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休み時間。
帝は、次が数学だと聞いて焦った。と、言うか青ざめた。
「宿題やってない」
鞄から、ノートを出して開いてみたが、根っからの文系人間の帝に、数学はちんぷんかんぷん。
「むぅ〜」
ノートとにらめっこしてみても、答えは全く分からない。
「やってないの?」
声がしたので、見上げてみると、明らかな侮蔑の目で自分を見下ろすウラがいた。
「うん…」
泣きそうな声で、頷いた帝を見たウラは、ため息をつきながらしゃがんで、机に肘をついて、帝からシャーペンを取り上げた。
「いい?まず、この式を問いて、次にこのxを左辺に移項したら…あとはこれを解くだけ。やってみな」
ノートに解説を書き込んでいたシャーペンを帝に返しながら、ウラは最後の言葉を言った。
「…うん」
不意にあった目を見て、
(睫長いな…)
と、思いながら帝はシャーペンを受け取った。
「えっと…」
達筆な文字で書かれた式の一番下のを、丸文字風の字で問いていく。
「なんか、女の子みたいな字だね…」
「…よく言われる」
そう言ってごまかしたが、内心かなり、どきりとした。ウラが、一番女の子に詳しいので、一番感づかれ易い。下手に女の子らしく出来ない…。
「だろうね。こんななら」
「…」
冷たい声と目を向けられた帝は、ちょっと傷ついた。
家庭科の時間。
今日の課題は、刺繍。
実のところ、帝はあまり裁縫は得意ではない。
「曲線、嫌い…」
細かいところを、必死に縫っていた帝。苦手な曲線が終わると、気が緩んでしまい…
「痛っ」
指を差してしまった。
「大丈夫?」
席の近い良太郎が、心配して駆け寄って来た。
「うん…」
帝の人差し指の傷は、差したと言うよりも引っ掻いた感じだ。その傷を見た良太郎は、
「んっ」
帝の指ごと傷を舐めた。
「ひゃあっ」
「取りあえず、これで…。今、先生に絆創膏もらってくるから」
そう言って、良太郎は先生のところに行ってしまった。
「良もアホだった…」
帝は、自分の指を握ってから良太郎を見ながら真っ赤な顔で呟いた。
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