトラーのドイツ(1936年、ベルリン)、共産党政権下の中国(2008年、北京)が代表例だが、それを経済政策の切り札として政府や経済界が期待するというのは今度の日本が初めてではないか。もし日本が2020年五輪の東京招致に成功すれば、安倍首相も法律通りに消費増税に踏み切る可能性が高まり、増税推進派と延期派の対立も回避できるわけだ。
 だが、本当に日本(東京都)はこの招致に成功するのだろうか。もし、それに失敗すれば、そのダメージは極めて大きいものになるだろう。つまり、経済政策の成否を外部(この場合は国際オリンピック委員会)の決定に委ねることのリスクは極めて大きいことを承知しておく必要がある。(終り)

(お知らせ)私は家内ともども10月あるいは11月に老人ホームへ転居する予定であり、そのためにいろいろの準備を進める必要があるので(また体力的にも)、こんごは日常の仕事や勉強を減らすことが必要になってきた。そこで、これを機会に、私にとって最も時間と努力を要する当「診断録」を以後は不定期刊としたい。「診断録」はこれまでも厳密には定期刊行物ではなかったけれども、だいたいにおいて1週間以内の間隔で公表してきた。それを、こんごは重要な出来事や情勢の変化などがあった場合に限定して執筆・公開することにしたいのである。
 その代りに、もう一つの私のブログである「文太郎の日記帳」(blogs.yahoo.co.jp/to1952dai/)に、随時、政治・経済・社会の諸問題についての簡単なコメントを加えるようにし、もし今後「診断録」に執筆・公表した時には、その都度、上記のブログやツイッター(BUNTARO TOMIZUKA@BTTOKYO)でその旨をお知らせしたい。
 以上、是非ご了承下さるようお願いする。

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事